第45話 獣人メイド

 この世はなんて真っ暗なのでしょう。

 生きる事すら満足に出来ないほどこの世界は真っ暗です。


 食べる物にすらろくにあり付けず、自由すらほとんどない。

 まさしく生き地獄。


 もしこの世に神という存在がいらっしゃるのならば、どうしてこの世界に人間という俗物的なものを作ったのかを聞いてみたい。


 人間は貪欲に支配を求め、自分の身の丈に合わない物を欲しがり、あろう事か同じ知的生命体を従者として悦を持っている悲しい種族だ。


 もしこの世に神という存在がいらっしゃるのならば、どうしてこの世に獣人という知能に乏しいものを作ったのかを聞いてみたい。


 私達獣人は人間よりも遥かに高い運動神経を持っているが、考える知能という物が圧倒的に人間に劣ってしまい、結果として私達獣人を低知能生命体として飼われている身だ。


 私のご主人様もそう言った人間という種族で、私は獣人という哀れな種族。


 ご主人様は本当に酷いお方だ。

 ----いや、変な人と言うべきか。


 いきなり抱きついて来たのでじたばたしながら傷付けないように追い払おうとしているのに「可愛い」とか言ってくる変な人。

 腕を噛んだら、何故か喜ばれた。


 ある日、お買い物に行こうとしたら、ご主人様が頭の上に猫耳を乗せていたらしく、獣人で自前の獣耳があるのに獣耳を付けている変な人として笑われた。

 後で聞いたら「忘れてた」とか言ってきたので、赤い顔で睨みを聞かせてたのに、頭を撫でられた。

 本当に変な人だ。


 ご主人様のお友達が忘れていった眼鏡をどんな感じなのだろうと興味を持ってかけてみて、ちょっと視界がぼやけてどうしようかと思っていると、ニヤニヤ顔のご主人様が表れて「素顔の方が可愛いよ」とか言われて、恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして俯いてしまった。


 ご主人様が他のメイドさんの服を持ってきていきなり、「着ろ!」と強い口調で言われたので、命令なので着てみたら元の持ち主のメイドさんの方が身長が高かったのでぶかぶかだったので袖を余らせていると、何故かご主人様が鼻血を噴いて倒られた。

 いきなりどうしたのだろう。


 ……あっ、胸の辺りはなんかきつかった。

 ちょっと小さいかな。


 掃除をしていて気分が乗っていたので鼻歌を歌いながら掃除をしていると、何故かビデオカメラを持ったご主人様が突如現れて「RECする! 絶対、RECする!」とか訳の分からない事を言いながら鼻歌を歌うように強要して来たが、ご主人様が来てびっくりしてしまって鼻歌どころではなかった。


 本当にご主人様は獣人の私に対して、どう考えているか謎である。


 所々、ご主人様が変な、ちょっといやらしいような眼つきで見ているのだが、低知能生命体の獣人である私は高知能生命体である人間には逆らえない。

 逆らってはいけないと、幼い頃から習ってきたからである。


(……本当に面倒です)


 やめてくださいと強く言えれば楽なんだけれども、それが言えないのだから仕方がない。

 この状況が相手の方から変わる事を祈りつつ、私は仕事を進めていた。





『うちの獣人メイドがロリ巨乳の天使すぎて、生きるのがつらい』


 これはとあるうちの人間のご主人様が、獣人メイド(ロリ巨乳の天使の猫の獣人ちゃん)をこっそり見守りながら、悶えるというお話。


『○月×日

 今日もメイドちゃん、可愛い。あまりの可愛さに今日は獣人メイドちゃんにいきなり抱きついてみた。

 最初は驚いていたけれども、すぐに逃げようとじたばたしている様があまりにも可愛い! 可愛いというと、メイドちゃんが腕を噛みついてきた。痛いと思ったけど甘く噛んでいるらしく、その仕草がとっても萌えた』


『△月□日

 今日は、朝からメイドちゃんの頭の上に獣耳を付けてみた。うちのメイドちゃんは黒猫だから黒い猫耳も可愛いけれども、やっぱり白も捨てがたいなーとか考えていると、いつの間にかお買い物に行ってしまい、すっごくかわかわれてしまったらしい。

 あざ笑った連中にどう言った制裁を加えようかと考えていたけど、恥ずかしそうな顔で付け耳を持ってこちらを見てくるメイドちゃんを見てそれも失せた。

 もう頭撫でたい! やっぱりメイドちゃん、天使!』


『☆月☽日

 今日のメイドちゃんの可愛い件。友達の腐女子(同志)が意図的に眼鏡を忘れて、うちのメイドちゃんがかけたらマジ可愛かった! 眼鏡メイド、良い!

 ただちょっとつらそうにしてたから、素顔を勧めたら恥ずかしそうに顔を俯いちゃった! あぁ、可愛い! もう死にそう!』


『▲月◇日

 うちには天使のような獣人メイドちゃんの他に何人か他にもメイドを雇っている。で、身長が高くて胸もそれなりに大きい兎のメイドのメイド服がほんの少し汚れていたので、今日はそのメイドさんの服が洗濯から返って来た。けれども兎のメイドが見つからなかったので困っていると、いつもの天使ちゃんが現れた! そこで一計を案じて、天使ちゃんにそのメイド服を着せるように頼んだら嫌そうにしながらもしたがってくれた。

 思った通り、天使ちゃんにはちょっとそのメイド服は大きかったようで、裾があまりまくっていて、なんか長袖みたいで大変満足である。そしてなんと……その猫系にしては大変けしからんおっぱいが彼女の服の胸元からkqdoeuoew……。

 その後は良く覚えていない。分かるのは本当に血を流し過ぎて倒れたと言う事だけだ。しかし、あのおっぱいは本当にけしから……おっとまた鼻血が』


『☾月◎日

 うちのメイドは本当に可愛らしくて、なんか舌っ足らずな声で聞いていると本当に癒される。今日、そんなメイドさんが掃除の最中に鼻歌を歌っていたのだけれども、その声がそこらのアイドルなんて比べ物にならないくらい可愛いの! RECして保存しようとしたけど、怖がってしまってちょっと困った。そんなに遠慮しないで欲しいなぁ……』

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