22話 感じの悪い父娘が突撃してた!
儀式がまた失敗したことを聞きつけたのか知らないけど、式当日にめっちゃ感じの悪かった上に翌日行方をくらました女中さんが、年寄りを伴って乗り込んできた。
「茶有様! 附子から話を聞きましたぞ! 御父上に気を遣い無理に婚儀を挙げたにしろ、すでに義理は果たしたはず! そのような女とは離縁なされ! 茶有様には我が娘、附子がふさわしいと前々から申し上げていたではないですか!」
茶有はポカーンとして、怒鳴りこんできた年寄りを見ている。
「茶有、アレって逃げ出した案内人さんだよね? 今怒鳴っているのは?」
「四逆だ。附子の父親だな」
私は感心して見た。
確かに顔立ちが似ている。ちなみに二人とも額に角があって肌が青黒い。
「へぇ~。あのおじいちゃん、もしかして茶有を小さい頃から知ってるとかいう話? そんでもって、あの案内人の子が、幼なじみとか言う?」
茶有が、何度目かの「何言ってんだコイツ」的な顔をした。
「……四逆は、俺よりもはるかに年下だぞ」
ハァア!?
私は四逆と茶有を見比べた。
どう見ても、四逆の方が老けて見えるんですけど?
私の疑問を感じとった茶有が説明する。
「四逆は下位のあやかしだ。上位存在であればそれだけ人に近く、見た目の変化はしづらくなっていく」
なるほどねー。私はふむふむとうなずいた。
「航気は俺に次ぐ上位存在だ。そして、父は別格だ。十二の魔王の一柱だからな」
さらに注釈がついた。つまり、あのしばき倒した家令よりもこのおじいちゃんは年下なのかー。見た目で年齢を測れないのが異界。
私と茶有がヒソヒソ話しているのが気に入らなかったのだろう。
「茶有様! いくら茶有様でも、私が真剣に話している最中にそのような者とコソコソ話すのは無礼ですぞ! その女はこの異界から出ていけ! 私の目の前から消え失せろ!」
「茶有様! どうしてそのような粗暴な女と仲良くしておられるのです!? 女、離れなさい!」
四逆と附子が口々に罵り、鬼になった。比喩ではなく。
「変化もするんだ!」
私が驚くと、茶有が眉根を寄せる。
「……するが……それは、本気で敵を倒そうとするときだ。人に近い姿形が俺たちにとっては美しいと感じるもので、上位存在は皆、顕界の住人と同じ容姿になる。父もそうだろう? なのに、本性を現すのは不粋だ。醜悪と言ってもいい。……そんな恥ずべき姿を見せる者が、俺にふさわしいと抜かすか……」
そう吐き捨てた茶有が四逆と附子を睨むと、二人は慌てて変化を解いた。
「……これは、心を許した茶有様にだけお見せする、本当の私です」
急に恥じらったようなしぐさをしつつ附子が言った。
「醜いので二度と見せるな」
茶有はバッサリと言い捨てた。
さすが、初対面の私に失礼極まりない言葉を投げた男だけあるね! 容赦がない。
醜悪と言われた附子が顔を覆う。泣き真似をしたが、茶有は興味なさそうに四逆に向かって言った。
「附子から何を聞いたが知らないが、俺は美衣を嫁にすると決めたし、附子を嫁にすることはない。お前も、この異界の住人という自覚があるのならくだらないことで俺の時間を使わせるな」
茶有の言葉に四逆が唇を嚙むと、
「……後悔なされるなよ!」
と、言い捨てて帰っていった。
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