第4話 喫煙系メイド
「ディーン」
と、屋敷裏で煙草を吸っていた私、ディーン・ディアンヌの名前を屋敷の主人、
「んだよ、御主人様」
「良いから、ちょっと煙草を消してこっちに来なさい」
めんどくせぇと思いつつ、煙草を地面に押し付けて帆乃夏の元へ行く。
「よし!」と嬉しそうに満面の笑みで見てくる帆乃夏は、まるでお人形のように小さくて、ちょっとした事で倒れそうなくらい細い。
まぁ、こいつのお腹には赤ん坊が居るから、大きく膨らんでいるが。
「ディーン、いつも言ってるでしょ。煙草は健康に悪いから止めてって!」
「オレもそれは知ってるぜ。だから妊婦であるお前の傍では吸ってないじゃないか」
赤ん坊は煙草がダメだ。
なんか良くはしらねぇが、身体にとっても悪影響なんだと。
だから、赤ん坊を作ってからはこいつの近くで一服するのを避けてたのだが。
「そうじゃなくて! 身体に悪いから止めてって言ってるの!」
「耳にタコが出来るくらい聞いてるが、これが一番リラックス出来るから仕方ねぇだろうが」
「もう、ディーンったら!」
ぷん! と、顔を膨らませて怒っているのをアピールする帆乃夏だが、どう考えても子供が意地を張っているようにしか見えない。
子供らしい容姿に、子供らしい仕草。
愛らしいと言う言葉が似合う帆乃夏を見ていると、全身傷だらけで目つきも悪いオレなんかとは……
「ディーン……」
と、そんなことを考えているオレに、帆乃夏が優しく包み込むように抱きしめてくる。
「ディーンは自分の身体を汚いと言うけれども、全然そんな事ないよ。私のために、傷だらけになりながらも助けてくれたディーンは、自分が思ってるよりもずっと綺麗だよ……」
「帆乃夏……」
「もう、どうしてこんな良い子のお婿さんが出来ないのかが不思議なくらいだよ!」
プリプリと笑う帆乃夏を見て、オレはこらえきれずに、思わず笑ってしまう。
「あっ、ディーン! なんで、笑うの! ディーンの事を心配してるって言うのに!」
「だ、だって……。身体が小さいから、全然怒ってる風には見えねぇってば。まるで、ハムスターみたい……プププ」
「わ、私は真剣に怒ってるのに! ハムスターだなんて酷くない! もっと、レディーとか大人の女性とかの反応はないの!」
「いや、それだけは絶対にないから」
「そ、そんな真面目な声で言わないでよ! ディーンのバカ―――――――――!?」
そして笑いが止まらなくなってしまったオレに対して、ムキになった帆乃夏を見て、オレは昔の、まだ主とメイドとか関係なかった、楽しかった頃の事を思い浮かべるのであった。
それから7年後。
藤宮の屋敷では、母親と同じように、見ている方すら笑顔にする顔で笑う藤宮帆乃夏の娘の手を握る、煙草を止めて飴を舐めているディーンの姿があった。
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