第4話 鳴海 涼 ✕ 犯人は?

玄関に六つの花が落ちていてから三日後。

その日は休みだった為、いつもより一時間早く起きた。 


洗顔を終わらせ私服に着替えると、カーテンを開け朝食の前に玄関に行く。

そして玄関の外のタイルの上を確認してみる。


「あっ、増えていない……」


私はタイルの上の花の数を数えると小さな声を上げた。

そして靴を履いて外に出ると、敷地の外に誰かいないか一応確認をしてみる。けれど道路には誰もおらず、玄関に戻るとドアを閉めてキッチンで朝食の準備を始めた。


いつもと代わり映えない朝食、それをリビングのテーブルに置く。そしていつもより早く起きたので、早朝の新鮮な空気を室内に入れる為、ソファーの後ろのガラス張りの引き戸を少し開ける。

すると室内に気持ちのいい風が入ってくる。  

 

私は風に目を細めると、テレビも付けずにソファーに座り、カップのカフェ・オレに口を付ける。

そして先程の玄関のタイルに付いて考えようとした時、後ろでカサカサと音がした。


私は直ぐ様カップをテーブルに置いて立ち上がると、引き戸の外に体を向けたが、そこは猫の額程の庭に、背の低い草がぼうぼうと生えているだけだ。


けれど念の為、引き戸の前まで移動し、引き戸を開ける目を見開いた。

丁度引き戸の下にあの茶トラの猫がいたのだ。

 

ソファーがある位置からでは、見えなかった場所にいる猫は、口に白い花を咥えている。そして引き戸を開ける音に反応したのだろう、上を見上げており私と目が合っている。だが私に怯えるでもなく、10秒程私と視線を合わせると視線を外し、そのまま何もなかったかの様に玄関に向かって歩いて行った。


私はそのふてぶてしい態度に、ぽかんと口を開けていたが、我に返ると猫の行き先が気になり、急いで玄関に向かった。

そして玄関でスニーカーを履くとドアを開け、鍵も閉めるのも忘れ、家の敷地から出て行こうとする猫を追う。

その時には既に猫の口には白い花はなかった為、目の前を歩く猫が毎日、玄関に花を置きに来ていたのだろう。


休日の早朝ともなれば住宅街を歩く人は少ない。しかも今は学校は夏休み中の為、わざわざ早起きする学生も少ない。その為、誰もいない道路の脇を、猫は尻尾を立てて機嫌良さそうに歩いていた。

しかも距離も取らずに着いていく私を、気にする様子もない様は、野良にしては警戒心がいささか足りない様な気もする。


そして猫の行き先は、私が想像していたより遥かに近かった。

私の家から二軒先にある、塀の高い赤い屋根の、洋風の住宅の門の中に入って行った。


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