1回目…?

学校でクラス発表の紙を見て、久遠はがっかりしていた。雪那と違うクラスだったからだ。

「おはよ、久遠」

「おはよう。残念ながら…」

「違うクラス⁉︎最悪ー!」

「テンション高いね。徹夜明け?」

「せーかい。マジかー、あり得ないんですけど。ずっと気を張ってなきゃいけないの?」

「そりゃこっちのセリフだよ」

これはもうこの1年は諦めてぼっち街道を突き進むしかないか。


とりあえずそれぞれのクラスに入って自分の席を確認してから屋上に集合する。

「最近、お葬式多いよな」

「そうだね。確かによく見る」

どうしてなんだろう。疑問が解決することはないけど、考えてしまう。

「クラス、戻ろうか」

「そうだね、そろそろ時間になるし」


教室に入った途端に久遠は固まった。クラスメイトの1人に死神が憑いていたからだ。死神は久遠に気付き、その背後に加わる。何とか無表情を保って席についた。


始業式が終わって自己紹介タイム。

「えと、日比谷十和です。よろしくお願いします」

「早坂久遠です。こちらこそよろしく」

以上。会話が終了してしまった。が、何を話せばいいかも分からないし、あまり自分と関わらない方がいいだろうと思い、久遠は前後の席の人たちとも自分の名前を言うだけに留めた。


新クラスになって1週間が経った頃、クラスメイトの1人が亡くなった。あまりに突然のことだった。

「何で…?」

屋上で久遠はぼそりと呟く。あの時、確かに死神は自分に引き寄せられていたはずなのに。

「久遠」

いつの間にか後ろに立っていた雪那が名前を呼ぶ。

「あなたのせいじゃないわ」

「でも」

「あなたのせいじゃない」

久遠は目を逸らした。自分のせいじゃないなんて、そうは思えない。

「もー、そんな泣きそうな顔しないの」

「……」

「あのねぇ久遠。久遠って顔は割と良いのよ?」

「何だよ割とって。というか顔はって」

「だって本当だもん。笑ってた方が得するよ」

「何それ」

思わず笑ってしまう。

「そう、だよな。僕のせいじゃないよな」

僕は神様ではない。特別な力がある訳でもない。だから、助けることなんてできないんだ。そう思って無理に自分を納得させる。

「そうよ。だって覆せない運命なんだから」

「え?」

どういう意味だろう?

「何でもない」

雪那ははぐらかすように笑った。


テストや体育祭が終わって、6月も後半に差し掛かった。クラス内でもグループができているが、当然久遠はクラスで浮いていた。完全に変人を見る目で見られているが、まぁそうなるだろうとは予想していたのでさして気にしてないけど。

「ねぇ久遠。また死神さん増えてない?」

いつも通り屋上で雪那に会った途端にそう言われた。

「うん、増えてるよ。この前、公園で会った子に憑いてたからさ。あとは捨て猫とか」

「なるほど」

「というか、雪那はクラスの人と行動しないの?」

「うーん、久遠といる方が楽だし…」

「まぁいいならいいんだけどさ」

どうせ1人だし。

「またお葬式してるね」

屋上から街を見下ろして雪那は呟く。

「本当だ」

久遠は悲しそうに、赤の他人の葬式を眺める。


ねぇ久遠。本当は意味ないんだよ。あなたが死神さんを代わりに背負う意味なんて。雪那は思う。


真実を知れば、きっと久遠は耐えられない。お人よしだもん。だから言えない。止められない。私にはできないよ。でもこれだけは言いたい。久遠のせいではないって。だから、そんな泣きそうな顔しないで。


雪那は声には出さずに久遠を見た。

「ん?何?」

「ううん、何でもないよ」

約束の日までもう少し。それまでに、久遠は気付くだろうか。受け入れられるだろうか。…また、繰り返すのだろうか?それでもいい。何度でも付き合おう。



これは、運命なんだから。

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