3 西プラトール駅警備強化中

 おひるぎのプラトール中央ちゅうおうえきはものすごい人だった。

 でも、おかあさんはただ待合所まちあいじょのベンチで時間じかんつぶしていた。


 そして、夕方ゆうがたちかくになってから、何故なぜ西にしプラトール駅に行った。

 こっちのほうが中央駅より停車ていしゃする列車れっしゃ格段かくだんすくない。

「お母さん、市場いちばかないの?」

「お母さん、こっちは西駅だよ。

 疎開そかいだって、いし。

 ねえ、お母さん」

 お母さんはベンチにこしかけず、窓口まどぐちへとならぶ。

 お母さんのばんはすぐにやってた。

 窓口のおにいさんは、お母さんのうしろにいるわたしをつけると、「あっ」とって、へんかおをして。

 窓口のせきからがってしまった。


 それから、しばらくして、窓口にもどって来たのは、お兄さんじゃなかった。

 おじさんだった。

「あいにくですがね。

 オスへの切符きっぷ発券はっけん出来できないんですよ」

戦争せんそうわったのだから、義肢ぎし職人しょくにん移動いどう制限せいげんは無いはずです」

「……ほら、あの、あたらしい国際こくさい条約じょうやくですよ。

 戦争をしたおや世代せだい責任せきにんをね、そのども世代がわされるって。

 はやいえかえりなさい」


 そこへ西駅の駅長えきちょうさんまでお母さんのところへやって来た。

あるいて市外しがいて行こうなんて、おもわないほうがい。

 パント義肢ぎしかんくに視察しさつはいった。

 目立めだたぬよう、視察だんは西駅で降車こうしゃしたんだ。

 職人全員ぜんいんでミエルをい出せたのはかった。

 れて行かれるのは、かならあねのほうだ。

 このくにで、ミエルの名前なまえらなくても、パント義肢館のちいさな義肢職人がつくった義肢をらない傷病しょうびょう退役たいえきへいはいない。

 みんな、ミエルがえらばれないように無い知恵ちえをひねり出した。

 とにかく、市外からミエルを出せば、皆がミエルをまもれなくなる」


 あっ、国家こっか憲兵けんぺいだ。

 国と都市とし治安ちあん維持いじ警備けいび巡回じゅんかいしている。

「駅長、どうしました?」

親戚しんせきたずねにるのに、到着とうちゃく時刻じこくいていないそうです。

 それで、駅には最新さいしんの時刻ひょうがあるでしょ。

 その確認かくにんに来たんだそうです」

「……嗚呼ああ、オス家か。

 リストに名前なまえっている。

 同居どうきょしている子どもはパメラとミエル、だったかな?」

親族しんぞくでお祝いとは、さすが義肢職人の家だな」

 二人ふたりぐみわかい憲兵はダラダラあるいて、中央駅のほうへ行ってしまった。


「お母さん。

 パメラおねえちゃんがどこかへ連れて行かれるの?」

 お母さんはわたしの質問しつもんにはこたえず。

 学校がっこう地下ちか避難所ひなんじょでは無く、「もと黒焦くろこげ・げん真っしろけの」へともどった。

 すべて焦げたらしいけれど、魔術まじゅつであっという元通もとどおり。

 お母さんはうでの良い魔術だけれど、それをかくしているみたい。

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