第9話 サプライズ

カプレ一家は食事を楽しみ、ワイワイと盛り上がっている。

「キルシー、エールのお代わりをもらっていいかな?」

「あ、はーい」

キルシェはオーダー表を持ってカプレ一家にもとに向かう。

「ほかにご注文はありますか?」

「キノ、何が飲みたいかな?」

カプレはキノのグラスが空になっていたことに気が付く。

「キノ、ミルクのお代わりほしい」

キノの声に、キルシェは笑顔を見せる。

「はーい、ミルクももう一杯ですね。ラッテさんはどうしましょう?」

「いつもお代わりでいただく、ナイアガラのワインをグラスでお願いするわ」

「はい、かしこまりました!」

キルシェは笑顔で答えた。


「涼、そこの冷蔵庫からグラスを出してほしいんだけど」

「あ、はい!」

キルシェの指さしたグラスを取り、渡す。

そのグラスはしっかりと冷えていた。

白ワインだからこそ、しっかり冷やしてあるのだと涼は感じ取った。

だが、オムライスに白ワイン……。

オムライスの中身と言えば、大抵チキンライスである。

肉を使った料理なら赤ワインが合うだろうに……。

涼は不思議に思いつつも、キルシェの指示に従って手伝う。


「不思議そうだね」

「あ……、すみません」

「いやいや、ラッテさんはシーフードオムライスが好物でね」

「ああ、それで!」

涼はジーンの言葉に納得した。

「だから、ソースも少し変わっている色をしていたんですね!」

「ホワイトソースを主体に、少しデミグラスを混ぜた特製ソースなんだよ。少し、味見してみるかい?」

ジーンは小さじで掬って涼に渡す。

「……わ、ホワイトソースの優しい味とデミグラスのコクが合わさって、凄く美味しい……!」

「それは良かった」

ジーンは笑顔で言う。


「今日は食後にデザートだったわね」

キルシェは伝票を見ながら言う。

「ああ、もちろん腕によりをかけて作ったからね」

ジーンは笑顔で言う。

涼はそのデザートを見る。


「キノちゃんおめでとう」

茶色のチョコプレートにはそう書かれている。

白いクリームのケーキの上にかけられた粉砂糖やアラザンなどが店の照明でキラキラと光っている。

きっと、キノは喜んでくれるだろう。


「今日も美味しかったね」

キノが笑顔でカプレとラッテに言う。

「キノさん」

キルシェがキノに声をかける。

「こちら、サービスです」

「わぁ! 可愛い!」

キノは予想通り、笑顔で喜んでいる。

「今日はキノの誕生日だから、ジーンに頼んでおいたんだ」

カプレが笑って教える。

「パパ、ママ、ありがとう!」

キノの笑顔は、まるで満開の花である。


「どうだった?」

ジーンは少し心配そうに聞く。

「キノさん、とっても喜んでるわよ」

「それは良かった」

ジーンは安堵し、カプレたちの様子を見る。


「キノちゃん、お誕生日おめでとう」

ジーンは笑顔で言う。

「これは、僕たちからだよ」

そう言って、ジーンは小さな包みを渡す。

「ありがとう!」

キノの笑顔に、カプレとラッテも幸せそうだ。

「さあ、名残惜しいけど帰ろう」

「えー」

キノは残念そうに言った。

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