第12話


「陛下」

「!レイン」


突如としてやってきたキルレインドナに、陛下は驚き顔を上げる。実際キルレインドナは先ほどの会話の後すぐに自己判断で陛下の元へとやってきた。ついてきたエワンダ達は何も言われぬままだったので、少々戸惑いを隠せない。


「突然申し訳ございません。無礼を承知での言動、お許しください」

「良い。お前の元気な姿をみれただけで私は満足だ。……何かあるようだな?」


雰囲気が変わっている。それにいち早く気付き、陛下はその先を促す。そうしてキルレインドナははっきりと、大きめの声で言葉を発した。


「僕とソフィア王女の婚約を、今すぐに広げてください」

「!」

「レイン様!?」

「坊ちゃん、何を……」

「今はその時ではありません。国民が混乱するでしょう」

「だからだよ」


付いてきた三人から早すぎると抗議の声が上がるが、それを耳にして三人へと振り返る。


「オリヴァーを殺したのはこの王宮にいる人間だ。けれど王宮の人間は外出届を出さない限り外には出ない。陛下の事ですから既に調べ上げているでしょう」

「うむ」

「結果は?」

「全員白に近い」

「僕は魔力と法力を全く感じなかった。僕以上の力を持つ者ならともかく、僕はまだその存在に出会った事はない。消去法でいけば他の王宮に出入りできる人物。大臣等を含む貴族しかいない」


そこまで言うと、今度は陛下へと振り返る。その瞳は強い決意で染まっており、雰囲気もロットワンドのものとは全く異なる。先ほどよりもより緊迫感をあたりに散らしながら、キルレインドナは告げる。


「あぶり出します(・・・・・・・)」

「「「!」」」

「……成程、おとりになると?」

「坊ちゃん、危険すぎます!」

「そうです、せめて相手がどのような方法で出るかを伺うべきです!」

「それでは遅い!!」


陛下に続き、エワンダとオルタンスがさらに抗議する。しかし、それを耳にしてキルレインドナははっきりと叫んだ。再び振り返り、エワンダ、オルタンス、そして未だ戸惑っているノアを順にみる。


「いいかい、僕は怒っているんだ。これほどの怒りをどうしてくれようと思っている。勿論感情に流されるつもりはない。だが覚悟は決まった。これ以上犠牲者を悪戯に増やすことは決して赦さない。エワンダ、オルタンス、ノア。お前たちには危険な位置に晒してしまうだろう。だがそれはお前たちも承知の上のはずだ。違うか?」

「それは、勿論そのつもりです。ですが……」

「……キルレインドナ様がおとりになる。そして自分の命は危うくなる、か」

「ノア!!」


未だ反対に出るオルタンス。その次に続いたノアの言葉に、エワンダが思わず声を荒げた。しかしノアはニヤリと笑みを浮かべると、一歩前へ出て誠意を表した。


「上等です。売られた喧嘩は買うのが私の流儀です。私はキルレインドナ様とどこまでもお供致しましょう」

「赦す。エワンダ、オルタンス。お前たちはどうだ。今一度問う。僕と共に在るか?」


キルレインドナは暗に、身を引くならば今のうちだと告げている。瞳の光に揺らぎはない。心が決まったというのは本当の事だろう。それを見つめ、先に折れたのはオルタンスだった。


「……レイン様は頑固なお方でもありましたか」

「オルタンスには負けるよ」

「私の命は既に絶たれているも同じ。これ以上に何を恐れましょうか」


彼もまた、一歩前へ出てノアに倣った。そうして、キルレインドナの視線は、エワンダと交差する。


「………あ~~、もう!」


がしがしと金色の短髪をかきむしると、エワンダはキルレインドナの前へとやってきた。今度はそのままガシガシとキルレインドナの頭を乱暴に撫でる。


「言い出したらいう事を聞かない俺の大事な大事な弟上司はここか!」

「……いい返事だね、エワンダ」


想像以上の返答を貰い、キルレインドナはノアと同様ニヤリと笑む。

そしてエワンダが一歩引き、片膝をついたのを確認してから、陛下へと改めて振り返り、切り出した。


「僕たちの意志は決まりです。証人は陛下。貴方です。お認めになられますか?」

「……はっはっは!!」


キルレインドナの有無を言わさぬ発言に、陛下は思わず声を上げた。


「まさかこう出るとは思わなかったぞ、レイン」

「予測不可能な行動をとるのもまた今の僕でしょうね」

「気に入った。しかし本日中は厳しいものがある。明日にでも国中に知らせよう……どうやら私は『息子』の頼みには弱いらしいな」

「比べる物ではありませんよ、『義父上』」

「それもそうだな」


それだけ言うと、陛下はキルレインドナに一瞬憂いの光りを見せる。が、すぐに威厳あるそれに戻すと、ゆっくりと立ち上がった。


「エリザベートとソフィアをここに。忙しくなるぞ」

「「はっ!」」


それに応えられた近衛兵は、二人のみ。他は呆然と成り行きを見守っているだけだった。

翌日。予想通り、国中が騒がしくなった。オリヴァーという最高魔法近衛隊司令官を亡くした翌日にキルレインドナとソフィア王女の婚約発表だ。喪に付す暇もない。王家もキルレインドナも何を考えて居るのかという意見が大半だ。

事前に手紙で事情と謝罪を受けていたオリヴァーの生家、ケケル家にも情報屋は回ってきたが、家族全員が無言を通した。王家とキルレインドナの動きは、オリヴァーを殺めた犯人をあぶり出す為だと知っていたからだ。

ここで自分たちが耐えなくていつ耐える。

生前手紙のやり取りでオリヴァーがキルレインドナと共に国に仕え続けると申し出ていた。だからこそ、ケケル家の人間は、一致団結して頑なに口を開かなかった。何なら魔法結界で野次馬を蹴散らすほどだ。

それに対してキルレインドナはさすがオリヴァーが育った家だと賞賛し、そして不自由ないように王宮から食材やらの生活必需品等の手配をほどごした。

それによってケケル家は今のところ心配はない。


「披露宴はどうする?」

「最も狙われやすいですね。他国からの使者も視野に入れなければなりません」


エワンダが書類を持って問いかければ、オルタンスが直ぐに応える。


「他国からの使者や王家に対しては僕が結界を張る。入ってくる人間以外は魔法を使えないようにする。事前に申し出ていれば円滑に回るだろう」

「じゃあ俺はこの国内結界の監視をしますね」

「頼んだ」


キルレインドナから声が上がれば、ノアから手が上がる。今となってはノアも素を出すようになっており、この四人の間だけでは一人称も本来のものへとかわっていた。それはキルレインドナに対する誠意でもある。有難く受け取り、キルレインドナは事が落ち着いたら改めて彼に謝罪と敬意を表をする事を決意した。

また、この国では、外敵予防のために国を囲うように結界が張られている。すべてで四つ。それを管理するのも、最高魔法近衛隊の仕事だ。ノアが素早く反応するのは、流石と言う処だろう。


「他に気にするところは?」

「招待状を送る貴族だね。断りの返答がない限り強制参加させる。オリヴァーの件がある為にそれを念頭に入れるようにさせる」

「光と影って奴ですね」

「それ程本気だって言う事を示さないとね。オリヴァーには悪い事をするけれど」

「否、それぐらいやっていいでしょう。あいつも喜びます」

「だといいけれど」


そうしてひと段落付き、全員で休憩に入ることにする。紅茶がオルタンスにより用意され、各々確認し抑えた部分を脳内でチェックしながら紅茶を飲む。


「……駄目だ、頭がどうあっても仕事になる」

「俺もです」


エワンダの一言にノアが賛同する。それを耳にして、小さくキルレインドナとオルタンスは笑った。


「まあ、直ぐに切り替えろっていうのが現状難しいよね」

「この時間が終われば再び書類とにらめっこですしね」

「僕が王族となったらこんな日々が当たり前になるよ。今のうちに慣れていかないとね」

「「うへぁ~~」」


キルレインドナとオルタンスの言葉に、エワンダとノアは悲鳴を上げる。その様子にくすくすと笑うと、キルレインドナは窓の外を伺った。城から見下ろせる街並みは、形は今までと同じだが雰囲気が全く違う。それを読み取れるようになったのは、ひとえに陛下と王女のお陰だろう。


「…………騒がしいね」

「そりゃそうでしょうよ」

「この二日で、俺たちが悲鳴を上げるほどの命が連発ですからね」


キルレインドナがぽつりと呟けば、エワンダとノアは頷く。それもそうだ。二日。まだたった二日しか経っていない。時間が長く、短く感じる。いくらあっても足りないほどだ。


「……今度時間魔法に手を出してみようかな」

「レイン様、一歩間違えれば罪に問われるものですよ」


小さく呟くと、すかさずオルタンスが制しに入る。


「分かっているよ。研究するだけいいでしょ?」

「あ、それ、俺も乗っかっていいですか?魔法のことならオリヴァーに負けないぐらいには興味津々です」

「…………お前ら、興味と仕事とごっちゃになってないか?」


ノアが再び名乗り出た。その様子にエワンダがげんなりしながら言えば、何言ってるんだ、とノアからまた声が上がる。


「俺たちの共通点は魔法ですよ?それにエワンダさん、あんたが早朝と就寝前に身体を鍛えたり剣を振るうのと一緒です」

「なるほ……何でお前が知っている」

「オリヴァーが」

「あいつっ!そんな事までノアに話していたのか……!」

「でなきゃあんな丁寧口調の奴が『脳筋野郎』だなんて言うはずないじゃないですか」


からからと笑いながら伝えれば、エワンダはしてやられたと頭をかく。そこまで来てそういえば、とキルレインドナはノアに振り返った。


「今更すぎるんだけれど、ノアは魔術の方は?」

「使えます。ですが法術の方が得意でして。だから法術部隊に所属していました」

「成程ね。じゃあ僕が魔術、ノアが法術でいこうか」

「勘弁してください、聞くところによると無詠唱でとんでもない演習をやったっていうじゃないですか。俺にはレイン様ほど力を持っていないんですよ?」

「だからって僕一人にやらせるつもり?」

「……失言でした、ごめんなさい」

「よろしい。オルタンスはどちらかと言えば魔法というより魔法具専門だからねえ」

「そうですね。そういえばレイン様、あのアンクレットは下げたままなのですか?」


その話題に入って漸く、オルタンスがキルレインドナの力の制御のために使ったアンクレットを思い出す。そういえば、とキルレインドナも首元を見つめた。


「やっぱりオルタンスだったんだ?」

「はい。少々暴走気味でしたので」

「今も首に下げているけれど……調子がいいんだよね」

「良かったです。けれども力を抑える物でもあります、いざという時は障害になりかねません。早めに外してください」

「分かった」


言いながらキルレインドナがカップを置き、首元へと手を伸ばす。エワンダが見た時透明な筒だったそれは、虹色に輝いていた。


「可視化するとそんな色なんですね、魔力と法力って」

「人それぞれだと思うよ。ちょっとみんな、身構えてね」


それだけ言うと、キルレインドナはアンクレットを外す。瞬間、膨大な魔力と法力があふれだした。プレッシャーになるそれに、エワンダが小さく唸る。

瞳を閉じて身体からあふれる力を制御していく。徐々に収まっていくそれに、三人は漸く一息ついた。


「すっご……」

「流石でございます、レイン様」

「俺でも感じたぞ」


息が出来なかったと呟くノア。平然と佇むオルタンス。そして驚きにより目を瞬かせるエワンダ。三者三様の反応に、キルレインドナはごめんごめんと謝りを入れた。


「で、この筒にある力、もともと僕の力があふれ出ていた奴だよね?」

「左様にございます。壊せばレイン様の元へと戻る事でしょう。その際はレイン様にも多少負担が入るかと思いますので、お気をつけください」

「ふーん……便利なの作ったね」


ぶらぶらと揺らしながら筒を見つめる。それにオルタンスは感謝を述べた。


「レイン様専用ですね。正直、試作品でもあったのでうまくいくかどうか不安でした。入り切れるかどうかも分からない状態でしたので」

「……護身用としてノア、君に渡しておくよ」

「えっ、俺ですか!?」


指名が入り、ノアが慌てる。それに笑ってみせて、さっき僕の力に耐えただろう?と返答する。


「逆に言えばこのくらいだったら耐えうるだろうからね。それに僕の魔法力だ。何かあったらすぐに僕が反応できる」


という事は、と素早くオルタンスはキルレインドナの思考を読み取った。


「レイン様、幾つほど所望でしょうか?」

「エワンダ、オルタンス、義父、義母上、姉様。少なくともこの五人分は欲しいね」

「畏まりました。早急に仕上げます」

「書類より先にしていいよ」

「承知しました」


素早く反応してくれたオルタンスに感謝し、キルレインドナはそのままノアへとアンクレットを渡した。瞬間。



「「!!」」


ぞわっと、二人は背筋に走った悪寒に身を固める。


「?坊ちゃん?」

「ノアさん?如何なさりましたか?」


エワンダとオルタンスは感じていない。という事は、キルレインドナとノアのみ感じたものだ。


「……レイン様」

「うん。僕も今感じた。……近いね」

「ちょっと陛下たちの様子を見てきます」

「お願い」


アンクレットを握りしめ、ノアが立ち上がりキルレインドナの部屋から足早に出て行った。その間にキルレインドナは力を操り、探知魔法を発動させる。

魔法使いの中でも、ごくわずかな人間にしか反応できない何かがあった。しかも王宮の中でだ。


「エワンダ、オルタンス、細心の注意を」

「何かありましたか?」

「オルタンスが反応しないという事は、オルタンス以上の魔法力を持つ者だ。僕とノア、一瞬だが力を感じた」

「「!」」


言われ二人は各々戦闘準備を始める。その間にもキルレインドナの魔法は確実に、かつ素早く王宮内を巡らせる。途中で感じた移動している魔法力はノアのものだろう。それ以外の、強力な者。詳細まで注意深く探っていく。

瞬間、ぱぁんと自分の力が発動したのを感じた。


「!!」

「ノア!?」


キルレインドナの魔法力が爆発した。しかしそれはキルレインドナからではない。キルレインドナの魔法力を持ったノアからだ。ノアの通っただろう道をたどり、走り出す。


「坊ちゃん、オルタンス、先にいくぜ!」

「直ぐに追う!無理と深追いはするな!!」

「了解!!」


二人に合わせてでは遅いと判断し、エワンダは一言断ると先へ進んだ。


「オルタンス、魔法具はあるか!?」

「手持ちでは先ほどの試作品と同じもの、結界魔法と隠蔽魔法を使ったものが多数です!」

「現場に付いたら結界魔法の方を!」

「御意!」


その時になって、向かう先で悲鳴が上がった。

何が起こったのか分からないが、尋常じゃない上がり方にぐっと杖を握る手に力が籠る。

そうして間もなく、その元が陛下の執務室であり、そこに人だかりが出てきていることが目に見えた。


「どけ!!」

「!!」

「きるれ……」


キルレインドナの叫び声に、集まっていた人だかりが瞬時に道を開く。

そこには倒れている陛下とエワンダ、ノアが居た。三人は魔法部隊により回復魔法をかけられており、瞬時にオリヴァーの時を思い出させる。

ぞわり、と悪寒が走った。


「誰か!もう医師は呼んだか!!」

「既に呼んでいます!」

「攻撃か!?」

「分かりません!突然陛下がペーパーナイフでご自身の喉を……」

「加勢する!」


言ってキルレインドナは法術を、そしてオルタンスは先ほどの指示通りに魔法具を使い結界魔法を三重に発動させる。キルレインドナのあふれる力に圧迫を感じながら、魔法部隊は回復法術を放ち続ける。


「エワンダとノアは何を?」

「分かりません、突然お二人も倒られて……」

「魔法部隊、容態は!?」

「芳しくありません!」


瞬間、ぱぁんと結界魔法が壊れる音が響き渡った。


「「!!」」

「結界が……!?」


オルタンスの狼狽える声が発せられる。それを耳にして、キルレインドナは回復法術を一旦止め、杖を高々と持ち上げた。


「『この場にいる生命を護れ、オビシェ』!!」


きぃん、と先ほどよりも強力な結界が張られる。しかしそれに抵抗する力がかかってきており、キルレインドナは何者かに攻撃されている事を理解した。


「攻撃されている!!総員、陛下をお護りし戦闘態勢!!」

「「「はっ!!」」」

「オルタンス、念のために吸収魔法具の用意を!人物特定出来たらそれを相手につけられるように!」

「御意!」


話している間にもぐぐぐと強い力が結界を押しつぶそうとしている。魔力と法力は感じきれない。まさか。


「……総員に告ぐ、僕より強い力の持ち主かも知れない(・・・・・・・・・・・・・・・・)!!心せよ!!」


それを耳にして、辺りはざわついた。緊迫した空気が流れ、剣を持つ者は剣を構え、回復に回っている者以外の魔法部隊は己が持つ杖をキルレインドナの結界に続き張り、はじかれる。


「な……」

「僕が感知しきれない力だ、魔法部隊は回復と各人物の結界へ当たれ!それと近衛兵は数名、王妃と王女の元へ!!」

「そんな……まさか」

「キルレインドナ様に勝る力の持ち主だと……!?」

「早く!!」


それだけ言うと、キルレインドナは更に力を放出させる。結界を破ろうとしている力を少し押し戻す。


『…………私の思惑通りで嬉しいよぉ、キルレインドナ』


どこからか女性の、嬲るようなその声にぞわっと一層強い悪寒が走った。その隙をついてだろう、結界が壊れた。


「つあっ!」

「キルレインドナ様!?」

「キルレインドナ様の結界が……まさか……」


反動で吹き飛ばされ、勢いよく床に叩きつけられる。少しむせてから、キルレインドナは身体をふらつかせながら起こす。


「ゆ、だんするな!!僕以上の力の持ち主だ!!何が起こるか分からないぞ!!」

「レイン様!!」


瞬間、オルタンスの叫び声と共にオルタンスの腕に包まれた。衝撃が一度走り、次の瞬間にはぐたり、とオルタンスの身体から力が抜ける。


「オルタンス!おい、確りしろ、オルタンス!!」

「キルレインドナ様、ここは一度撤退を!!」

「陛下の容態は!?」

「…………」


無言になる室内。それに対して、キルレインドナは苦しい表情へと変わった。


「……エワンダとノアは!」

「…………即死です」


瞬時に、このままではこの国が危ないと理解した。

国王陛下の崩御、そしてエワンダとノアの死亡。このまま騒動が起こるのは間違いがない。

抱きしめられているオルタンスの様子を伺うが、生命の力が無い事を感じる。

自分の力が揺らいでいることを察するが、それどころじゃない。


「……っソフィア王女とエリザベート様は!」

「自室で護衛と共に在らせられます!」

「総員お二方の元へ!!私は」


『おやおや、させないよ?』


もう一度、あの声がした。

瞬間、バリンと再び音が響いた。同時に凄まじい力がキルレインドナたちに襲い掛かる。


「ぅっ」

「何だ、これは……!!」

「……っ!」


唸り床に伏せる物が続出する。キルレインドナもまた、屈みこんだまま動けなくなった。


『もっと楽しませてね、キルレインドナ・ロットワンド』



その声が耳に届いた瞬間。


辺りは、漆黒が広がった。


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