楽しい楽しい林間学校の話

第8話 期待と不安の林間学校の話

「というわけで来週からは林間学校…もとい新しい環境に手っ取り早く慣れてしまおう会の開催になるわけだが」

「うちの林間学校では毎年登山をしていてな。なーに低い山だ。散歩する程度の距離しか歩かん。その後に食べるカレーはうまいぞ?ま、作るのも自分たちだけどな」


「この時間にやるべきことは一緒に登山をし、カレーを作る班決めです。2組と合同での班決めになりますので皆さん、どうかよろしくお願いします」


林間学校


それは高校生活最初のイベントであり

最大の難関でもある


理由は


「はーいじゃあとりあえず…適当に班作れるかー?5人くらいがベストなんだが」


作れるわけねぇだろ!

なんだその悪魔的な風習は!

こちとらまだ出会って2週間しかたってないんだぞ!?

しかも他のクラスと合同なんてどうかしてんのか!?


と、頭を抱えてるうちに1人の男がよってきた


「なぁなぁ委員長…どうすんの?」


「なにがだ」


「そりゃお前もちろん」

「東城さんと南野さんどっちをとるかって話だよ」


「バカかお前?」


「俺は本気だぜ?とりあえず俺と組むのは確定だろ?後は適当に1組の男子取っ捕まえて、

あー真紀も呼ぶとして、あと一人、どっちをとるんだよ」


俺達は2組、そしてハル達は1組だ。


(……というか)


「真紀って…お前知り合いなのか?あっちの委員長と」


「あーまぁそんなとこ。同じ中学なんだよね」


なにか含みがある感じだ。

…こういう時は余計な詮索はしないに限る。




「どっちを…ねぇ」


全体の安定感を考えるならハル1択だろう。

あちらの委員長とも仲が良さそうだったし

俺としては少し気まずいのだが…


しかし、梅原たちの事を考えなければ俺は東城さんがいい。


多分苦労するだろうがそれでも見たことのない一面だって見れるかもしれない。


すると


「ねぇねぇねぇ」


聞き覚えのある声


ふりかえると少し緊張しているハルがいた


「もう、班決まっちゃった?良ければあの…

一緒にどうかな?」


そっちからくるのか

なんとも断りにくい状況になってしまった

別に嫌なわけではないのだが…


「お、いやいやまだ全然決まってなくてさ!南野さんがきてくれるならもう大歓迎だよ!な、士郎くん!」


どういうテンションだお前

まさか狙ってんのか?

あとなんだ士郎くん!ってお前普段委員長としか呼ばないだろ


「あ、ホントに?良かった!えっと、こっちももう2人で固まってて、梅原くん的にも大丈夫だよね?」


「そういうわけだから、変なことをしたらぶっとばすからな?梅原くん?」


「な…まぁそりゃいるよな。別にいいぜ俺はお前がいようと俺は関係ないからな」


ハルと共にいたのはあちらの学級委員でもある黒崎だった

ギャルって感じでまた違った良さがあるな


というか梅原お前さっきまでと言ってることが違いすぎるだろ、思春期か?


「さて、あと一人はどうしよっか?うちの男子でも捕まえてみる?少し真面目そうな子がいいんだけど」


なんだその俺たちが不真面目みたいな言い方は

不真面目なのはコイツだけだ


「えっと…中原くん的に誰が良かったりする?やっぱり…東城さん…とか?」


急にゴニョゴニョなにを言い出すのかと思えばどうしたんだ?ハルらしくもない。

どちらかといえばお前は梅原よりのタイプじゃなかったか?


でも


「そうだな…」


ふと東城さんを探してみる


すると案の定1人で頭を抱えている彼女を見つけた


普段のクールな姿からは想像も出来ないほど困ってそうな顔をしている


それだけでも見たことのない一面を見れて嬉しかったのだが、早めに声をかけてあげた方がよさそうな気がしてきた。


この悪魔的な風習に悩んでるだけではなさそうな、いわゆるヤバめな目をしていたから


「東城さん」


「え、あ、はい!?」


聞いたこともないような高い声


そんなかわいい声出るんだな

そう思いつつ続ける


「えっと、うちの班あと一人なんだけど…一緒にどうかな?あ、もしかして誰か予定あったり…する?」


これはハルの事をとやかく言えないな

歯切れが悪すぎる

断られたら、という考えが頭を駆け巡り

逃げの言葉を出そうとしたその時


「いや…その、まだです」

「中原くんたちが宜しいのでしたら、是非、同行させてください」



「あ、うん!全然大丈夫だよ!」


ヤバい

テンションおかしくなってきた


…これじゃ梅原のことも悪くいえないな


「じゃあとりあえずあっちで集まってるから、ついてきて」


「は、はい…」


無駄に広い体育館

そこを2人でペタペタと歩く

少しむず痒いけどなんだか青春っぽくて…



この最高の風習を考え付いた誰かに感謝しつつ


これからの林間学校について想いを巡らせるのだった

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