第25話 お昼ご飯の話
「俺達別れよう。」
「…え。」
気づけば私は、部屋のベットで寝ていた。空はほんのりと明るい、時計は7時を表示している。
昨日お祭りからどうやって帰ったのか覚えていない。寝たはずなのに昨日のことがずっと頭で反響する────
────
──
─
昼ごはんの時間。俺は
「んで、鈴木は部室で何してんの?」
「ミーティングだってよ」
いつもなら教室で鈴木を含め3人でお昼を食べているのだが、今日はミーティングがあるらしく、待つのをかねて部室棟の近くでご飯を食べようというわけだ。
俺は弁当風呂敷を広げ、蓋を開ける。そしてさっき自販機で買ってきたペットボトルのフタを開け、一口だけ口に含む。
「そういやさ、昨日なんで雛さんと祭りいたん?」
ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!
おま!は!?なんで!!!…と、とりあえず誤魔化さなきゃ!!
「イやぁ〜なンの話??」
すると
「はぁ、いつも言うけどよお前にゃ嘘は向いてねー。潔く諦めろ。」
チクショー!
「…お前と他に誰が見た?お前部活じゃなかったっけ?」
「練習場所がそっち側でさ、帰りにチラッと見えた。クラスのやつ何人かいたけど見つからないようにしといてやった。感謝しろよ」
この言葉を聞いて、俺はほっと胸を撫で下ろす。変に噂になったり、それがクラス中に広まるのは俺にとっても、
やはり持つべきは親友。最強優男
「いや〜ガチ正直助かる。バレんくてすみそうだわさんきゅ」
俺が感謝を伝えると
「はい、人質取りました!バラされたくなきゃ理由教えろ。」
「それが目的かよクソが!?」
やはりクズだ。最低腹黒男
──閑話休題──
背に腹は変えられない、仕方なく
「ふへー、いいじゃねーか。」モグモグ
「もっと真剣に聞けな。」
こっちが大事な話してんのに、こいつは呑気に購買で買ったパン食いやがって。
「いや、結構真面目よ。嘘告白だったってのは正直おもろいけど、あんな可愛い子と付き合えるならむしろ超お釣りくるでしょ。」
「う…まぁ、言わんとしてることは分かるけど…」
しかしそれは表面的な話。
付き合っていたから分かる
自分はそこには全く届かないと思わされてしまった。端的に述べると、普段から高くない自己肯定感がこの数ヶ月でボコボコにされてしまったってわけだ。
「んで、今はどーなのさ?」
パンの一切れを口に放り込みながら、
「別れたよ流石にもう。」
すると
「…まぁ、理由はなんとなく分かるから聞かないでいいや。」
そう言ってパンの最後の一切れを口に運んだ。
──────
────
──
─
それから月日が流れ、終業式を経て年が明けた。
「なんでこんな遠くに初詣来なきゃダメなの〜?」
「仕方ないでしょいつものところは混んでたんだから!」
文句を垂れる父を母が嗜める。
今日は1月1日、俺は家族全員で初詣に来ているところだ。
俺 「まぁ、こっちも人多いけどね。」
姉 「夢の国みたいだね」
やめとけおい。
ごった返す人混みとは相反して、参拝の待機列は予想よりスムーズに進んだ。そのおかげで家族でだべってる内にもう拝殿の前まで来ていた。
賽銭箱に5円玉を投げ入れ、律儀に二礼二拍手して手を合わせる。
(平和に暮らせますように)
毎年変わらない、平々凡々としたつまらないお願い事を脳内で唱える。そして再び深く一礼をする。
隣を見ると案の定家族はまだ手を合わせている途中だ。姉に至っては歯軋りしそうなくらい歯を食いしばりながら必死にお願い事をしている。
(何願ってんだか…)
呆れ半分興味半分。
俺は次の人の邪魔にならないように、一足先に授与所(お守り売り場)に向かう。
(いつものは…あったあった。)
俺の腹あたりまである高さの陳列棚に毎年変わらないお守り達が並ぶ。変わっているとしたら干支モチーフのお守りくらいだろう。
俺はその中から毎年買っているお守りを手に取る。青い布地に幸運と金色の刺繍で書かれている小さなお守り。
父に買ってもらおうと辺りを見回すが、授与所にはいない。
(まだ祈ってんのか?)
流石に遅すぎる気もするが一応拝殿の方を見る。すると祈っている家族の姿は無く、その代わり拝殿のすぐ横で誰かと喋っているのが見えた。
(誰…?知り合いかな?)
眉と瞼を上下に動かしながら目を凝らしてよーーく見る。
5人くらいいる、家族を引けば2人か。母さんの背中が邪魔で顔がよく見えない。なんかお父さんがぺこぺこしてる…会社の人?でもそれなら姉ちゃんがあんなに仲良さそうにはしないよな…
やりとりを確認していると、母がこっちを指さしてきた。そしてに5人が塊になってこちらへ近づいてくる。
母と父が知らない顔の男性、多分2人と同じくらいの年齢だろうか、を挟んでその後ろに姉と、隠れてしまって見えない誰かが並んで歩いてくる。
やがて5人は、俺が目を凝らさなくてもピントが合う距離まで近づいて来た。前列3人の間から隠れていた人の全貌が段々と見え始める。
母の背にも隠れてしまうくらい小柄で、深雪映える艶やかな黒色の髪。纏う雰囲気は氷のように儚く触れることすら憚られてしまいそうだ。
俺は顔の見えない内からこの人が誰かすぐに分かった。なぜならこんな人1人しか知らないから──
「───
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