第25話 ”雷帝古竜”ベルドレッド
イブニクル王国のある大陸から遠く離れた東の場所には小島があった。
そこには大きな洞窟が存在し、
その洞窟の最奥では五大竜王の1人である、”雷帝古竜”ベルドレッドが飛竜からの信仰を受け、この大陸を支配していた。
ある日、一頭の飛竜が勢いよく洞窟の中へとかけ飛んでくる。
灰色の通常種の飛竜とは違い、黄色の身体をした珍しい種を
そんな上位飛竜が洞窟の最奥へと翼を翻しながら颯爽と駆け走ってきた。
そして、最奥へと到達すると玉座に座る人影が見えた。
上位飛竜は最奥に到達すると、竜の姿から金色の髪と黒色の肌を見せた美女へと姿を変えた。
「ベルドレッド様、至急お耳に入れて頂きたい事がございます」
美女はベルドレッドの前で直ぐに跪く。
「む? 何々? どしたのーーストリクスちゃん? そんな深刻な顔しちゃってさぁ」
ベルドレッドは金色の長髪を布で器用に縛り、自身の姿を映し出す鏡石を片手に自身のチャームポイントである長いまつげの手入れをしていた。
「2つほどお話があります。1つはイブニクル王国へ宛てた手紙に関してです。無事にイブニクル王国の騎士達の手に渡り、今後の私達と王国との関係は良好に傾くようになるかと。それと、もう1つご報告が」
跪くストリクスの顔が険しくなる。
「あの”破滅古竜”ヴィルへリアが地上に出て参りました」
「えぇーー!?」
ベルドレッドは髪を縛っていた布を解き、鏡石を雑にその辺へと投げ捨てるとストリクスに近づいた。
「それ……まじなの?」
「まじです」
ベルドレッドはゆっくりと玉座へと戻り、座る。突然高揚した気持ちを抑えるように一息呼吸を整えた。
「そっか、ヴィルっちが地上に出て来たんだ。てことはあーーし、またヴィルっちといちゃこら出来るってこと!?」
ベルドレッドは嬉しそうに両腕を上げる。先ほどまでのテンションとは打って変わっている。
「ですが、それに伴い異変も起こっております」
ストリクスは表情変えずに冷静に話を進める。
「イブニクル王国領土であるゼパル村がハイドラの襲撃にあったのです」
「ハイドラ? 珍しいね、ハイドラってあーーしらみたいに洞窟の深くやダンジョンを根城にする奴じゃん。普段は全然外に出てこないひねくれたやーーつ」
「はい、だからこそ。不吉な予兆を感じるのです。珍しい事が起こるというのは当然……悪い方向に」
「ふーーん」
ベルドレッドはカール掛かった髪の毛をいじりながら少し考えた後、口を開く。
「大体、あんたの勘って良く当たるのよね。ストリクス、本土への上陸はいつだったかしら」
「1週間後です」
「不安なら、明日にしましょう。早めに事を進めた方が良いっしょ?」
「ベルドレッド様が宜しいのであれば」
「じゃあ、明日にしましょ。みんなに伝えといて」
「かしこまりました」
ストリクスは立ち上がり、この部屋の扉の方へと駆け走る。この部屋を出たのと同時に飛竜の姿へと代わって姿を消した。
ベルドレッドは立ち上がり、大きく背伸びをする。
「ちょっと早かったかな? でもいっか! ちょっと話しに行くだけだし! 本土に出るついでにヴィルヘリアに会えると良いなぁーー! ちょーー楽しみ!!」
ベルドレッドはウキウキしていた。この本土上陸が、人間との関係に亀裂が起こる事だとも知らずに。
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