第20話 お茶の淹れ方

ふわっと香りが漂ってくる。

柑橘を思わせる、爽やかな香りが……。

「んん?」

「どうしたの?」

「柑橘の匂い……。俺これ好きだ」

「アールグレイをベースにしているからね」

キルシェは笑顔で言う。


そして、別のポットを温めている。

「これは?」

「ああ、これかい」

ジーンは笑っている。

「紅茶は温めておいた方が良いからね」

「な、なるほど」


そういえば、紅茶の淹れ方など、涼は知らない。

普段コーヒーばかりである。

それに、ほとんどインスタントコーヒーである。


「あ、あの、店長……」

「うん、どうしたの?」

「俺、紅茶ってほとんど飲んだこともなくて」

「淹れ方、教えて欲しいってことかな?」

「は、はい」

ジーンは一旦考える。


「キルシー」

ジーンはそう言って涼に言うよう促す。

「はいはい、話は聞いていたわ」

「キルシーがそう言ったことに詳しいんだ」

「じゃあ……!」

涼はキルシェを見る。


「良いわよ、教えてあげる」

キルシェは笑顔で言う。

「その代わり、私は厳しめだからね」

「はい」

涼は急いでメモとボールペンを用意する。


「まずは、紅茶を淹れる為のお湯についてね」

「はい……」

「このケトルを使って、お湯を沸かすの」


キルシェはケトルを手に取る。

そのケトルは、ほんのりと青みを帯びている。

「キレイなケトルだ……」

「そうね」

キルシェは浄水をたっぷりと入れる。


「紅茶の適温って言うのが、およそ100℃から95℃、沸騰したてのお湯が最も相性が良いの」

「なるほど」

「ちなみに、コーヒーは沸騰したてのお湯より、1分程度置く事ね」

「え?」

「100℃から95℃だと、えぐみが出てしまうから……」

キルシェは苦笑いして言う。

「初めて知った……」

涼は急いでメモを取った。


「それから、紅茶を淹れる時は、ポットで提供する場合とティーカップで提供する場合があるわ」

キルシェはさらに、ガラスの陶器を見せる。

「基本的に、ポットの時はこっちね」

「な、なるほど……」

「ティーカップの時は、私やアンネロッテがいる日は私たちで指定するから、また聞いてちょうだい」

「はい」

涼はメモをしながら言う。


「そろそろ紅茶を淹れてくれるかい?」

「ええ、わかったわ」

涼はキルシェが紅茶を淹れる様子をじっと見た。

蒸らす間も、やはり良い香りする。

「さあ、そろそろね」

キルシェはそう言うと、少し高めからカップに紅茶を注いでいた。




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