第14話 ラストデートの話Ⅲ
後方から伸びてきた腕。俺のじゃない。
咄嗟に後ろを振り返るとそこにはよく知る人物がいた。
「母さん!?」
「よっ!」
パーマを当てた古臭い髪型。ニカッと音が出るよな豪快な笑顔。見間違うはずがない、まごうことなき俺の母さんだ。
「私もおるよ。」
母の後ろから姉がひょっこり顔を出す。別に呼んでないのよ。
情報処理が追いつかない…
なぜ母がここにいるのか、なぜ急に話しかけてきたのか。色々な疑問が頭に浮かぶ。それと同時に今この状況、
とりあえずこの沈黙はあらぬ疑いをかけられそうだ。
「な、なんで、どうして2人はここに?」
「そんなん買い物に決まってるじゃない。」
「見りゃ分かるでしょ。」
(んー、デジャブ…)
俺があっさりと切られた話題をどう再開しようかと頭を悩ませていると、母は一度目線を外した。しかしすぐさま再び俺と目が合うと、にんまりとイタズラな満面の笑みを浮かべる。
「んで、そこの可愛いお嬢さんは誰なの?」
(あぁぁぁ!!!やばい、どうやって紹介しよう!!!)
冷や汗が止まらない。焦りで何を言えばいいか分からない。
どうにか誤解を招かないように、必死に言葉を探す。視界がぐるぐるしてるのが自分でもよくわかる。
(とりあえず無難な紹介をすればいいはず)
「…えと、あー、えっと、この人はクラスメイトの…」
俺のたどたどしい頼りない口調が不安になったのかそこまで言いかけた途端
「─
言い終えてから彼女は深々とお辞儀した。
(学校モードの
彼女のすばやい対応に、助かったと胸を撫で下ろすと同時に丁寧な口調の彼女が引っかかる。勿論初対面の相手に対しての対応としては丁寧な方が適しているし、普段の彼女はこの学校モードの方がデフォルトなのだが、先ほどまでの彼女を見た後だと違和感のようなものを感じてしまう。
「あら〜はじめまして。
そこまで言い終えて母は口を閉じた。とりあえず俺たちの関係は誤解されず済んだ。母の中では俺達の関係はただのクラスメイトとして認識してるだろう。
(とりあえず嵐はすぎたか…)
「で、君達はどう言う関係なの?」
(すぎてなかったぁぁぁ!!!!)
リアクションはとったものの当然されると分かっていた質問。俺は答えようと口を開け、すぐに何かを惜しむように閉じた。
友達。俺たちの関係を紹介する言葉にこれ以上はない。
ここで胸張って「彼女」と言えればどれだけ良かっただろう。
(
「─えと、友だ…」
「彼女です。」
俺の言葉を遮るように彼女は言う。天使のような微笑みでまるで宣告するように、きっぱりと言い切った。
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