第46話 ツンデレメイド

「ご主人様! 昼間の件、しっかりと納得がいく説明をお願い致します!」


 僕、播磨連一はりまれんいちが家へと帰ると、メイド服を着た怒り心頭の美少女がそう言って来た。


 釣り上がったかのような瞳も、怒って膨らませた頬も、強く握りしめた触ったら折れそうな手で作った拳も、その全てが彼女の怒りを表していると同時に、彼女の可愛さも同じように滲みだしていた。

 僕は彼女、星宮鳴ほしみやなるに「ごめん」と謝る。


「弁当。忘れて届けてくれてありがとう。美味しかった」

「そ、そう? まぁ、と、当然よね。私が作った弁当が美味しくないはずがないに違いない事は分かりきって……じゃなくて、その弁当を届ける際に、ご主人様が取った行動です!」

「行動……?」


 確か、2時間目の国語の眠たくなるような呪文と言う名の授業を行う冨士川ふじかわ先生との戦いに勝った事を心の中で喜んでいる時に携帯にメールが来た。

 差出人は鳴からで、『校門前に忘れた弁当を持って来ているので受け取りに来てください』との事だった。

 職員室に届けて置いてと連絡したものの数秒後に電話がかかって来た。


『い、今、メイド服を着ているので、ぜ、絶対に目立つじゃないの! ば、バカじゃないの!』


「その電話を受けたご主人様は……あ、あろう事か、御友人達を呼んで皆で写真を撮り始めたじゃないですか!」

「写真じゃない、動画だ」

「なお悪いじゃないですか!」


 いや。だってさ。


 アニメ声のメイドが、弁当を持って校門の前で、

『と、撮らないでください! 怪しい者じゃないんですよ! ただの普通の人間ですから!』

 と真っ赤な顔で野次馬を追い返している姿とかを見て、


「撮らない訳がないだろうが!」

「堂々と言わないでください!」


 「だいたいですね!」と僕を指差す鳴。


「ご主人様は色々と杜撰なんですよ! 学校の弁当だって夜早く寝て、朝早く起きれば済む話でしょうが! どうして夜遅くまで起きているんですか!」

「宿題と復習で忙しくて、さ」

「徹夜で勉強……! な、なんて素晴らしい////// さ、流石、連一様//////

 ――――じゃなくて! なんで帰ってきてすぐやらないんですか!」


 それを言われるとつらいな。


 だいたい、華の高校生が学校から帰ってきて即勉強とかありえなくないですか。

 ……あり得なくない。そうか。


「それに朝だってもっと早く食べれば、もっと時間が作れるじゃないですか!」

「いや、朝から鳴さんの美味しい料理を食べたいからゆっくり食べているんだよ」

「そ、そんな……////// 美味しいだなんて////// そんな褒められたとしても、ぜ、全然嬉しくなんかないんですからね//////」


 そう言いながらも、物凄い勢いでハートマーク入りのマフラーを作っている鳴を見る。

 本当に嬉しそうである。


 ……いや、いつも思うけれども本当に鳴さんはツンデレと言うよりかは


(チョロインだよなぁー)


「ちょ、ちょっと////// い、いきなり黙り込まないでくださいよ////// わ、私の声、ちゃんと聴いてますよね! 私の事、無視しないでくださいよ!

 ……ねぇ、連一様! 連一様ったら!」

「……? あ、あぁ。ちゃんと聞いてるよ」

「良か……じゃない! ちゃんと話を聞いてくださいよね、連一様!」


 今日も僕は鳴さんの可愛い姿を見れて、僕は満足である。

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