記憶のカケラ
ソーマ
上巻
目が覚めると僕は見知らぬ部屋にいた。
壁紙が白く僕が寝ていたベット以外なにもない。
僕はなぜこんなところにいるのだろう。
そもそも僕はだれなんだろう。
思い出そうとしてもまるでモヤがかかったように先がみえない。
だけど、僕にはやらなければならないことがあったはずだ。
それだけはわかる。
僕はベットから降りて、部屋の扉を開けた。
部屋から出て初めて目にしたのは、崩れた建物だった。
次に目に入ったのは、コンクリートを突き破り、建物に貫通している植物だった。
僕はこの光景を知っている。
しかし、思い出せない。
僕は思い出さなければならない。
使命を果たすために。
今度こそ。
記憶を取り戻すために。
僕は崩壊した街を歩く。
この世界にはなにが起きたんだろう。
どうして街は崩壊しているのだろう。
どうして誰もいないんだろう。
考えても無駄だ。
僕はなにもわからないから。
記憶を思い出したときこの世界になにが起きたかわかるのだろうか。
そして歩き続けて3日が経った日のことだった。
僕はついに記憶を戻す手がかりになりそうなものを発見した。
崩壊した街の中で唯一無傷で残っていた家。
この家を見たとき、僕の記憶の手がかりがあると直感した。
なぜなら見たことがあるからだ。
記憶を失う前、たしかこの家に住んでいた気がする。
僕はさらなる手がかりを求めて、玄関の扉を開ける。
家に入ると中は荒れていた。足の踏み場もないほどに。
僕は慎重に奥へと進んでいく。
すると、足元が突然ぐらついた。
僕は物をどかして足元を確認する。
そこには扉があった。
僕はこの先になにかあると思った。
記憶を取り戻せるかもしれない。
僕は意を決して扉を開けた。
扉の下にはハシゴがあった。
どうやら地下に通じているらしい。
僕は警戒しながらもそのハシゴを降りた。
地下には部屋があった。
ベットに机しかない質素な部屋。
なんとなく僕が最初にいた部屋に似ているような気がした。
僕はふと机にあった2枚の写真を見つけた。
1枚目には、年老いた老夫婦と真ん中に不機嫌そうに立つ若い男が写っていた。
家族写真だろうか。
もう一つは、友人との写真だろうか。
1枚目に写っていた男の他に若い男女が笑顔で写っていた。
多分だが、僕はこの写真を見たことがある。
それはいつ見たもので、どこで見たものかも思い出せないけど。
特にこの不機嫌そうに映る男。
僕はこの男を知っている。
しかし、これ以上思い出せない。
僕が部屋を調べようとしたときだった。
2枚目の写真の裏になにか書いてあるのが見えた。
これは地図だ。
僕はその地図が指し示す場所へ向かうことにした。
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