中巻

僕は家を出て、目的地へと向かった。

崩壊した街だ、地図を見ながら進むのは難しい。

だが、幸い地図の場所は近くにあった。

僕は崩壊した道を歩く。

そして、ついに辿り着いた。

しかし、そこにはなにもなかった。

僕は地図とこの場所をもう一度確認する。

だが。やはり地図はここを示している。

なぜなにもないんだ。

僕は周囲を探索することにした。


探索を開始してから1日が経過した時だった。

僕は一台の自販機に目がいった。

なぜなら、自販機はやけに綺麗だったから。

もちろん、崩壊に巻き込まれていないだけだということも考えられるが。

さっきの家のこともある。

僕は自販機を調べることにした。

自販機を下から持って横に動かす。

すると、そこには階段があった。

僕は記憶の手がかりがここにあると思い奥へと進んだ。




地下に通じる階段を降りていくと、分厚い扉が目の前に現れた。

扉にはロックが掛かっていて、とても入れそうにない。

どうやらこの地下にはまだ電気が通っているみたいだ。

僕は扉の近くにあったカメラを覗き込む。

「認証完了」

カメラから無機質な声が鳴ったと同時に。

扉は大きな音をたてて開く。

僕はもしかしたらこの場所に来たことがあるのかもしれない。

そんな予感を感じながら僕は先へと進んでいく。



扉の先にあったものは。

研究所だった。

たくさんの資料や人型のロボットらしきものが床に散らばっていた。

僕は確信する。

ここに来たことがあると。

さらに奥へと進んでいくと奇妙な部屋を見つけた。

僕はそこに答えがあると確信し、中へと入る。



中には無数の巨大なカプセルがあった。

僕はそのカプセルの中身を確認した。

すると、そこには人がいた。

死んではいない。

眠っているようだ。

まただ。

僕はこの景色を知っている。

そう、これは崩壊が起きる前のことだ。

僕はこの先に答えがあると確信した。

無数のカプセルを見ながらさらに奥へと進んでいく。

そして最後の部屋についた。

僕は扉をあける。


扉の先にはベットと机、そして一枚の手紙があった。

また質素な部屋。

まるで同じ人間が使っていたみたいだ。

僕は机にあった手紙を手に取る。

この手紙こそが僕の記憶を思い出すための最後のカギなのだろう。

僕は手紙を読むことにした。


2067年4月18日


俺は今から手紙を書くことにした。仲間に見られたらなぜ急にって思うかもしれないな。だけど、俺はこの世界になにが起きたのか文章に残しておきたいからだ。このあやまちを2度と繰り返さないために。

じゃあ、話していこう。

この世界に起きたことを。


まずこの世界がなぜこんなことになっているのか。それは、

地球の限界がきたからだ。

二酸化炭素が増え、オゾン層を破壊し、地球の温度が上昇した。

そのことにより人々は外での活動が困難になってしまった。

外で活動できないとどうなるのか。

そう食糧困難に陥る。

人々は食べ物を得るために争いだした。

俺たちはいち早くそのことに気づき、仲間たちとこの研究所に逃げてきた。

幸いなことに食糧の備蓄は山ほどあったからな。

俺たちは飢えに負けず生き残ることができた。

しかし、それも限界がくる。

俺たちはただただ死を待つだけになった。


ある時だった仲間の一人がこう言った。

この世界は一度リセットされる。

そしてオゾン層が回復し、人類がまた活動できる温度になるまで冷却装置をつかってコールドスリープをしないかと。

その提案に仲間たちは賛成した。

しかし、その計画には大きな問題があった。

そう。誰かが眠った俺たちを起こす役割がいるからだ。

しかも、人間ではダメだ。

なぜなら食料が圧倒的に足りないからだ。

ならばと俺たちは人型のロボットを作ろうとした。

結果は、失敗した。

体は完成したが、肝心の脳が作ることが不可能だった。

俺たちは絶望した。

どうしようもない壁にぶち当たった気分だ。

どうすればいいのか。

頭を悩ませていると、ふとアイディアが湧いた。

そう俺たち誰かの脳をロボットに移せばいいのだ。

過去に前例もあって、可能ということがわかる。

俺は勇気を出して仲間に提案した。


俺の脳を移せと。


仲間は反対したが、俺の説得に応じ、最後には皆が賛同してくれた。

そして手術は無事成功し、俺はロボットに脳を移した。

声帯がないためしゃべれはしないが、手紙で会話をすることにも成功した。

その2日後、仲間のコールドスリープにも成功した。

俺はこれから長い時間、孤独をあじわうのだろう。

だが俺には仲間との記憶がある。

そう思っていた。

だが、甘かった。

脳の移植の影響がなにもないと思い込んでいた。

俺の記憶はだんだんと抜け落ちていった。

家族のことですら思い出せないほどに。

このままでは使命を果たせない。

だから、俺はこの手紙を書くことにした。そう。


俺が思い出せるように。



今見ているのだろう?俺。

この手紙は俺が次の俺に書いたものだ。

手紙をみて思い出せよ。

かならず使命をはたせ。



手紙はそこで終わっていた。

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