第17話 晩ご飯の話Ⅱ
「「ごちそうさま」」
4人揃って手を合わせた。この習慣になっている『揃って挨拶』を幼稚園っぽいなといつも思ってしまう。
「…呼んだくせに普通の夜ご飯で悪いわね。ちゃんと食べれた?」
「全然普通だなんて、美味しすぎてむしろ食べすぎたくらいですよ…」
そう言いながら
「洗うから、皿持ってきて。」
「はーい」
母は席を立つと流し場へ向かう。それを見て姉が皿を持っていく。いつもなら母に名指しで「持ってこい」と言われるまで動かない姉が珍しく自ら進んで動いたことに、俺は驚きを感じた。
持っていくか。
姉に感化されたわけじゃないが、俺も母に言われる前に持って行こうと皿に手を伸ばした瞬間、一足、いやこの場合は手か、先に横から
「持っていってあげるよ。」
「あ、わりぃ。」
「あら〜
「あはは、そんなことないですって。…やめて下さいよぉくすぐったいですって〜。」
皿を受け取った母は、まるで我が子を褒めるように
「ふっ…」
まるで元から家族だったかのような光景に思わず笑みが漏れてしまった。
これが本当ならどれだけ良かっただろうか─
───────
────
──
片付けが終わった後再び席に着いた俺達は談笑を楽しんだ。思いのほか盛り上がった会話は流れる時間を忘れてしまうほどだった。
「─わ?!、もうこんな時間!そろそろ帰らせていただきます。」
俺も彼女の言葉に気づき、時計を確認する。時刻は20時30分、そろそろというか遅いくらいだ。
(ここから駅までの時間、電車に乗ってる時間、それとあっちの駅から
今から出れば何時くらいに
「もう少しいてもいいんじゃない?」
「流石に夜遅いしダメだよ母さん。」
俺は引き留めようとする母を間髪入れずに嗜める。母はより一段としょんぼりする。
「そうだよね…」
母はしょぼくれたまま、しかし珍しく引き下がった。いつも親戚の集まりとかならわがまま言うが、今回はそうはいかないと、分をわきまえているのだろう──
────
半ば追い出される形で外に出た俺。
「また来てね〜」
「はいそのうち。またご飯いただきますね」
玄関では手土産をぎっしり持たされた
雑貨店の時は厚かましい母に厄介そうに対応していた
「はよしないと電車すぎるよ。」
「そ、そうだね。本当にありがとうございました。」
俺が催促すると
────
──
─
2人は別れを惜しむように結局玄関先まで出て、駅へ向かう俺たちの背後から近所迷惑レベルの声量で「ばいばーい」とか「また来てねー」とか言い続けていた。
いつもは駅まで自転車で行く。夜ということもあるだろうがやけに道のりが長く感じる。いつのまにか2人の声も聞こえなくなっている。
街灯も少ない暗い夜道を2人で喋ることもなくただただ歩くだけ。孤独というわけではないが、暗闇に俺1人だけが包まれている安心感につい物思いにふけてしまう。
俺と
しかし見栄を張るように2人に嘘をついてしまった。
もし、今ここで
しかし
玉砕覚悟でもいい、告れる度胸があればどれほど良かっただろうか。
俺はいつもそうだ。何かを願うけどそれを叶えるために行動をしたことがない。そもそも行動したとして成し遂げられた試しがない。
「はぁ…」
大きくついたため息は、数メートル先すら見えなくする夜の暗闇に溶けて消えてしまった。
見上げると夜空には星が1つもない、雲に覆われてしまったのだろうか…
「──ねぇ」
「…ん?」
沈黙を切り裂く
「…あのさ、、、私達の関係さ、もう少し続けよう…?」
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最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでも先が気になるなと思ったら高評価よろしくお願いします。
母を前回やばいやつみたいに書いてしまったんですが、テンションが上がった時や唐突な提案がぶっ飛んでるだけで普段は常人です。
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