第5話 能力測定
茜さんに連れられて、俺達は巨大で
しかし、今が丁度春休みだからか、そこまで生徒とは出会わなかった。
華恋は先程から廊下の隅々に視線を巡らせては、口を半開きにしている。
間抜けな顔しても可愛いくて絵になるのは他とは一線を期す美少女の特権だよな。
因みに男は幾らイケメンでも間抜け顔は間抜け顔のまま、アホそうに見えるだけだ。
それがいいと言う奴らも一定数居るのだろうが。
「おにぃ……凄い学校だね……全部高そう」
「俺はもう考えないことにした。華恋も考えない方がいいぞ。目眩がして来るから」
「その方が宜しいかと。私自身、この学園の建築費を聞いて気絶しそうでしたから」
見た感じお嬢様な茜さんでさえそれなら、俺達貧乏兄妹は呼吸止まるかもな。
ただそうなると逆に聞いてみたくなるけど。
そんなことを考えながら、茜さんについて行くこと数分。
俺達は明らかに他の部屋とは違う、鋼鉄の扉と壁で出来た異質な部屋の前に辿り着いた。
「茜さん……もしかして此処が……」
「そうです。此処が能力測定室ですよ。能力測定中は無防備になりますので、侵入を防ぐ意味もあってこのような素材を使っています。ではどうぞ」
茜さんが扉を開け、俺達はそそくさと部屋に入る。
部屋の中は学園の教室ではなく、完全に研究室の様な見た目で、沢山のパネルがあるパソコンや、MRIの様な機械が置いてあった。
無防備になる、ね……思ったよりも超ハイテクな機械があって驚きだよ。
それにその能力測定はどれ程まで分かるかが重要だな。
俺が注意深く観察していると、パソコンの前に腰を下ろした茜さんが言う。
「それでは早速ですが、このMRI型の測定器にどちらか寝転んで下さい。これでお2人の身体的能力や魔力、スキルを調べます。平均総合評価値は『B』です」
よし、此処は兄ちゃんである俺が先に行って、危険じゃないか確かめよう。
「じゃあ俺が先に———」
「———私が先にします! おにぃにもしものことがない様に私が実験台になるのです!」
……華恋さん?
何でそんなに険しい顔で俺を押さえつけて先に行かせない様にしているのかな?
元の身体能力が華恋の方が上だから全く動かないんだけど。
「だ、駄目だ華恋! 此処は兄ちゃんに任せて———」
「おにぃに何かあれば私は自分を許せません! なのでおにぃよりも頑丈な私が行きます!」
……全部事実だから何も言えねぇ……妹より雑魚い兄ちゃんとかダサすぎるだろ。
でも、どちらにせよ華恋の意思は固そうだし、先は譲る事にするか……。
「じゃあ気を付けろよ、華恋」
「任せておにぃ! 必ず無事で帰ってくるから!」
「えっと……ただ測定器で能力を測るだけなのですが……そんな戦場に向かう様な心構えでなくとも……」
何か外野がぶつぶつ言っているが、取り敢えず
俺と茜さんが見守る中、華恋がMRIの寝る所に寝転ぶと、少し変な音を立てながら、ゆっくり円の中に入っていく。
そしてそのまま止まる事なく全身が円を通り過ぎると、MRIはその動きを止めた。
「はい、これで終了です。只今測定結果を確認しますので、少々お待ち下さい」
茜さんはそう言うと、何やらパソコンをカタカタし始める。
「おにぃ、安全だったよ」
「ああ、見てても特に変なことはなかった」
「おにぃ……茜さんがキャリアウーマンみたいでカッコいいなって思ってるでしょ」
「ああ、良く分かったな———って痛い痛い! 何すんだよ華恋っ!」
「ふんっ! 私の前で他の女に見惚れるおにぃが悪いっ!」
「え、ええ……」
そんなこと言ったら俺、一生彼女出来ないじゃん。
俺的には学園でそう言った甘酸っぱい体験もしてみたいし、結婚もしたいんだけど。
「———測定結果が出ました。結果は後でお話ししますので、先に朔夜様の測定をしたいのですが……」
「あ、はい、分かりました」
俺は素早く寝転がり、華恋同様検査を受ける。
そして少し時間が経ち、俺の測定結果も出たらしく、パソコンの前に呼ばれた。
「お2人の測定結果が出ました。結果が結果ですので、この場でのお話は、学園長にのみ話すことと致します。お2人も公言しません様、よろしくお願い致します」
「「あ、はい」」
結構真剣な顔で言われたので、何やら普通と違ったらしい。
俺達はごくっと唾を飲み込んでから測定結果を確認する。
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朝霧華恋
【SS+スキル】《天眼》《天弓》
【B−スキル】《短剣術・上》
【評価値】
【体力】S
【筋力】S
【耐久】S−
【敏捷】S
【魔力】S+
【魔攻】S
【知力】S−
【魅力】SS+
【総合評価値】 S
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朝霧朔夜
【???スキル】《大$€#¥》《〒$#王》
【体力】A+
【筋力】S
【耐久】A+
【敏捷】A+
【魔力】S
【魔攻】A+
【知力】S−
【魅力】S+
【総合評価値】A+
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「「……?」」
「何故お2人とも首を傾げているのですか!? 先程平均総合評価値は『B』と伝えましたよね!? お2人揃って『あ、そうなんだ。今知った』みたいな顔するのはやめてください!!」
茜さんが俺達にお笑い芸人の如く、キレのあるツッコミを繰り出してくる。
どうやら茜さんは人を笑わせられるお嬢様の様だ。
それにしても……総合評価値の平均が『B』ね…………あれ?
「……俺めっちゃ高いじゃん」
「私なんて『S』だよおにぃ! 凄くない?」
「めっちゃ凄い! 流石兄ちゃんの妹だな」
「えへへ……」
俺がわしゃわしゃと頭を撫でると、髪がボサボサになるのも気にせず恍惚な笑みを浮かべる華恋。
そんな俺達を見ながら、
「……一先ず学園長に話すとして……これは絶対に他国に取られるわけにはいかない人材ですね……」
茜さんは何やらぶつぶつと呟いていた。
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