23話 このままでは終わらない予感

 ま、このままで終わるわけがないだろうなと分かっていた。

 私に何か仕掛けてくるだろうと思っていたけれど、安直に武力行使しようとしたようだ。

 夜、就寝しようとしたところに身の丈三メートルを超える大鬼が金棒を持って乗り込み襲ってきた。

「梵語を唱えたらカッコいいんだろうけど、ソレってカッコつけ以外の意味ってないのよねぇ。依頼人もいないことだし、私流儀の詠唱をしますか」

 私は鬼が振り上げた金棒を避け、一言言った。


「死にさらせ」


 そしてハリセンを振り抜いた。

 すると、大鬼は簡単に吹っ飛ぶ。

 大鬼は、吹っ飛ばされると思わなかったようだ。

 驚き、呆然として私を見ている。

「ハァ? とんだ見かけ倒しじゃない。もっと気合い入れてけって! 殺す気でかかってきてんだから、死ぬ気で挑んでこいやゴラァ!」

 私が怒鳴ると大仰にビクッとし、何やらためらうようにまごつき始めた。

 私は大股で近づき再びハリセンを振り抜く。

 また簡単に吹っ飛ぶ大鬼。というか、変化が解けたよ。初回に会ったときより一回りくらい小さくなった気がする。

「航気より弱っちいって聞いてたけど……それにしても弱すぎて話になんないわ。あと二、三発入れたら調伏され消えんじゃないの?」

「ヒィッ!」

 私の煽りに四逆は悲鳴をあげて後退る。

 いや、襲ってきたのソッチでしょーが。なんで私が襲ってるような雰囲気を出すのよ?


「どうした!?」

 物音に驚いたらしい茶有が飛んできた。

「さ、茶有様! お助けくだされ!」

「ナニ言ってんの?」

 まるで私が襲いかかったような口ぶりで四逆が茶有の足にすがった。

「あ、あの人間が、わた、私に襲いかかり、私は危うく殺されるところでした!」

 とか言いだした。

「何? もしかしてアンタ、身を挺して私を嵌めようとしてるってワケ?」

 娘から話を聞いて、消滅覚悟で私に喧嘩を売り、あえてやられて駆けつけた茶有にいかにも自分が襲われたかのように振る舞う。それはすごいわ。

 私が迫ったら脅えて茶有の後ろに隠れた。


 茶有は私と四逆を見比べるとしゃがみ、四逆の両手を優しく取った。

 そして優しい笑顔で首を横に振る。

「附子から話を聞いたんだろう? 美衣は、鬼嫁だ。俺にはどうすることもできない。お前が怒らせたのなら、お前は美衣の気が済むまでお祓いされろ。それが、平和的な解決方法なんだ」

 茶有は言い切ると、私の前にそっと四逆を差し出してきた。

 四逆は絶望した顔で私を見たよ。マイダーリンのヘタレさが極まりすぎていて、いっそ潔い気がする。

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