15話 ふくじゅうのぽーず。

 ランチにしようかということで次のスポット、「絨毯みたいな芝生だなと思ったら本当に絨毯みたいな芝生が生える草原(訳:座るとそこから絨毯のような芝生が生えてくる)」に移動することになった。

 ちなみに移動はチャーミーに私と安中ちゃんが乗り、茶有と獰十朗氏は飛んでいる。


 チャーミーは、さすが異界の猫、大きさが変わるのだった!

 ふだんの大きさが安中ちゃんと同じだからさ、「乗るってどういうこと?」って思ったらこういうことだったか! 正直、ビビりました。


「さすがは茶有の嫁! 騎獣を従えたのかよ!」

 って獰十朗氏に感心されたけど。

「獰十朗氏は〝猫〟ってご存じない?」

「知ってるぞ。そういえば、顕界の大猫は大きさが変わらないんだったか」

 あ、じゃあこの子を猫だと認識しているのね。

「普通の猫だと思ったのよ。出会ったときは安中ちゃんと同じくらいの大きさだったから。おなか見せてゴロンしていたので、めっちゃ撫でたわ」

「最初から服従のポーズだったとは、美衣殿はすごいな!」

 獰十朗氏に爽やかに言われたけれど……。


 ふくじゅうのぽーず。


 私が安中ちゃんと茶有を見たら、サッと目を逸らされた。

 ……えぇー。ゴロンは服従のポーズだったんだぁ。懐いてくれたのかと思ったのに……いや、ある意味懐いたのよね。そうだそうだ!


 ……それにしても。今、ちょっと気になることを言ったな。

「獰十朗氏の異界は顕界とつながっているのね。……つまり、顕界人と結婚しているってこと?」

 私が何気なく尋ねたら獰十朗氏はうなずいた。

「正確には『結婚していた』だな! もうずいぶんと前に亡くなってしまったぞ」


 う。

 そ、それはなんと言えばいいのか……。

「ご、ご愁傷さまです……」

 私が小さく言うと、獰十朗氏は明るく笑い飛ばしながら手を振った。

「ははは。今さら言われると、なんか新鮮だな! そういや、茶有の結婚騒動の後に婚姻を結んだので、怒り狂った茶有からしばらく出禁を喰らったのを思い出したぞ」


 あああああ……。

 もしかして私、地雷を踏みまくってる?

 気を遣うタイプではない私だけど、さすがにやらかした感があるのでお弁当を分けてあげることにした。


 目的地が見えてきた。一見、茶色い地面がむき出しの丘だ。

 だが、地面に着地すると、ぶわぁっ! ……って感じに絨毯みたいな芝生が広がる。敷物要らずだそうなので、このまま芝生に座るんだけど……。

「なんか、なまあったかい!」

 生き物なのコレ!? 生温かいんですけど!? あとこの芝生、葉っぱの感触じゃない! 毛だよ、毛!

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