第23話 タケの予約

ジーンは言葉に引っかかる。

「タケ? まさか、竹と友達なの?」

「絶対言うと思ったけど、違います! タケは尊って名前の親友のあだ名です!」

「あーなるほど」

「タケのは、この景色の良さを見せてあげたいし、ご飯も……」

ぐぅう、と大きく腹が鳴る。


思わず、涼とジーンが同時に腹を抱える。

「す、すみません、店長……」

「僕も大きくお腹が鳴ってすまないねぇ」

二人は思わず笑い出す。

「ちょっと店長! 早く賄い出してよ!」

「ごめんね、キルシー。すぐ作るからさ、涼くんの友達を招待するための連絡をしてあげて」

「分かったわ」

キルシェは椅子に腰かける。


「さてと、涼」

「はい」

「その友達の情報を教えて頂戴」

「えっと、連絡に必要なだけで良いですよね?」

「もちろんそうだけど。名前、メールアドレス、それと電話番号ね」

「えっと、親友の名前は尊で、あだ名はタケです……」

「タケくんね……」

「電話番号とメアドは、このデータを見てもらえれば……」

涼は尊の電話番号とメールアドレスを提示した。


キルシェはパソコンでなにやら打ち込んでいる。

「いきなりメールが来たり、電話があったりすると色々不都合ね……」

「今は知らないメールや電話をブロックする人も多いですから」

「涼、悪いんだけど先に一言連絡してもらっていいかしら? それから私がメールアドレスに質問を送るから」

「了解です!」

涼はスマートフォンでメール作成画面を作る。

そして、てきぱきと尊に連絡を送る。


これから、働いている定食屋から問い合わせの連絡を入れるから、指定したメールアドレスからの連絡を拒否しないで欲しい、と。

すぐに尊からは了解の連絡が来た。


「タケの方も許可出ました」

「じゃあ、予約フォームを送るわ」

キルシェはパソコンからメールを送ったらしい。


尊はパソコンを見ていた。

「お、これが涼の働いている店のメールか。こじゃれてる!」

尊は喜んでアンケートに答える。

来店日、そして、当日メニューを選ぶか、リクエストするか。

また、来店時間のリクエストもある。


「うーん、今回は夜のお任せにしてみようかな。気に入ったら、もう一回行きたいし」

尊は一週間後に予約を取った。

「寮の部屋も見てみたいな」

尊は個別に、涼へ社宅の部屋を見たいと連絡を入れた。


「店長、質問なんですけども」

「なになに?」

「社宅の部屋って、タケに見せても大丈夫なんですかね?」

「まあ、トラブルにならないならいいよ」

「ありがとうございます、タケに伝えます」

「あ、来たいって言ったんだ?」

「そうですね。多分、宿取るのも大変だろうから、ってことだと思います」

「良いんじゃないかな」

ジーンはそう言うと、ジュージュー香ばしい音がする。


「店長、火! 火加減!!」

キルシェは鋭い声で言う。

だが、目はパソコン画面を読んでいる。


「おおっと! 危ない危ない。賄いが焦げちゃうところだった……」

「店長が焦げても笑うけど、賄いを焦がすのはやめてよね!」

キルシェは厳しい声で言う。

それからしばらくして、ジーンは皿にオムライスを盛り付けて持ってくる。

「さあ、召し上がれ」

キルシェのオムライスはホワイトソースが、涼のオムライスにはケチャップがかかっていた。

「いただきます!」

二人は喜んでオムライスを口にした。

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