第16話 晩ご飯の話しⅠ

 「晩御飯、うちで食べましょう!!」

 「へ?」×3


 母の唐突かつ意味不明な提案に俺たち、姉までも、間抜けな声を出してしまう。


 「あ、いえ、流石に迷惑になりますし。」

 「私が言ってるんだもん大丈夫!」

 「で、でも流石に…家のことありますし…」

 「食費うくし、連絡入れれば大丈夫よ!」

 「あ、いゃ、で、でも…」

 「そんな心配することないじゃない。ひなちゃんみたいな可愛い子が来てくれたらご飯が何倍も美味しくなるし、さぁさぁ!」

 「…お、お願いします…」


 ひなさんの抵抗もむなしく母に押し切られてしまった。なんなら母の圧が強すぎてひなさんが半べそかいてるよ。

 

 母の提案から悪い予感はしていた。母は昔から決めたことは絶対突き通す芯の強い人間であり、そして頭のネジが何本か外れてる人間でもある。今回のひなさんのように過去に何度も母のわがままに付き合わされてきた、だから今回もこうなるだろうなと予想できた。


 いつもなら家族全員が折れ、母のわがままを叶えているのだが今回は流石にそうはいかない。


 (とはいえ俺じゃ母さん止めるの無理だしな…頼むよマイシスター。)


 助けを乞うように姉に視線を送る。姉がそれに気づく。


俺(母さん止めて)

姉(任セロリ)


 俺の意図が伝わったのだろう、姉はウインクのつもりだろうか両目を閉じて「了解」の合図をおくる。

ウインク苦手ならもっと別のやり方があっただろ…。


姉(安心して弟のガールフレンドよ、名前聞きそびれちゃったけど、私がママを止めて助けて差し上げよう。)


 ものすごい自信だ!!

 普段は飄々として何を考えてるか分からない姉だが、今日はその足取りから凄まじい自信を感じる。何に対しての自信かは分からないけど。

 (今日の姉さんならやってくれる気がする)


 姉はのしのしと力強い足取りで母に近づき、母の腕をがっちりと掴む。


 「ママ、流石に迷惑でしょ。この子も困ってるし。」

 (─どうだ弟よこれが姉の本気だよ。)


 俺にだけ分かるようにドヤ顔をしてくる。少しうざい。

 しかし効果は抜群だ。母も「そ、そうね、流石にね」と引き下がろうとしている。


姉 (ったく、ママもちょっと可愛い子に褒められただけでデレデレしちゃって。この美少女な私がいくら褒めてもバック買ってくれなかったくせに!…ほら、小娘よ感謝の言葉くらいは聞いてやるぞ。)


 「あ、ありがとうございます。お姉さんもとってもお優しいのですね。」


 「ねぇママ、こんな可愛い子が今日の晩御飯に来るんでしょ。最高じゃない!」

 「やっぱそうおもうわよね!!!」


 この裏切りもんがぁぁぁぁぁ!!!!

さっきまでの自信はどこいったんだよ!ひなさんに2人とも一発で堕とされやがって!


 カエルの子はカエルってやつか…

      ──閑話休題──


 ひなさんに(助けて〜)と目で懇願されたが、母1人でも止められないのに姉まで加わると勝ち目などなく、渋々気づかないフリをした─


───────

────


母 「いっただっきまーす」

姉 「旨し糧を…」

雛 「い、いただきますぅ…」

俺 「いただきます…」


 ノリノリで手を合わす母と姉。気まずそうに手を合わす俺とひなさん。

 ひなさんからは(なんでたすけてくんなかったのよ!)と目で訴えかけられる。


でも仕方ないじゃないか勝てないんだもん…


 母と姉は

 「やっぱ可愛い子がいると食事が断然美味しくなるわね。」とか

 「あとでさせて」とか

 「パパもこんな日に遅番なんて可哀想よね」などと悠長な会話をしている。その中でひなさんは「これ美味しいですね〜」など愛想よく褒めながら、なんやかんや美味しそうに食べていた。


 こんな晩御飯初めてだよ…

 俺は大きくため息を吐いて、やっと一口目を口に運んだ。

 

─────────────────────


最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでも良いと思ったら高評価よろしくお願いします。


姉は変わった人にしたいなって思ってたら想像以上なのができてしまった。

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