第12話 新しい友達とそのライバル

第一印象は「うるさい子」だった


ただの自己紹介だってのにやけに声がでかいし、そのくせどこか緊張していて、男子には好かれるタイプなんだろうなと思った


案の定、数多の男子達を勘違いさせてきている。


先日、教室の角で集まってる男どもが


「あれは俺に気がある」

だの

「いやいやいやお前じゃねぇよ」

だの

「なんでも、彼氏いるって噂だぜ」

だの

くだらないことを言っていた


挙げ句の果てには土下座したら…なんて抜かすゴミもいたのでキッチリとぶん殴っておいた


いつから仲良くなったのだろう

あちらから話しかけてきて、そのまま成り行きで友達になってしまった


嫌だった訳じゃない


ただちょっと今までの友達とは違くて

それで私もどうしたらいいか分からなかった



そんなあの子にも好きな人がいるらしい


相談された訳でもないんだけど、見てれば分かる。明らかにその人のことになるとソワソワしだすし、ニヤニヤしだす。


なんだかそれが懐かしいような、恥ずかしいような、そんな気持ちになって


いつの間にか隣にいるのが当たり前になってきた


だからこそ


私は確かめておかなきゃいけないことがあった


私の新しく出来た友達

その子が競おうとしている人が


本当にライバルなのかどうか

あわよくば味方なのではないか



私はお節介なのだ




「やっほ。東城さん」


「え、あ、黒崎…さん?」


「うん正解。どしたの?こんなとこで」


明らかに逃げようとしていたのを捕まえる

恐らくはあの2人が話してるのをみかけて避けるつもりだったのだろう


「別に…外の空気でも吸おうかと思って」


なるほど

その言葉には嘘はなさそう

ただ少し物悲しさが伝わってくる


ふむ


「じゃあさ、私もついてってもいい?同じ班のよしみでさ?いいでしょ?」


「え、はい…構いませんが」




「うーーんやっぱ空気おいしいねー」


「これだけ自然に囲まれていれば当然ですね。都会とは違って本当に綺麗な景色です。」


「だよねー…ところでさ」


あまり時間もない


直球でいく


「東城さんって好きな人…いたりする?」


「…」

「へ?」


あ、完全にフリーズしちゃった

うーーーんこういう話題には弱かったかな?


話題を変えようとどうにか考えていると


「そんな人は…いません」


あー


これいるなぁ

明らかにその人のこと考えてる顔してるもん

似た者同士だねハルも東城さんも


ま、話を合わせとくか


「あ、そうなんだ?まーさすがにまだ早いよねぇ」


「そういう黒崎さんはどうなのですか?」


おっとそうくるか

結構悩みどころだが


まぁ正直に返すとしよう


「私?私は彼氏いるよ?」


「え?」


「ほら同じ班の、というか東城さんと同じクラスの梅原ってやつ」


「へ、あ、そう、なんですか…」


ん?明らかにテンション下がってきた



まさか狙いそっち!?



いやないか…あんなの好きそうなタイプには見えないし


そうであってほしい


「あれあれどしたん?もしかして梅のこと好きだったり?」


「いえ!そんなわけはありません!ただ…」


ナチュラルにフラれたな私の彼氏…


「こうなってくると余計に私は邪魔なんじゃないかと」


「へ?どゆこと?」


「だって、黒崎さんと梅原くん。それに中原くんと南野さんだって付き合ってるとなると、私だけ仲間外れみたいで…」



爆弾投下してきたぁ…



うーーーんなるほどそういうことね


だからこの前のカレー作りの役割決めの時に自分から煮込む方にと提案したのか


いやまぁ、ハルのあの顔見たら誰だって譲りたくもなるけどさぁ…とんでもない顔してたもんなぁあの子。少しは隠しなよホントにさ


さて、ここどうするか


本来なら2人は付き合ってることにするのがベストなんだろうが


なんだか東城さんが可愛く見えてきた


それに嘘をつくのもあまり好きではないし



となれば1つか


「いや、えっとね、あの2人別に付き合ってないよ?」


「…え?」


「なんか中学で同じ部活だったーってくらいでそれ以上はないっぽい」


「え、でもこの前教室まできて呼び出してたじゃないですか…!」


「あ、あれは…確かサッカー部の見学に行こうって話をしてて、ホントにそれだけだったよ?すぐにあの子どっかいったし」


「そうなのですね…」

「よかった…」


ほほーーーん?

小声でこぼした声をこのマッキーイヤーは聞き逃さないぞー?


やっぱりそっちか


となるならば




「おーい!マッキー!どこ行ったのーー!?」


「おっとうるさいのがきた」

「んじゃ私はこれで」


「え、あ、はい。えっと黒崎さん」


「真紀」


「え?」


「真紀でいいよ」


「えっと…真紀さん」


「んーー今はそれでいっか。

で、どしたのナッちゃん」


「ナッちゃん…!?」


「あ、嫌だった?なら…」


「いえ!嫌ではありません…」

「その…ありがとうございました」


「ん、こちらこそ話してくれてありがとうね」



新しく出来た友達のもとを離れ

私はそのライバルのもとへと戻る



そう


私はお節介なのだ

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