醍醐談
私は怪異である。名前はまだ無い。
というのも、私は今怪異の見習いをやっているんですよ。なのでなんにでもなれる全怪異を重ね合わせた状態なんですよね。
あっ、バス停に汗でべたべたになっている男性が!
いい機会ですね。あの人を怖がらせられるような、とびっきりな奴になりましょうか。
「こんにちは!」
「……こんにちは。今日も暑いですね」
ふふふ。すぐびっくりしそうな弱々しい一般青年ですね。これなら私でもいけそう!学校では落ちこぼれでしたがきっとやればできるんです。同級生をぎゃふんといわせてやるんだから。
「唐突なんですけど、怪異とか怪談とかってどう思いますか?」
「……うーん怪談ですか………そういえば、子供のころ八尺様に会ったことありますよ。実家の長野の方で」
「えっ!?会ったんですか?」
「ええ。気さくで良い方でした。トマトを一緒に丸かじりしたり虫取りに行ったり…………あれ、さっきより体が小さくないですか」
「いや、そんなことはナイデスケド」
くそ、失敗しました……ハチ先輩に会ったことがあるなんて。あれ?先輩手懐けられてません?
とにかく八尺様は使えません。じゃあこれなら
「口裂け女はこの前一緒にカラオケ行ったんですけど、とっても歌がうまいんですよね。ほれぼれしちゃいました」
すごすごと外そうとしていたマスクを戻す。
なんなのまぢで……先輩方の威厳もくそもないじゃん。横からウタダなんちゃらとか聞こえるけど脳が処理できてない。サケ先輩のカラオケのセトリなんて聞きたくなかったよ。
偉大な先輩でもうまくできてないのに私にできるんでしょうか。将来が不安になってきました。
男性がうつむいている私を下からのぞき込んできた。
「そんな先人達の真似事なんてしなくても。貴方ならではの良い怪異がきっと見つかりますよ。応援してます」
「わっ!ありがとうございます」
急に距離が近くて心底びっくりしてしまった。
彼はにこりと笑って仰いでいた扇子を鞄にしまう。財布を取り出してバスに乗り込んでいった。
空は青く澄んで、雲が障害物のない場所で優雅に流れていく。
夕焼けの時間が止まったような赤い空が一番すきだけど、この色も好きだな。
……そっかぁ。たしかに名前が知られている、型にはまったもので
ん?
「あれ?バレて……えーーーー!!??!!」
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