第3話 給料不満系メイド
私の名前は
大財閥である帝財閥の帝家に働いているメイドです。
そんな私には不満があった。それは……
「給料が安い!」
「声がデカいですよ、椎名」
大きな声を出して自分の欲望を吐くと、部屋の主である帝家の長男、
私は「すいませーん」と答える。
「でもですね、タダシ! このうちのメイドの給料、安くないっすか!? この前の月給、20万もなかったんっすけど」
「坊ちゃまである僕を呼び捨てにして、口も悪い。給料が安くて当然だと思うが?」
「えぇー。でも私、結構優秀だと思うっすけど? 資格とか10や20では足りませんし」
そう言って、今までの人生で取ってきた資格を取り出してタダシに見せる。
「かっぱ捕獲免許……」
「あるとかっぱが捕獲出来るんだぜ!」
「フグ調理免許……」
「フグ、捌けますよー! あっ、これ取ったの何年前だっけ?」
「自動車二種免許……。確かタクシーで働ける免許……」
「やっぱり、自動車は速度がないといけませんよね! 最近のタクシーは速度が遅くて困る。私だったら80kmを出しても無事故を安心しますぜー!」
私の言葉に、タダシは「はぁ……」と溜め息を吐く。
「……椎名さんは、どうしてこう残念なんでしょうね」
「はぁ!? 誰が残念美人ですか!」
私はとびっきりの美人ですよ。
顔もモデル並みに可愛いし、腕も細いし、スタイルだって良い。
友達からは、「椎名って美人だよねー。でもねー……」と言われるくらい美人なんですよ!
その後の、「でもねー……」もきっと良い事が続いているに決まっています。
こう、「付き合いやすい!」とか、「気取ってないよね!」とかの好意的な言葉が!
「残念美人とは言ってませんよ。ともかく、もう少し真面目に働いたら、給料の方も上がるのではないでしょうか?」
「そう? 大財閥だから、普通に仕事してれば100万とか200万とか、結構普通に出してくれると思ってたんだけど」
「そんな訳ないでしょうが……。私がこの大財閥を支えるのを考えると胃が痛くなるのに……」
「イタタ……」と腹を押さえるタダシ。
いつも思うが、どうしてこの程度で胃が痛くなるのだろう。
どうもタダシはストレスに弱いらしい。
そのせいでストレスを感じると胃が痛くなって押さえるみたいだけど、さっきの話のどこに胃が痛くなるような話があったのだろう?
「大財閥を継ぐ」、つまりは一気に社長となって人生勝ち組! が普通の人の反応だと思うけどなー……。
「タダシ、タダシは本当に悩みすぎだよね。社長になるんだよ! お金持ちになるんだよ! もっと嬉しがったら良いのに! 私なんて1か月、必死にこつこつと働いて20万だよ、20万! 1日1万もないんだよ! これでも結構必死なのに! それなのに、タダシはすぐに社長になるんだから恵まれているんだよ! もう代わって欲しいくらいだよ!」
「椎名さん……」
「そうだ! タダシがダメなら、私が帝財閥を継げば良いんだ! 面倒な事は他に任せて、私はゆったり社長ライフ! うん、悪くない!」
うん、メイドとして働くよりもよっぽど稼げるに違いない。
タダシがやりたくないのならば、私がやるのも良いだろう。
「じゃあ、タダシ! 私が財閥を……」
「ダメです」
と、復活したタダシに却下されてしまった。良いアイデアだと思ったになぁ。
「あっ! そろそろ仕事をしないと奥方様に怒られる!」
「母さんに……? それは大変だね、クスクス」
「笑いごとじゃないよ、タダシ! 今度サボったら、給料カットだよ! メイドにとって、それ結構つらいんだから!」
「そうかい、そうかい。楽しかったよ、椎名。さぁ、行きな」
「はいはい! タダシに言われなくても行きますよー!」
そう言って、私は扉を出て、急いで担当の廊下へと向かって走る。
「そう言えば……私が働き始めて4か月、タダシは部屋から一度も出た事ないよなー」
と、私はちょっと思い返してみる。
確か、旦那様が、タダシは会社の"じゅうなんとか"に押しつぶされてしまってひきなんとかになったとか言っていたよなー。
初めての勤務でちょっと寝ぼけ眼だった私は、ちゃんと聞いてなかった。
「旦那様、何言ってたっけー?
……まぁ、いっか!」
一介のメイドである私には関係ない話だ。
それよりも、今後の給料のために掃除! 掃除!
数日後、旦那様からタダシを部屋から出してくれたからと言う理由で、特別報酬でお金をもらった!
なんか知らないけれども、ラッキー!
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