プロローグ

 ここはある街の家電屋、その店の前で私、切口双木きりぐち そうきは今朝のニュースを見ている。

「強盗、放火、殺人。世の中物騒になったもんだな。」

 何気ない日常のワンシーン。今日もまた、なんでもない、何にもならない日が始まる。そう思いながら、私の足は学校へ向かうのだった。


 学校に着き、一限目、二限目、三限目と順調に授業を消化していく。学生である私にとって、この時間は退屈でしかなかった。

「そ~う~、四限目って何だっけ~?」

「......日本史。」

「......え゛?」

 ”そう”というのは私のあだ名だ。このクラスにおいて、そのあだ名を使う人は彼しかいない。

「正、お前また忘れたのか......。」

 勝谷正一かつや しょういち、私の幼馴染でクラスメイトだ。

「そう、すまないが......教科書見せてくれないか?」

「いらねーだろ、あの妄言癖のジジイの授業だぞ。」

 横から口を挟んだのは、中高同じ学校に通ってきた友達、夕裂空ゆうさき くうだ。

「......確かにな~。」

 考え込んでいた正を横に、私が答えた。

「あのじいさん授業中にする話、終末論とか異世界とか、訳の分からないもんばっかりだもんな。」

「この前なんて授業中に、

" 天使の襲来じゃ~~~!!! 地球の滅亡じゃ~~~!!! "

なんて叫んでたもんな。」

 そんなことを話していると、チャイムと同時に勢いよく教室の扉が開いた。

「みんなー、席につけー。授業を始めるぞー!!」

 開いた扉の向こう側にいたのは、この学校で日本史の授業をやっているじいさん先生だ。

 みんな、じいさんが入ってきたのを見ると自分の席に戻っていった。


 授業の前半は、何事もなくスムーズに終わった。しかし後半、時間がたつにつれ、周囲に違和感があった。

 辺りを見回すとほとんどのものが眠っているようだった。

 それも、ただ眠っているだけではなかった。時間がたつにつれ、一人また一人と眠っていく。

 あのじいさんは、ほとんどのものが眠っている事を、気づいているのにもかかわらず授業を続けていた。

 この状況はさすがにおかしいだろ。いや、おかしくないのか?

 ......どうやら自分も相当眠気が来ているらしい。

 自分とじいさん、二人以外がすべて眠ってしまった教室。あまりにも不気味で仕方ない。

 ......そんな時だった。

 ガタッ、という音を立て一人の生徒が起き上がった。

「なんなんだ...いった...い......。」

 眠気はどんどん増していくばかりで、意識を保つことができなくなり、私は瞼を落としてしまった。

 最後の瞬間、あのじいさんの顔が、笑ってるようにも見えた。

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夢々話 カノン @sorairo_canon

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