第13話 迫る脅威~王宮side~ 

 一方でイブニクル王国の王宮内の会議室に人が集まっていた。


 長テーブルの横には士官以上の階級の兵士たちが立ち並ぶ。部隊長カタールもその中に居る。

 中央にはイブニクル王と横には王宮全ての軍隊を操る司令官ジークブリードと深い色の青髪が特徴的な紅一点の女兵士、副司令官であるヒルダがいた。

 全員が揃ったのを確認したジークブリードはその白髪のロン毛を振り払って立ち上がる。


「これより、イブニクル王国緊急会議を開く」


 今から開かれるのは国の危機が迫って来ている際に行われる緊急会議である。これまでに開かれた回数は少ない。これまでの会議では竜の軍団が襲ってくると言う噂を聞きつけて開催されているが、そのどれもが

 デマであった為、いつも緊急会議の意味が無くなっていた。

 しかし、少しでも国に何らかの異常が起こりそうなことがあるならば、たとえそれが何であろうと開かなくてはならない。なぜなら、いつだからだ。


「まず初めに、イブニクル王かお話がございます。イブニクル王」


 ヒルダが王へ敬礼を向けると、王はゆっくりと立ち上がった。王は左手を挙げて、ヒルダを席へ座るように示した。


「ごほん。皆の者、本日緊急会議を開いたのは我が考えの事ではない。今回、緊急会議を開いて欲しいと我に行ったのはカタールじゃ」


 王の言葉の後、ゆっくりとカタールが立ち上がる。カタールが王に緊急会議を開くことを申した事実に周りはざわつきを見せていた。


「静粛に!!」


 ジークブリードが会議室内につんざく程叫ぶと、ざわつきはすぐさま収まった。


「カタール、どういうことだ? 今回の緊急会議の件、一体どういうつもりなんだ? 話してみろ」


 ジークブリードは鋭い目つきでカタールの方を見る。カタールはオールバックにしてポニーテールにした髪を揺らしながらゆっくりと話し始める。


「ジークブリード、そしてヒルダよ。良く君たちは何も危機感を持たずにこのイブニクル王国にぬさばっているのだ?」


「なに?」


「この国にもうすぐ……竜の軍勢が押し寄せてくると言うのに」


 カタールの言葉に黙って聞いていた周囲の士官達がまたざわ突き始める。


「カタール、それはどこから出現した情報だ? 我々はこれまで竜に襲われると聞いては緊急会議をし、騙されてきた。今回の件も……もし嘘だと言うのならそれなりの処罰が与えられるぞ」 


「ふっふっふ、ジークブリード。君のその硬い頭で良くそれでこの国の司令官が務まる。まぁ良い、話を戻すが今回の件は、残念ながらどうやら本当だ。なぜなら」


 そう言いながらカタールは懐から巻物スクロールを取り出し、それを開いて見せた。


「この国へ五大竜王の一頭、”雷帝古龍ヴリドラ”ベルドレッドから戦線布告の手紙が届いたからだ!」


 この一言で会議室中の者たちに戦慄が走った。ジークブリードは駆け足でカタールの元へ向かうと手に持っていた巻物を荒々しく奪うとすぐに中身を開く。

 しかし、書かれているのは人族語ではない文字で書かれていた。見たこともない難解な言語で書かれたそれは明らかに下手な蛮族が書きなぐったものではない。意図がはっきりとしている文字の羅列から、人間並みの知能を持つ魔物でしかできない。


「なんだこれは……!!」


「私には分かりませんが、恐らく竜族語かと。最後の行だけ、人族語で書いている箇所がございましてね」


 カタールの指さす行には人族語でベルドレッドの名が書かれていた。

 その名が書かれているのを見たジークブリードは先ほどまで冷静な面持ちから一気に焦る様子を見せていた。


「どうでしょうジークブリード。これは恐らく、イブニクル王国にかつてないほどの脅威が迫っていると私は思います。ベルドレッドは【ヴァジュラ】と呼ばれる武器を使い、嵐と落雷を生み出す力で暴れまわる。そう比喩されるくらい恐ろしい魔物。まさに竜王の名にふさわしい魔物だ。それに、ベルドレッドはこの大陸から南東に離れた小島を根城として下部と共に居座っているのだ。恐らくベルドレッドは竜の軍勢を引き連れて攻め込んでくるはずだ」


 ジークブリードの頭の中は多くの情報量の処理でいっぱいになっていた。


 どうしてこのタイミングでベルドレッドが動き出すのか?

 今から何をするべきか?

 竜に対してどれほどの対応を取ればよいのか?


 司令官として今からでも起こさなければならない行動を適切に出さなければならない。少しの間の後、ジークブリードはイブニクル王へ向けて口を開いた。


「王よ、このままではイブニクル王国の危機でございます。すぐにこの問題を対処すべく行動すべきです」


「等々、この日が来ようとはな……竜族との争いは避けられぬという事か。良かろう、ジークブリード、そしてヒルダ、お前たちが先導し、戦の準備をするのだ」


「はっ!」

「お任せを」


 そうして話が決まった時、1人の兵士がこの会議室へと駆けこんでくる。


「た、た、た、たいへんです王様!!」


「何だ? 何事だ?」


「ゼパル村がハイドラの襲撃に合い、被害が出ております!!」


「なに!? ハイドラだと!?」


「で、ですが、そのハイドラは現在討伐されたと報告がありまして……」


「なぬ!? この短時間でか!? 一体だれが討伐したのだ!?」


「それが、以前にこの王宮から追放した兵士、レイクだとゼパル村の護衛兵がそう言っておりました」


 その時、また会議室内の雰囲気は凍った様子を見せた。


「レイクだと? あの問題児の?」


 ジークブリードが伝令に詰め寄る。


「本当です! 目撃者が複数人いますので!!」


「……」


 ジークブリードは少し考えた後、伝令へ指示をした。


「レイクと話がしたい! ここに来るように持ち掛けろ、今すぐにだ!!」


「は、はいぃいい!!」


 ジークフリードの圧に伝令は逃げるように駆け出した。そして、ジークフリードは振り返り士官たちに向けて指示を出す。


「すぐに兵士たちを集め、作戦会議をする!! それから、物資調達班は戦の為の装備をそろえるんだ!! そしてヒルダ、俺は今からゼパルへ行き、ハイドラについての話を聞いてくる。その間、私の代わりに兵たちの指示を頼む」


「承知しました」


 ジークフリードを含めた士官たちは各々の仕事を行うために早々とこの会議室へと出る。ヒルダはチラリとカタールの方を見た。

 カタールは少しだけ小刻みに震え、拳を握っている。まるで、何かに悔しがっている様子に見えた。


「カタール」


「私も我が国を守るために動きます」


 ヒルダはカタールへ声をかけると、カタールは早々と逃げるように立ち去った。

 ヒルダはカタールの怪しい動きに少しだけ疑念を持つが今はベルドレッドの事を考えなければと頭を切り替え、ヒルダ自身も動き出すために会議室を後にした。




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