第28話 ベルドレッド襲来②

 ヴィルヘリアは大空を舞い、一気にイブニクル王国の周辺へとやってきた。

 その時、イブニクル王国に異変が起きているのが見えた。

 イブニクル王国の空には何頭もの飛竜達が飛び交っていたのである。


「ヴィルヘリア、あれは!?」


「あれは! ベルドレッドの軍勢ではないか! もうここへとやってきておったのか!」


 俺たちが驚いて見ていたその時、空から眩い閃光が一瞬光ったかと思うと、イブニクル王国の城壁に雷が落ちる。

 城下町にも落雷し始め、城下町の人々はパニックとなり、阿鼻叫喚の様子と化していた。


「相当、怒っておるなベルドレッド……」


「はわわ……折角の観光が……」


「どうするのよヴィルヘリア、このままだと、近くに来た私たちにまで被害が及ぶわよ?」


 ヴィルヘリアはイブニクル王国から少しだけ離れた場所で滑空しながら考える。

 数分経って、ヴィルヘリアは口を開いた。


「よし、分かったのじゃ! レイク、ベルドレッドと会話するのじゃ!」


「やっぱりそうなるか」


「一体何が目的なのかお主なら分かるはず。その問題を解決できればきっと収まるはずじゃ」


「しょうがない、やるか!」


「よし! ではしっかり捕まっておれ!」


 ヴィルヘリアは大きく翼を広げたかと思うと、イブニクル王国へ向かう速度を上げた。目指すはイブニクル王国の屋上である。



 ☆☆☆☆☆



「ぐぉおおーー!!!!」


 ベルドレッドへ向かっていった1人の兵士たちが軽々と吹き飛ばされる。


「そんなんじゃ、あーーしは止められないから。てか、そろそろ良い加減にしなさいよ私達は戦いたいわけじゃないって言ってんじゃん!」


 ベルドレッドはそう主張するが、普通の人間達にはそんな思いは届かない。

 更に襲いかかってくる兵士を殺さないように手加減をして戦うのが面倒くさくなってきたベルドレッドは段々、苛立ちを見せてきた。


「王よ! ここは私が引き受けます!」


 ヒルダが剣を持ち前へと出る。


「竜王め……到頭我らの領地を取りに来たか。だが、そうはさせない!」


 ヒルダは勢いよく蹴り出し、ベルドレッドまで素早く接近すると剣を振った。

 しかし、ベルドレッドはヒルダの剣を華麗に紙一重で交わしていく。まるで、太刀筋が分かっているかのように。


「なーんも面白くないんだけど。力の使い方下手過ぎ」


 ベルドレッドはヒルダの一太刀を片腕で受け止めた。剣を握るベルドレッドの力はとてつもなく強く、ヒルダは剣を引き抜こうとするも微動だにしない。


「くっ!? この!!」


「ヒルダ!! その剣を離せ!!」


 ジークフリードの声でヒルダは直ぐに剣を離す。すると次の瞬間、バチバチと剣に電流が流れ火花が散った。

 もし、直ぐに剣から離れていなかったらと思うと想像するだけでぞっとする。


「命拾いしたじゃん」


 黒焦げになったヒルダの剣を投げ捨て、ベルドレッドはジークフリードの方を見る。

 ジークフリードは覚悟したように剣を構えながら前へと出た。

 そして、勢いよくベルドレッドへ飛びかかろうとしたその時だった。


「ちょっと待ったぁーーーー!!!!」


 突然、上空から巨大な竜が現れ、城の屋上へと着地した。


「な、何だ!?」


 ジークフリードが驚き戸惑っていると竜の背中から幾人の人影が降りてくる。

 それはリバイアタンで出会った少女2人とレイクの姿だった。


「レイク!? 貴様どうして!?」


「異変を感じたから来たんだ。俺たちの仲間のな」


「仲間だと?」


 レイク達を乗せてきた巨大な竜は一気に姿を変え、リバイアタンで出会った少女達の1人に変化する。

 それを見て、ジークフリードを含め、ここにいる全ての人間が驚いた。


「嘘……りゅ、竜王がどうして」


 ヒルダも驚きを隠せない様子だった。


 ヴィルへリアはベルドレッドの側へと近寄る。


「よぉ! 久しぶりじゃのベルドレッド! 元気にしておったか」


「きゃーー! ヴィルっちじゃん!! ちゃおちゃお!! お久じゃん!!」


「うむ、久しぶりじゃの!! 今、エリザもシンシンもおるぞ」


「相変わらず、やんちゃしてるわねベルドレッド」


「ひ、ひさしぶりですぅ!」


「みんな勢揃いじゃん! うけるぅ~!」


 俺を差し置いて、竜王達の井戸端会議が始まった。考えてみて欲しい、世界を頂点に君臨する竜王達4人が1カ所に集まっているって凄いことなのではないだろうか。


「で? みんなして何してんの?」


「おお、実はベルドレットに合わせたい人間がおるのじゃ! こやつじゃ!」


「あ、どうも。レイクって言います」


「……え? 竜族語話せんの!? 凄いじゃん!! 読み書きは出来る人は居ても竜族語話せる人間なんて滅多にいないのに!」


 ベルドレッドは俺が竜族語話せることを知り、鼻息を荒くしている。


「こやつが来たからにはもう安心じゃ! こやつが妾達やベルドレッドの言葉を通訳してくれるのじゃ」


「えっ!? それってすごい事じゃん!!」


「うむ! じゃからのベルドレットよ、レイクを竜種代表となるための協力をして欲しんじゃ!」


「うーーん、面白そうだけど1つ条件がある。あーし達の要望をイブニクル王国の王様に伝えて欲しいんだけど良い?」


 それは容易い依頼だ。ただ聞いたことを俺はそのままイブニクル王に伝えればよいのだから。俺は首を縦に振る。


「では今から言うぞ。ずばりイブニクル王国と友好関係を築きたいって事! それを伝えて欲しいのよね」


「ああ、分かった」


 俺は驚き戸惑うジークフリードの横を通り、イブニクル王の元へと歩み寄って丁寧に跪いた。


「お久しぶりですイブニクル王」


「お前は、レイクではないか!? どうして竜王たちと一緒に居るのだ!?」


「詳しい話は後で、それよりもベルドレットはイブニクル王国との戦いを望んではいないらしいです。逆にイブニクル王国と友好関係を築きたいとおっしゃっております」


「な、どうしてお前が事情を分かると言うのだ!?」


「なぜならば、私は竜の言葉が分かるからです」


 その時、ここに居た王宮の者達全員が驚きを隠し切れていない様子を見せた。

 こうして、俺はイブニクル王とベルドレットの仲介役となり話を進めることにしたのであった。



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