第34話 バタバタ日和

今日はやはり、スタッフ全員走り回りだった。

あちらこちらとテーブルを往復している。


ドーリッシュは接客をしながらも、スタッフへと指示をする。

「お待たせいたしました、ご予約いただいていた海鮮オムレツとサラダのセットです」

ドーリッシュは3番テーブルへと料理を運ぶ。

「わぁ!」

「美味しそう……!」

3番テーブルにいた女性二人組は歓喜の声を上げる。

二人は楽しそうに料理の写真を撮り、楽しそうに話しながら食事を楽しんでいる。


梨奈はキッチンの方に注文を告げに向かう。

「涼、ビール二杯、それにオレンジジュース一杯お願い」

「了解っ!」

涼はオレンジジュースを先に用意し、急いでビールを用意する。

「涼、ついでにビールをもう一杯追加、ワイン用のサーバーに氷を張ってちょうだい」

キルシェはてきぱきと指示を出す。

「了解!」


涼は少し戸惑いつつも、ワインサーバーに氷を入れる。

キルシェはオーダーの入った赤ワインを用意する。

「あと、そこの冷蔵庫に入っているグラスを二つお願い」

「はい!」


2番テーブルにワインをサーブする。

三人の客だが、一人はワインが苦手だという。

キルシェが二人にワインをついだ。

「やっぱり、ここは対応が早くて良いわね」

「ああ。食事も美味しいし」

「ジーン、腕が上がったわよね」

三人は笑顔で言う。

「すぐにご予約いただいていた料理もお持ちいたしますね」

キルシェは笑顔で接客する。

そして、キルシェが席を離れると同時に、後ろから様子を見ていたドーリッシュが料理を提供に入る。


「お待たせいたしました」

ドーリッシュは三人の表情を見る。

「和風カッペリーニでお待ちの方」

一人の女性が控えめに手を上げる。

ドーリッシュは彼女の前に料理を置く。

「次に、パエリア定食の方は……?」

男性が頷く。

ドーリッシュは彼の前に料理を置く。

「お待たせいたしました」

キルシェが最後にハンバーグ定食を提供した。

「追加などがございましたら、お気軽にお申し付けください」

ドーリッシュが笑顔で言う。

「では、失礼いたします」

キルシェとドーリッシュは会釈してその場を去る。


「ここってさ」

「うん」

「言葉遣いや対応、ホテルと大差ないよね」

「スタッフ教育は誰がやっているんだろう?」

どこからかそう言った話が出る。


アンネロッテが思わず振り返ると、その声は1番テーブルからだった。

男性で三人組だが、一人は黙々食べ、オレンジジュースを口にしている。

「今日は俺も飲みたかったなー」

彼は小さくちぇっ、と不満げ気に言う。

「じゃんけんで決めた運転当番だからな」

「ホテルで飲み直そうぜ」

二人は笑って言う。

不満そうに言った彼も、その言葉で笑顔になる。


「その約束、忘れんなよ」

「おう!」

三人は笑顔で楽しそうに話し出す。

「さてと、そろそろホテル戻るか」

「そうだな。美味しかった……!」


「トール、悪いが1番テーブル会計を頼む」

「は、はい!」

トールはレジへと走る。

そして、提示した金額を受け取った。

「ご馳走様。美味しかった」

「それは何よりです。またのお越しをお待ちしております」

トールは笑顔で対応した。


彼らを見送った直後である。

ガシャン、と大きな音がした。

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