第6話デートの話Ⅲ

 前回のあらすじ、0勝2敗で桜田雛さくらだひな惨敗中。


 ショッピングモールで時間を潰した大也ひろやひなはモール内にあるフードコートで昼食を取ろうとしていた。


 「席、空いてて良かったわね。」

 「この時間賑わってるから空いてないと思ってたよ。」


 2人はタイミング良く空いていた座席に座りながらお互いが注文した料理が出来上がるのを待っていた。


 料理が出来上がったことを知らせるブザーがなり、2人は各々の料理をバラバラのタイミングで受け取りに行き、先に料理が出来上がったひなは後に出来上がった大也ひろやを待つことなく食べ始め、お互いがバラバラに完食した。

 

 完食後の腹が落ち着くまでの待ち時間を2人はスマホをつつきながら、流れることなく停滞し続ける息苦しい空気を共有していた。

 

 したいことも無く、ホームとアプリを何度も何度も往復するひなは、再びあることを思いつく。


 (同じ店だからってことで私の分もまとめて会計してくれたけど、このまま払わずここを出たら好感度ダウンかも?)


 思い立ったが吉日と、早速実行に移そうとひなは席を立つ。


 「そろそろ行きましょ。」

 「あ、うん。そうだね。」

 

 (こいつがご飯代の話をしてきたら『割り勘なんてありえないから』って言ってやれば今度こそ私の勝ちよ!!いつでもかかってきなさい!!!)


 今度こそ大也ひろやから好感度ダウンを勝ち取れると息を巻くひな。だったが…

 

 「それじゃ、出ますか?」

 フードコートを出─


 「今日はもう行きたいとこない?」

 ショッピングモールを出─


 「今日はどうでした?」

 帰路についていた。


 (あ、あれぇ???)

 大也ひろやに一杯食わせようと身構えていたひなだったが流れに身を任せていた間に朝集合場所に選んでいた駅の近くまで来てしまった。


 今回の勝敗、勿論ひなの負け。


(もう!どうしたらいいわけ!!全く上手くいかないじゃない!…こうなったらやるしかないわね。)


 失敗に続く失敗に憤りを感じるひなは『とっておき』を実行しようと歩みを止める。つられて隣を並んで歩いていた大也ひろやも止まり、「どうしたの?」と、下を向いたまま動かないひなの顔を覗き込む。


 ─ガバッ!

 勢いよくひなは顔を上げる。


 「キミ、今日のデート楽しかったって聞いたわよね。私は全く楽しくなかったわ。大体何よその服にその髪型。私みたいな美少女の隣で歩くならもっとオシャレな格好をしてきなさいよ!どれだけ時間かけてるか知らないけど、今回のデートの内容もあなた自身もはっきり言って以下よ!!」


 人差し指を大也ひろやの胸に突き立て、濁流のように激しい剣幕で差し迫る。

 急展開に状況を理解できない大也ひろやは、パクパクと口を動かすことしかできず、困惑の表情を浮かべる。


 (言ってやったわ。本当は全くそんなこと思ってないけど、流石にここまで言えばこいつも私を嫌いになるはず。罪悪感は凄いけれどこれでいいの…別れた後の辛さに比べたら私程度の女に言われるなんてなんともないはず…)


 しばらくの沈黙に比例するように罪悪感がひなの胸を締め付ける。それでも彼女は睨むような目つきを変えることなく


 「わかったかしら。それじゃあわたし帰るから。」


 プイッと顔を背ける淡々とした足取りで駅へ向かった。


 いいの…これもこいつのためだから…


 本当なこんなつもりじゃなかった。もっと自然な流れで気付かぬうちに好感度を落とし、大也ひろや自身に自発的に自分の事を嫌いになってもらうつもりだった。

 

 (上手くいかないなぁ…本当はもっとちゃんとできるはずだったのに。ほんとにダメね私…)


 後ろにいるあいつは今どんな顔してるだろうか…


 罪悪感が心臓を今にも粉々に潰してしまいそうな程強く握る。

 それでも歩幅は変えず、淡々とあくまで冷徹に。それだけを努めた。


 ──パシっ


 瞬間誰かがひなの右腕を掴む。


───────────────────


少しでも興味があればハートや星、コメントなどしてくれたら私のモチベに繋がるので気軽にお願いします。


とある方がこんな感じで後語り的なのをやっていたので、パク、リスペクトさせてもらいました。

毎回書くわけではなく、不定期に載せようかなと思います(あと字数稼ぎも)

ですので、あったら(あーまた変なの書いてるよ)感覚で読んでもらえればと思います。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る