第3話 異界学園について
「———それでは学園の説明の続きに移りますが……よろしいですか?」
「はい、すいません」
俺が早く話せと言ったくせに自ら話を脱線させてしまったことに申し訳なくなる。
しかし女性は特に気にした様子もなく、何なら、大丈夫ですよ。と気遣って貰う始末。
前世を持つ転生者が遥かに年下の女性に気遣って貰うなど羞恥の極み。
今後は自分の行動に気を付けなければ。
俺がそう心に誓っていると、女性———名前は
「それでは学園の出来た経緯についてお話しさせて頂きます。———キッカケは50年前の東京に、とある1人の男性が現れたことです。その男性は、自分が100年前の東京から異世界に転移させられ、数年間異世界で過ごしたのち、この世界に戻って来たらいつの間にか知らない光景に変わっていたと言ったのです」
「それが最初の帰還者と言うわけですね」
「はい。しかし更に数年後、もう1人の帰還者が現れ、それと同時に海上に異界へ繋がるワープホールが繋がりました。彼はそのワープホールが自身が救った世界よりも遥かに強力な敵がいる事に気がつき、それを抑えるのと、帰還者を保護、犯罪に走らない為の学園を創立し、異世界で手に入れた力を使ってワープホールの近くに人口の島を創りました」
まるで漫画の様な話だ。
しかし、俺達の様なフィクションの様な力を持つ人間もいるわけで。
現実は小説より奇なりと言う言葉もあるほどだがら、恐らく全て真実なのだろう。
何より彼女は嘘をついていない。
「この世界には……一体何人の帰還者が居るのですか?」
俺が1番知りたいのはそこだ。
もう俺達以外に力を持っている奴が居るのは分かったので、次はその総量が知りたい。
「日本には……現在約200人程います。そして新入生が50人程、年は15〜19歳の間の帰還者が入学します。つまり———お2人は最年少と言うわけですね」
「色んな年齢の人が入って来るんですね」
「帰還する時期や歳が違いますからね。お2人は一体いつ転移されたのですか?」
…………なんて答えれば良いのだろうか。
本当は行ってないから全く分からないんですけど。
因みに華恋は、現在あまりの座席の気持ちよさに眠たくなったのか、可愛らしい寝顔を晒して夢の世界に旅立っている。
まぁ俺と違って精神年齢はちゃんと15歳なので、寝てしまうのも無理はない。
逆に寝ていてくれた方が安心なまである。
「……つい先日帰って来たばかりなんですよ。異世界で1年間過ごしたかと思えば、気付けば転移される前の1分後に帰って来てましたね」
俺はパッと思い付いた出鱈目な言葉を連ねて何とかそれらしく話す。
しかし意外と信じてくれたらしく、特に怪しまれることはなかった。
あ、危なかった……マジで焦ったぜ……。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
華恋が寝ていたのが功を喫した様だ。
「そ、それで……ワープホールとは何なんですか? それに帰還者は世界にも居るのですか?」
「はい。帰還者は世界中に居り、日本以外にも異界学園も幾つか設立されています。そしてワープホールですが———アレはこの世界を侵略する者達が作り出した転移門の様なモノだと我々は定義付けています」
ふむ……他の世界を侵略か。
そんなことをすればアイツらが黙っていないと思うが……。
「ワープホールは日本で2人目の帰還者が現れた時に出来たんですよね? 他の国にあるワープホールも同じ様な感じなのですか?」
「そうですね。出て来る種の違いこそあれ、一概に違う所は今の所見受けられていませんよ」
「そうですか……」
どうやらこの世界は、俺が思った以上に危険ない世界だった様だ。
華恋を守る為にもっと情報が欲しい。
俺は眠る華恋の頭を撫でる。
華恋は寝ているにも関わらず、気持ちよさそうにしていた。
「それで……俺達が通う学園は何処にあるのですか?」
俺は、中々目的地に辿り着かないので茜さんに質問する。
すると、茜さんは少し口角を上げ———いつの間にか閉められていたカーテンを開けた。
「最初の帰還者が創立した学園———異界学園は此処です」
彼女がそう言うと同時に、俺達の目の前に巨大な高層ビルやデパート、人が住む一軒家が軒を連ね、それと調和する様に森や果樹園、街路樹などが生息している緑が豊かな島が現れた。
更には魔力を持った生物が空を飛び、ペットの様に魔獣を連れて居る人の姿や、魔法で接客をして居る人の姿など様々だ。
そしてこの島の中心には———剣と杖がクロスし、その後ろに盾が描かれた巨大な校章旗が掲げられていた。
「うわぁぁ……凄いよおにぃ! こんなに大きな島初めて見たっ!」
「ああ……凄いな……」
華恋がいつの間にか目を覚まして『きゃっきゃっ』と楽しそうに興奮していた。
まぁ俺が言った凄いは、俺達の様に力を持つ人間が大勢いる事についてだが。
「この島こそ、最初の帰還者が創立した異界学園があり、日本を陰ながら護る者達の棲家———防衛島です」
その言葉を聞いた瞬間———確かにこの島にはお似合いな名前だな。と思った。
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