18話 リアル『俺の屍を超えていけ』
また結界に捕らわれたのか~と考えつつ踏み込み、ハリセンを振り抜く。
獰十朗氏は吹っ飛んだ。
……が、すぐさま起き上がる。
「スゲーな! 俺を吹っ飛ばすとは、人間の女とは思えん!」
おバカちゃんだけど、陽キャで爽やか体育会系だなぁ。イケメンだしね。茶有から『滅びろ』みたいな念を送られるだけあるわぁ。
「そりゃあどーも。……アンタの嫁さんだった人はおとなしかったんだろうけど、私は違うから」
私が話している間に獰十朗氏は棍棒……というよりソレ釘バットじゃね?って武器を召喚し右腕に握った。
それを見た私は、すぐさま距離を詰めてハリセンをふるう。
獰十朗氏、釘バットで受け……そのまま吹っ飛ばされる。
「甘い甘い! もっと力出してけー!」
と、獰十朗氏を煽る。
気分はトレーナー!
さっきまで余裕のあった獰十朗氏は啞然とした顔をしていた。
「ハァ!? なんでそんな紙と俺の武器とがぶつかり合って競り負けんだよ!?」
獰十朗氏が叫んだので、説明してあげた。
「この武器、特注なんだよねー。かつてお祓いに使われていたけどもう使えなくなったって木製品を、お焚き上げせずに砕いて溶かして紙に加工して再利用したモノなの。イチから作るよりも安いしエコだし
お金がないからさ、宮司さんの知り合いに頼んで無理やり作ってもらった。でも正解。軽いし丈夫で携帯にも優れているときたもんだ。祓串は、品質の良いものだと高いし、安いとすぐボロボロになっちゃうし。刀とか明らかに武器だと職質されるけど、ハリセン持ってても誰も何も言わないもんね!(視線はちょっぴり痛いけど!)
獰十朗氏、目を吊り上げた。
「テメェ……! お祓い師かよ!?」
「イエース。しかも、わりと強い方のね。知らないで喧嘩をふっかけてきたの? だがもう遅い! 私に喧嘩をふっかけたことを後悔するといいさ!『俺の屍を超えていけ』をリアルにしてあげよう。かかってこいやぁ!」
ちなみに、君を屍にするのは私だけどネ!
ハリセンをぐるぐる回しながら獰十朗氏に迫ったとき。
「お前ら、ナニやってんだ?」
と、茶有が呆れた声で尋ねた。
吹っ飛ばされたショックで、私を捕らえていた獰十朗氏の結界は消えてしまったらしい。
現れたのはハリセンを振り回している私と、釘バットごと吹っ飛ばされている獰十朗氏という。
茶有と安中ちゃんが呆気にとられて私たちと見ている。
えーと……。
『俺を倒してからいけ』って……倒れたからもう終わり、ってこと?
「なんかさ、私を結界に捕らえて『俺の屍を超えて茶有のもとにいけ』って言ってきたから、屍にしようかと」
「さすがに言ってねーぞ!『茶有の嫁になりたいなら俺を倒してからいけ』とは言ったがな!」
私と獰十朗氏が口々に言うと、茶有がものすごく呆れた、って顔をして獰十朗氏を見ている。
「俺は別にお前が屍になろうがかまわないが」
「いや、かまえよ。親友だろ!?」
珍しく獰十朗氏がツッコミ側に回っている。
「お前は親友じゃないし、美衣は父が連れてきた俺の嫁だ。お前に許可をもらう必要などない」
フン、とわかりやすく茶有はそっぽを向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます