第41話 立て直し
「うっ……どれほど……意識を失っていた?」
焼け焦げた匂いが立ち込める中、俺は目を覚ました。辺りに人の気配は無い。この隙に乗じて俺を脱落させようとする者はいなかったようだ。
「これは……酷いな」
自分の状態を見返すと、それは酷いものだった。
特にリュエルの【瞬撃】なる技。あの傷が思いの外深い。致命傷は外したつもりだったが、血を失いすぎてクラクラしている。
「【治癒】……今の魔力では失った血を回復するまでには至らないか……」
傷は治した。
だが、失った血はそのままだ。時が経てば魔力も戻りマシにはなるだろうが、その間に敵の襲撃を受けてしまえば目も当てられない。
一先ずはアノイとヴィヴィーとの合流が先決だろう。
二人に探知魔法の心得は無い。自ずと、俺が二人を探すしかない状況だが、魔力が心許ない今あまり動きたくない。
「仕方ない。一旦待機だ……」
俺は再び木に凭れ、魔力を回復すべく集中した。
☆☆☆
一方、アノイとヴィヴィーはリュエルのチームメンバーを脱落させた後、他のチームから幾度となく襲われていた。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!!! なんか一人ヤバイ奴いない!?!?」
「十中八九早期入学生だろうな。んだよ規格外しかいねぇのかよキショいな。ま、ゼノンよりマシなだけ何とかなるか」
「なんでそんなに落ち着いてるの!?」
「てめぇが焦り過ぎてるからだよ! 目の前に鼻水と涙流しながら慌ててるバカがいりゃ、多少は落ち着くわ!」
乱戦となっている現在だが、一人大規模魔法を永遠に放つ敵の存在によって苦しめられていた。
木の上にいる背丈ほどの杖を持ったローブを纏う男。最早、杖いらないだろ、というゴツい筋肉姿である。
身長は195cm。魔力総量で言えばゼノンより多いその男の名は、メナス・レイアー(13歳)である。
「どうするのこの状況! 詰んでない? 詰んでるよね」
「よく見ろバカ。乱戦になってる影響で、あいつは俺ら個人を狙うんじゃなく、全体に魔法を放ってんだ。お陰で狙いも甘いし、付け入る隙は幾らでもある」
アノイは戦場を俯瞰し、冷静な瞳でメナスを見据えた。ギラギラとした瞳からは、ハングリー精神を感じる。元々負けず嫌いで勝ち気な性格のアノイだ。諦めるつもりは毛頭ないだろう。
「まあ、確かにあんまり当たってないよね。近づいたらヤバそうだけど」
「魔力に任せて繊細さの欠片もねぇ。魔法の使い方は三流も良いとこだぜ? チームメイトも支援魔法を掛けちゃいるが、ろくに戦闘に参加してねぇときた」
「で、どうするの?」
アノイは思案する。
この状況を打破できる手立てを探るべく。
アノイは優秀である。だが、優秀のみに留まっていた。それは魔法の使い方であったり、魔法に対する固定概念。長らく幼少の頃より教わっていた魔法の基本知識が、アノイの成長を阻害していた。
しかし、固定概念はゼノンにより根本から吹っ飛ばされた。ここでまだ固定概念に囚われているようであれば、アノイの魔法使いとしての人生は終わりを告げていただろう。
だが、アノイは考えることをやめなかった。
ゼノンに敗北した日から、何度も何度も魔法について考えてきた。ゼノンを見ると、魔法に不可能がないと思う程だった。
前述の通り、アノイは負けず嫌いである。
負けを負けのままにしておく男ではない。
「俺は決闘でゼノンにボコボコにされてる。知ってるか?」
「え、うん。噂で流れてきたよ」
「今は一応仲間っつー立ち位置だが、俺はいつかアイツに勝つ気でいんだ。そんな俺が成長していないわけがねぇだろ?」
「……なんか策があるんだね」
「あぁ……切り札を使う」
アノイは獰猛な顔でニヤリと笑った。
そんなアノイの様子をヴィヴィーは、頼もしそうな瞳で見ながら若干その熱量に引いていた。
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キリがいいので短め。
更新お待たせいたしました。
アノイは懐が広いベジ◯タのようなポジです。
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