14話 親友は陽キャ野郎
――で。
「何この人? 誰?」
隣に知らない人がいるんですけど……。
あまりにも自然だったので、普通に話していたわよ! 怪奇現象か!
異界スポット探検ツアーにしれっと混じっている男は、気づいた私にニカッと笑いかけた。
「俺か? 俺は
「違う。断じて違う。俺はこんな奴と親友じゃない!」
彼が存在していないかのように話しかけられても無反応だった茶有が、急にムスッとした顔で反論した。
私は神野獰十朗という人……いや人じゃないか、異界の者をジロジロ上から下まで眺めた。
赤茶の髪に紺の瞳で、背の高い茶有よりもさらに指四本分ほど高いイケメン。超デカい。
いかにも陽キャ!ってオーラを出しているね。笑顔がさわやかです。顕界人だったなら、めっちゃモテそう。
陰キャの茶有とは気が合わなそう……と見せかけ、陽キャと陰キャのコンビは意外と仲が良いのよねぇ。茶有のツンタレ属性に陽キャのぐいぐい押せ押せ属性で、いつしか茶有が心ほだされ……みたいな展開がありえそうだな。あるいはすでにその展開になっているかもしれない。
恐らく、ちゃんと挨拶しなくていい人のような気がするけど(そもそもこの人自体、しれっと挨拶なしで混じってるしね)、いちおう定型の挨拶をしてみた。
「……えーと、茶有のお友達の方、ですか。はじめまして、茶有の嫁の美衣と申します」
「違う。友達じゃない!」
茶有が重ねて否定している。しかも鼻に皺を寄せているし。
「奥さま。こちら、別の異界の主さまでございます!」
と、安中ちゃんがちゃんと紹介してくれた。うん、ホント安中ちゃんがいてくれて良かったよ……。
――ん? 別の異界の主さま?
「それは、別の異界とここがつながっているってこと?」
全員がうなずいた。
茶有の異界名物『何もないところから流れ落ちる滝』を眺めつつ、詳しく話を聞く。
異界同士がつながるには、『異界の主になる以前に別の異界の主と誼を通じておく』、『異界の主が別の異界の主を招く』、主にこの二つだそうだ。
で、神野さん「獰十朗と呼んでくれ!」……の獰十朗氏と茶有は、異界の主になる以前のパターンで、茶有いわく「幼気な少年時代、親に説得されてつなぐことになった」のだそうだ。
「コイツはなぁ! 自分がおねしょしたとき、俺に罪をかぶせたんだぞ!」
と叫ぶ茶有。……曾じいちゃんよりも歳を取っているというのに、ずいぶん昔にやられたことを根に持っているのね。
「はっはっは。そんなこともあったか。茶有は記憶力がいいよな! だけど、記憶はもっと有意義に使った方がいいぜ!」
笑い飛ばす獰十朗氏。
あー……。これは確かに茶有と気が合わなそう。茶有は根に持つタイプだよ? 何せ、私が約束したわけじゃない結婚の約束を破ったとかで、私にラノベでクソ野郎が吐くセリフを初対面の開口一番に投げつけてきやがりましたからね!
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