第二夜 「2世の憂うつ」

 2世に生まれた不幸や悲しみを、きっとそうでない皆は知らないのだ。浩一はしんとした部屋の中、椅子に坐り膝をつかんだ。

 今日は浩一の誕生日だ。きっと同年代の男子女子は、家族から祝われたり、お友達を呼んで誕生パーティーなどをしたり過ごしているのだろう。そういう当たり前の喜びというものは、得られるものからすればごくささいなエピソードにすぎず、得られないものからすれば血の涙を流しても欲しいほどの嫉妬に駆られるものなのだ。

 小鳥のさえずりが聞こえて、浩一はハッとする。まるで慰めてくれているように聞こえるその囀りにふふっと微笑む。こんな浩一にも友達はいなくはない。この小鳥がまず一匹——

 ニャア、と声がして、隣の部屋からやってきた黒猫も、また浩一の友達である。いや、友達というか家族というべきか。

 膝の上に飛び乗ってきた黒猫の喉をくすぐるとゴロゴロという喉鳴りが手に伝わってきた。

 2世であることによって、同世代の友達はいない。怖がられているからか、いや違う。単に接点がないだけだ。

 いま接点がある人物など、おじさんぐらいしかいないのだ。だから浩一はいつもおじさんがやってくるのを心待ちにしている。今日は特にぼくの誕生日だ、おじさんはきっと来てくれるに違いない——


 三つの友達のうち最後の一人、お庭番ロボットのポセイドンからテレパシーが伝わってくる。おじさんが、来てくれたらしい。

『今日こそはおまえを倒してみせるぞ、2世!』

 照れ屋のおじさんは、いつもそんなことばかりいってるが、浩一には本心はきちんと伝わっている。なにせ浩一はテレパシーの名手なのだから。

 ありがとうヨミおじさん、と心の中で思いながら、今日も浩一は2世として砂嵐の中、おじさんを出迎えに行くのであった。

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