第2話 面接からの

「へえ、電話番号とメアド、名前だけ入力なんだ……」

涼はてきぱきと入力する。

「なあ、涼……」

「なんだ?」

「この店の名前、なんて読むんだ?」

「さあ……。でも、なんかこじゃれてるよな」


二人は応募完了のメールを見た。

「次こそは採用になるといいんだけどな」

「そうだな! ちゃんと俺も招待してほしいから、祈ってるぞ」

「ちょっ、タケ、さすがにその理由はヒデーよ」

「悪い悪い、冗談だって」


その日の夜。

涼のスマートフォンにメールが届いていた。


「お、メール!」

涼は驚きつつもメールを開いた。


『この度は『Sternen zelt』へのご応募ありがとうございます。

  さて、面接の日取りですが、本日24時に行います

   メール画面を開いたまま、時間までお待ちください』


涼はメールの文面を再度見直す。

明らかに変だ……、24時に面接だなんて……!

時計の指している時間は23時55分。

途方に暮れながら、パソコンの画面を見つめている。


「あれ? パソコンの画面が……」

ざざっ、ざざっと砂嵐のような画面がちらちらと移りだす。

そして、バチンと大きな音がした。


涼はさすがに驚いたままフリーズする。

パソコンの画面と思っていたが、背中に固い触感がある。

尻には不思議と柔らかい感触がする。


目の前に広がるのは、一面きらきらと輝いている星空。


「五分前に会場待ちとは結構なことで」

「だ、誰ですか?」


目の前には椅子。

だが、椅子の上にいるのは人ではない。

テディベアである。

なぜか首には、『店長』と書かれた札が下がっている。


「えーっと、君が応募した人か……。水月みづき りょう……。涼しげな名前だね」

書類を見ながら、明らかに高校生くらいの女性が歩いてくる。

そして、テディベアの上から椅子に座った。


涼は目の前の光景に頭がついていかない。

どこからツッコむべき?

それとも……。


「『Sternen zelt』で働くつもりはある? あー、そうそう。うちは定食屋だけど、ただの定食屋じゃないわよ。ひと夏だけ、9月の終わりには、もう別の場所に移転して違うお店になるって契約だから、9月末までの雇用になるけど」

「あ……あります! 働きたいです!」

「ふぅん。じゃあ採用」

「え?」

「さてと、Sternen zeltのある場所には今週中に引っ越してもらわないとね。明日明後日で荷造りしなさい!」

「は、はぁ……。特段何かいるものとかありますか?」

「仕事着はこっちで支給してるから、普段着と寝間着、あとは生活用品よ。およそ二カ月間、ずっとそこで暮らしてもらうんだから!」

「わ、分かりました……。と、ところで、お名前をうかがっても……?」

「あら、名乗らなかったわね、ごめんなさい。私はキルシェ=ブリューテ。キルシェかキルシーって呼んで」

女性……もといキルシェはそう言って笑った。


その時、涼は何かを思わせると感じた。

それが何なのか……。

まだ涼は知る由もなかった。

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