題肆段
「あっちぃ〜」
異常気象により虫の声すら聞こえない。これは生物が生存できる環境なのか???汗でベタベタになり重くなったYシャツをパタパタとはたく。全くもって気休めにもならないけど。
ここ数ヶ月で一帯の区画整理が進んだみたいで、コンクリートの壁で熱が乱反射している。
ちょっとは木とか植えてくれないかな。
「もし、そこの方。何か飲み物はないでしょうか?」
見上げるとこの暑い中分厚い茶色のコートを着て髭を蓄えた、60代くらいのお爺さんが立っていた。姿勢が良くて俳優さんみたいだ。靴が土で汚れている。
「それがーこの駅自販機ないんですよ。次の駅で降りて買わないと」
「そうですか……」
しょんぼりとしてホームに戻っていった。
微かなアンモニア臭がした。老人が立っていた場所には水溜りができている。
「そうか───やっと暑さの峠は越したかな」
遠くで蝉の求愛の声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます