第19話 小玉伊織の話
「あの…席どけてくれると助かるんですけど…」
俺が月曜日の朝一番に発した言葉がこれだ。教室に入ると何故か俺の席が占領されていた。
「あ、おはよ〜。待ってたよ!」
月曜朝とは思えないほど溌剌に挨拶をする俺の席を占領していること人は、
座って座ってと言いながら、席を空け俺を半ば急かすように座らせる。
俺は流さるまま席に座った。学生バックを机の横にかけようと目線と体を少しだけ傾ける。そして顔を上げる。その瞬間さっきまで誰も座ってなかったはずの前の席に、いつのまにか座っていた女子生徒と目が合った。
(さっきまでいた…?)
困惑と驚きの余り、彼女の事をじっと見つめてしまう。相手の方も嫌な顔一つせずじっとこちらを見つめ返してくる。
彼女の名前は
「ども…」
見つめ合って数秒間が経ち、正気に戻った俺は途端に恥ずかしさが込み上げて来たため逃げるように挨拶だけをかわす。しかし
「あー、えっと…」
(なに考えてるか分かんねー…)
突き刺すような視線に急ながら、なんとか話題を作ろうと俺は頭をひねる。
俺「…て、天気、いいね…今日…」
伊「…」
俺「…」
(だよね!知ってた!!だって別に今日天気良くないし!曇りだし!!!)
つくづく自分のコミュ力の弱さが憎く思えてしまう。
(神様仏様女神様!誰か私に話せる話題を下さい!!!)
千「でね、君をまっ…」
俺「女神様ッ!!」
千「??????」
─閑話休題─
キンーコーンカーンカーン
1日の終わりを告げる鐘の音。いつもなら俺は急いで支度を済ませて、もうとっくに教室を出ていただろう。しかし今回は違う。
朝、
(話ってなんだろう?)
疑問は持つものの、なんとなく内容は分かっている。勿論それは
罰ゲーム期間の1ヶ月が過ぎたとはいえ、それは
イタチごっこの考えを巡らすうちに俺は生徒玄関に着いていた。
流れ作業のように下駄箱から靴を取り出し、土足厳禁のドロドロに汚れているカーペットに靴を投げ捨て、履く。
…あれ?
辺りを見回すが、
(約束はここのはずじゃ…?)
何か勘違いしていたたのだろうか、俺は慌ててスマホをポケットから取り出す。画面をタップすると同時にスマホが震え、メッセージ通知が届く。
『ごめん!遅れるから待ってて』
『いおりんいるはずだから一緒に待ってて!』
(い、いおりん…?誰?)
おそらく
(でも一緒に待っててって言うってことは俺も知ってる人か…?)
俺はいおりんと呼ばれる人物を突き止めるべく、頭の中にある薄い知人アルバムを広げる。
(なんとなくピンときそうでこない…)
どこかで聞いたことあるような名前だが、思い出せない。くしゃみの時のようなもどかしさを抱えながら、俺は一層深く考え込む。
「───あっ…!」
そして見つけた。いおりんにピンとくる人を。
しかし俺が呟いたのと同時に、何かが鼻をくすぐる。花系の甘い香り。これは…香水?
ボルトが止まって見えるほどの短い時間を置いて、誰かが視界内に入ってくる。
金色の髪、白い肌、茶色のブレザーに身を包んだ周りより少し小さな背。俺のピンときた人と同じ見た目。
「ぃおりん!!」
咄嗟にそう叫んでしまった。
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最後までお読みいただきありがとうございます。少しでもいいと思ったら高評価よろしくお願いします。
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