第10話 エリーネ•ミラノの襲来 視点.エリーネ•ミラノ
こういう時、1人暮らしは楽だわ。夜中に出歩いても文句いう相手がいないからね。で、紅音に教えてもらった住所の場所に来たのはいいのだけれど......何なのこのチープなマンション!エントランスもしょぼいし、受付もいないじゃない!庶民はこんなところに住んでるのね。はぁ、全く……紅音も物好き。
__私が聖桜丘学院に転入した初日
私は致命的なミスを抱えたまま、日本に来てしまった。教室の中、黒板側の壇上に立って挨拶をするまで、私は期待の眼差しを向けられていた。
「えぇ、小さくて可愛い」
「エリーネって、外国人だよね。私、仲良くなって英語教えてもらうかな」
クラスメイトのその声は、その時は何を言っているかわからなかった。
「あぁ、ニーハオ」
この第一声が孤立への第一歩だった。そう、私は日本の言語を中国語と勘違いしていたんだ。初日はほとんど日本語がわからず、休み時間に興味を持って集まったクラスメイトは、昼休みには消えていた。正直、もうホームシックでパパに帰りたいって言おうか迷っていた。
「ニーハオ! エリーネさん、よかったら一緒に食べませんか?」
でも、紅音はそんな私に声を掛けてくれた。
「あなた、英語できるの?」
「はい。というか、可愛いですねエリーネさん!」
「えぇ!?」
紅音は緩んだ笑顔を浮かべ、私の頭を撫で回してきた。いつもなら、小さいことを馬鹿にされてるようでイラっと来るのだけど、彼女には不思議とそんな感情は湧かない。ただただ照れるしか無いのである。プシューと何も言わずに赤くなっていると、彼女は続けて話しかけてきた。
「それに、話し方がとても個性的で素晴らしいです。面白くて可愛い……なんてエリーネさんは魅力的なんでしょう」
この人、恥ずかしいことをスラスラと言うなぁ。
「宮辻さん、わかったからもう撫でないで! 恥ずかしいんだよぉ!」
「あら、すみません。迷惑でしたよね」
「……迷惑じゃないけど。その、あんまり長いと恥ずかしい」
「ふふっ、わかりました。では、今度からは程々にします。エリーネさん、また昼休みご一緒しましょ」
「……うん」
__ニート野郎の部屋の前
紅音は拙い喋り方の私を受け入れてくれた。孤立していた私を受け入れてくれた。私を1番の親友って、教えてくれた。だから、紅音が変な奴に唆されてるなら、親友の私が全力で止める!紅音には悪いけど、彼女がいるいないに関係なく、ニート野郎には金輪際関わらないでと強く言ってやる。
__ピンポーン。
私はインターホンを睨みつけたまま、ニート野郎が出るのを待った。さぁ、出てこい。私が引導を渡してやる!
「……」
……出ない。
__ピンポーン。
「……」
もしかして、もう寝たの?いや、まだ20時だし早くない?
「あ、どちら様でしょうか?」
「スローだなぁ! まぁいいわ! 私はエリーネ•ミラノ、宮辻紅音の親友よ! 彼女に頼まれて直々にあることを伝えに来たの。さぁ早く開けて……!?」
「きゃあ! あんっ、そんな激しいのダメ〜」
「あっ河見さん、声出したら聞こえちゃうよ。静かに、静かにして!」
……ワッツ!?
えーっと、今の何かしら?あんあんって女が喘いで、ニート野郎と思しき男が必死にそれを隠していて……つまりこれは、そういうこと?な、なんてハレンチなの!いけない、気をしっかり持つのよ私!この男に主導権を握られるなんて、あってはならないわ!
「どうでもよろしいから早く中に入れろぉ!」
「えぇ、だからどなたか教えてください。怪しい勧誘なら結構です!」
「だから、私は紅音の親友のエリーネ……!?」
「ん……あん! そこ、そこがいいの!」
「うほぉ! 野崎氏、宮辻氏が求めてきてるでござるよ〜!」
「河見さん、宮辻さんって言わないで! 断じて違うから!」
い、一体部屋で何が行われてるの?紅音が、紅音がもしかして部屋にいてこいつらに監禁されたりしてるの?いや、でもこの喘ぎ声は紅音じゃないし。もう、何なのよ!
「ファ⚫︎キュー! さっさと開けろぉ!!!」
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