一章6話 Awakening 覚醒

「どうした?こないのか?なら、こっちから行くぞ?」

そう言い駆け出していく。

そして、弱点の宝玉を殴り飛ばそうとしたその時、ドラゴンは身を捩り間一髪で弱点を回避する。

だが、胸部を殴られ呻き声を上げるドラゴン。

「グ、グルゥゥ、グラァァァァア!!!」

そして咆哮、その威圧感の重圧に一瞬の間だが足を止めてしまうグレディア。

ドラゴンの咆哮はスキルとして存在し効果は

一定時間行動不能、相手全体への状態異常「恐怖状態」の付与、ステータスオール-20%付与とデバフのオンパレードだ、チートである。

だが、ちゃんと打ち消す方法も多数存在する。

その1つとして、レベル差がある。

レベルが同数または上の相手には僅かな足止めにしかならない。

だが、こと戦闘に限って言えばその足止めですら命取りになる。

なにせ、コンマ何秒を争う戦闘に1秒でも隙が生まれればそれは相手にとって絶好の獲物である。

戦闘経験が豊富な者はそのチャンスを見逃さないだろう。

なにせ、狙ってる獲物が僅かにでも足をとめたのだ狩らない馬鹿は居ない。

そしてドラゴンはその狩る側に居るのだ。

種族の王者として、色々な戦闘をしてきたドラゴンが豊富じゃない訳が無い。

相手が覇王じゃ無ければの話だが。

その隙を付き獲物を狩り取ろうとその巨大で強靭な爪を振り下ろす。

だが、グレディアあろう事かその爪を左手1本で止める。

その有り得ない光景に驚き唖然とし逆に隙を生むドラゴン。

そして、その隙を見逃さない男では無い。

中身はともかくガワは最強と言われた覇王なのだ、そして精神的にも体に引っ張られている状態だ。

爪を握りつぶし破壊する。

必死に力を入れていたドラゴンは突然の浮遊感に襲われ身をよろめかせる。

「エンチャント、覇炎」

その隙に跳躍しドラゴンの顎下をアッパーの要領で殴り飛ばす。

その腕には黄金のオーラを煌めかせる炎を纏わせている。

「フン、最強の種族とあろう者が小細工か笑わせる.....‪あまり舐めるなよ!!」

その言葉と共に覇王の威圧が発動する。

そして、発動とともに引っ張られていた精神が遂に同調し融合する。

すると、グレディアは、、いや蓮司は辺り一面、真っ暗な空間に意識だけ飛び込む。

「ここは?...いったい?」

辺り一面真っ暗な空間。

だが、そこに淡い光が差し込む。

そこから1つの足音がこちらに向かってくる。

そして、その全身が見え目の前に辿り着くその正体は、なんとグレディアだった。

蓮司としてのグレディアでは無い。

正真正銘この世界でのグレディアなのだ。

その姿に唖然とする蓮司。

その様子にグレディアが可笑しそうに口を開き。

「ハッハッハ、なんて顔をしているんだ。」

心底、可笑しそうに笑う。

「まぁ、なんだ、相対するのは初めてだから

はじめましてと言った方がいいのかな?知っていると思うが私は君だいや、覇王側の君とでも言えばいいか?まぁ、よろしく頼む。」

と、軽く頭を下げるグレディア。

「さて、ここが何処か分からないような顔だなまぁ、無理もないここは君の精神世界と言うやつだ。」

「あぁ、外の時間はそのままだから安心してくれていい。」

と、手を前に出して落ち着くようにいう。

そして正気に戻った蓮司は。

「なんで...グレディアが...」

現実を受け止められない蓮司。

「それについて説明しようか、まず君はグレディアとしてこの世界に降り立った、何の因果か君のゲームのキャラクターそのままの力で

魂の無い器の中に。」

そしてと付け加えながら言う。

「当然、争いの少ない日本人の魂をこの争いの絶えない世界に送り込むのは少々骨が折れる。」

と、やれやれのような仕草をしながら話すグレディア。

「なにせ、価値観が違うわけだ、日本人は良い意味で平和ボケしているからな。

平和を満喫してると言っても良い。

素晴らしい事だ、まぁ中には悪しき者もいるようだが。

だが、その平和ボケはこの世界にとっては悪手でしかない。

なにせ、ちょっとした事で傷付き心が折れる。現実に打ちのめされてな。

そして、そのバックアップとして私がいる。

所謂、物理的なカウンセラーとでも言うべきか、君の心の折れた部分を修正する存在として君のゲームのキャラクターを元に設定し作成された人格。」

そして、両手を広げながら。

「それが私だ。」

あまりのことに絶句する蓮司は言葉が出てこない。

「だが、君は心が強い...能天気と言ってもいいかな?だから、あまり修正する部分はなかった、まぁ人殺しは忌避感があるようだが。」

そんなことを笑いながら言う。

「君の持つジョブスキル。

これがあまりの力に不具合を起こしてね、強すぎる力に精神が耐えられなくなり私でも修正が出来ないところで、私の人格を設定している部分、覇王としての人格が君の魂に溶け込んでいる。

しかし、まさか2回使っただけでこうなるとは神でも予想出来なかったみたいだ。

だが、別に悪いことでは無いむしろ良い事だ。

なにせ、私が要らなくなるのだからな。

本当は、1人の体に2人の人格を持つ方が良くない、人格が破綻し廃人になる可能性もある。

だが、平和を満喫する日本人にとっては必要な処置だったのだ。」

「そして、その精神が完全に融合する前に君をここに呼んだわけだ。」

そして、おもむろに蓮司は口を開き

「俺の魂に溶け込んでいるってなんだよそれ、じゃあ、あんたはどうなんだ!?

その設定された人格が俺に溶け込んでいるとしてその人格を持つあんたは消えるんじゃないのか!?」

その言葉を聞き唖然とするグレディア。

そして、可笑しそうに笑いながら。

「君はやはり心優しいようだね、それを聞いて安心したよ、その心を見極める為にここに呼んだんだから。

いくら、魂の中に居ようと君の奥までは覗けない。

これは、強制になってしまうから拒否権は無いも同然。

だから君の心に残忍性があれば君の心を壊し、私がメインの人格になろうと思った訳だ。」

そして、瞑目し目を開け口を開く。

「それは、安心してくれていい。

君に設定された部分が溶け込んだとして私の人格が無くなることは無い。

君の魂を離れ神の元へと帰るだけだ。」

そして蓮司は。

「俺が俺じゃなくなるんじゃないのか?」

その言葉を聞いてさらに可笑しくなったグレディア。

「ハハハ、君は頭もいいみたいだ。

そこまで、考えているとはな。

それも安心してくれ溶け込むと言っても精神だけだ、君の人格が壊れるような事は無いと断言する 。」

「だが、どうしても精神は引っ張られる、時に残忍なことをしてしまうかもしれない。

が、君の持つ本来の力は引き出せる。

なにせその様に設定されている訳だ。」

「だが、君の中に居た私だから言えることだが君は心が強い、だから覇王の精神に負けることは無いだろう。」

そんなことを微笑みながら言う。

「じゃあ俺がこの世界に来た理由は?あんたなら知ってるんじゃないのか?そのあんたの言う神が俺をこの世界に呼び寄せたのか?」

その言葉に首を振りつつ。

「別に神が君を呼んだわけではない。

日本にこの世界へ通じるゲートが開いただけ。

そして、そのままの精神では廃人となる者が今まで多数存在した、だから神はその処置として私を創造し君の魂のバックアップとして付与したそれだけだ。

もちろん君を呼んだ存在を知らない訳ではないが、私の口からはいえない。だが直ぐにわかると思う、頭のいい君ならな。」

その言葉に唖然としながら。

「なんだよそれ...」

「ではヒントだけ、君を呼び寄せるだけの力を持つ者が、古の英雄に助けを求めた。

その者は君の近くに居ると、そしてその者から聞くと良いこの世界の事、なぜ呼ばれたのかを。」

その言葉を皮切りにグレディアの体から光が溢れ出す。

「どうやら時間のようだ最後に一つだけ……頑張れ赤羽蓮司、君の活躍を期待している。」

そのままグレディアは光の粒子となって消える。

「なんだよまだ聞きたいことあんのによ、この世界には何人、召喚されてるとかさ。

まぁいい、それは自分で調べるか。」

空へ顔を向けながら。

「あぁ、任せろ。

一日と無い時間だったけどよありがとな!」

そう微笑みながら言う。

そして、辺り一面が光に包まれる。

次に目を開けた時は現実世界だった。

「じょう...です...大丈夫ですか?!」

そう遠くの方で声が聞こえる。

「あぁ、大丈夫だ問題無い。」

そして、覇王の威圧に怯え手を出せないドラゴンに目を合わせ。

本来の力を発揮する為の切り札を取り出すキーワードを発する。

「換装、炎舞」

その言葉を発した瞬間、グレディアを中心に炎が巻き上がる。

そして巻あがった炎が一瞬で掻き消える。

そこに居たグレディアの右手には人の大きさ程ある、装飾の施された大剣、左手には大剣とは違った形の装飾が施された片手剣が握られていた。

そして、大剣を前に突き出し片手剣を肩に担ぎながら。

「いくぞ?第2ラウンドの始まりだ。」

瞬間、爆発的な突進力で地面を蹴りあげるドラゴンに迫る。

「エンチャント覇炎、極天轟地!」

そして、覇炎を纏い覇剣術のスキルを使用する。

左手の剣を逆風の要領で斬り上げ、更に右手の大剣で唐竹の要領で一気に振り下ろす。

これにかかった時間は僅か、0.5秒。

まさに一瞬

その一瞬で斬られ深い傷を作り、悲鳴の様な咆哮をあげるドラゴン。

「グ、グオォォォォ!グ、グルゥ!」

そして負けじと、ブレスを吐き、爪を振り下ろし、尻尾で薙ぎ払う。

が、それら全てを回避される。

ブレスは覇炎魔法で相殺、爪は剣で叩き折り、尻尾は受け止める。

受け止め、あろうことかドラゴンを振り回す。

初めての経験だったのか、涙目になりながら振り回されている。若干、鼻水まで出ている。

「ウギャーーーーーー!」

咆哮とは似ても似つかない悲鳴の様な声をあげる。

「ハハハッ、随分と愉快な声をあげるじゃ無いか。」

可笑しそうに言いながら笑い。

「さて、トドメといこうか。」

不敵な笑みを浮かべながら大剣を頭上に振り上げ。

「エンチャントフルフォース覇炎、身体強化魔法発動、limit off、over limited braek!」

その言葉をキーワードにグレディアを中心に膨大な魔力の奔流が溢れる。

それは、可視化するほどの濃密で絶大な魔力。

金色の魔力をその身に纏い、更に剣へと魔力を流し覇炎を纏う。

空に届くのでは無いかと言う程、炎は巨大化する。

「覇王式剣術奥義、極星砕破斬!」

そして、振り下ろそうとしたその時。

「すいません調子乗りました!許してくださーい!?!?!?」

なんか、ドラゴンが喋ったのだが?



本日はここまでです!

ちょっと展開が早かったですかね?

まぁでも、グレディアを強くしようと思ったらこうなりました。

そして次回はなんと!ドラゴンが喋った!?

そして、この世界の事が明らかに!?

乞うご期待!

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