第27話 ベルドレッド襲来①

 次の日の朝、レイクに協力を断られたジークフリードがイブニクル王国へと帰ってきた。

 ジークフリードは城の回廊を行き交う兵士達をかき分けながら、自身の司令官室へと向かう。


「お帰りなさいジークフリード」


 部屋に入ると資料を眺めていたヒルダがいた。

 ヒルダがジークフリードを見たとき、目には隈のような物が有り、どこか疲れている様子が見えた。


「ジークフリード、大丈夫? 顔色が悪いけど」


「も、問題ない。それより、どうだ、兵士の配置については」


「それなんだけど、カタールとも話し合って安定した陣形が出来たから、配置については問題ない。確か、ベルドレッドがここへ来るのは1週間後だから、それまでには上手く兵士達を動かすことが出来る」


「そ、そうか」


 ジークフリードは少し安心したような表情を見せる。正直、あと1週間猶予があるのだ。この一週間でどれほど兵士達に訓練させることができるかは我々の指揮力に掛かっている。


「もう、失敗は許されない」


 ジークフリードが立ち上がり、陣形配置の訓練を開始するべく兵士を集めようとした時だった。


「ジークフリード司令官!! 失礼します!! た、大変です!!」


 突然部屋に伝令兵が慌ただしく入ってきた。


「何事だ?」


「べ、ベルドレッド率いる飛竜軍達がやってきました!!」


「な、何だと!?」


 ジークフリードは勢いよく部屋から出て、窓の外を見ながら城の屋上へと駆け走った。

 窓から見える海の上には沢山の飛竜達が海を越えてこちらへと向かって来ているのが見えた。


「ジークフリード司令官!」


 屋上へ向かうとそこには複数人の兵士とベルドレッドから手紙を受け取ったと豪語していたカタールだった。


「カタール!! 貴様!! あれはどういうことだ!!」


「わ、私も分かっておりません」


「奴らが来るのは1週間後と言う話では無いのか!?」


「だから、私も分かっていないのですよ!!」


 このカタールの焦り方は今回の事は想定外である事を表していた。

 カタールとそう話している間にも飛竜達はこちらへと向かってきている。


「ジークフリード!! これはどういうことだ!!」


 緊急通達によってイブニクル王も城の屋上へとやってきていた。


「私にも分かりません! 一体、どうして!?」


「ジークフリード!!」


 俺を追ってヒルダも屋上へとやってくる。

 こうして、全員が屋上へとやってきた頃にはこのイブニクル城の屋上を飛竜達が取り囲む。

 そして、金色の飛竜の上に小さなシルエットが見え、そのシルエットが屋上に降り立った。


「あーーしはベルドレッド。今日はあんた達に話をしにきたの」


「王よお下がりください!」


 ベルドレッドの言葉など無論分からない兵士達は王の前に立ちはだかり、ベルドレッドへ剣を向ける。

 一方で、剣を向けられ目をベルドレッドは目を丸くする。


「ちょちょちょ!! 安心してよ! 別にあーーしらは戦いに来たわけじゃないっての!!」


「くそ!! 来たからにはやるしか無いのか!!」

「王、そしてこの国は我々が守る!!」


 兵士達は臨戦態勢でベルドレッドへと対峙する。


「くそ! ヒルダ! 腹を括るぞ!!」


「え、ええ!!」


 2人も剣を引き抜きベルドレッドへと殺意を向けた。


「なーーに、結局あーーしと話する気ないんだ! 良いわよそっちがその気なら戦ってあげるわよ!」


 そう言ってベルドレッドは戦闘の構えを取った。



 ☆☆☆☆☆



 イブニクル王国に危機が迫っている頃、レイク達は宿から出ていたところだった。


「おはようレイク! よう眠れたかの!」


 ヴィルヘリアは明るい笑顔で宿から出てきた。


「貴方達、寝相悪すぎよ……」


「おはようございますぅ!」


 後ろからぐったりしたエリザがぐったりした様子で出てくる。

 一方でシンシンはとても元気そうに出てきた。


「おはよう、ところで次はどこへ行くんだ?」


「次はイブニクル王国へ行くぞ!」


「……はぁ!?」


 俺は開いた口が塞がらない。昨日、ジークフリードの提案を断ったはずだ。


「シンシンが行きたいと言っていたのじゃ。それに城に行かなくとも城下町に居れば良いのだから難しく考えることはない」


「そ、そうか……」


「はわわぁ……たのしみですぅ!」


 俺達とシンシンのテンションにどこか差が生まれてるような気がするが、取りあえずここは流れに従うしかないようだ。



 リバイアタンから出るとすぐにヴィルヘリアは竜の姿へと変えた。

 俺たちはすぐにヴィルヘリアの背中に乗り、大空へ大きく羽ばたいた。

 次なる目的地はイブニクル王国である。

 これが観光ではなくなることをレイク達が知るのはもうすぐの事である。



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