13話 ピクニックに行こう

「――で。なんで君たちココにいるわけ?」

 と、お義父さんにツッコまれた。

 現在、安中ちゃんと一緒にカフェにいます。

 安中ちゃん、大興奮。

 ものすごい勢いであちこちを飛び回っております。

「アハハ。ピクニックに行こうと思うんだけど、私、ここじゃないと料理作れなくてさー」


 茶有の屋敷の台所はヤバい。安中ちゃんに案内されて見に行ったけど、昔映画で見た武家屋敷の台所みたいだった。広いし十数人が常時働いてるし、しかも人外だし妖術使ってるしで、すっこんでろ! って感じだったのですぐ退散したのよ。

 なので、こちらを拝借してお弁当とおやつを作ろうと思ったのだった。

「まぁまぁ。お義父さんの分もお弁当作るから。なんなら一緒に行く?」

 と私が誘ったら、安中ちゃんが目を剥いている。あれ、嫌なのかな?

「誘う相手を間違えてるでしょうが。私じゃなくて茶有を誘いなさい」

 と、お義父さんに返された。ごもっともで。

「じゃあ、弁当は」

「いります。カフェ風で!」

 って即答されたし。


 カフェ風。それはビジュアルが良いということ。

 決して、茶色一色にしてはいけない。

 ピクニックといえばサンドイッチ。だけど、サンドイッチ用のパンがなかったのでタコスにした。


 トルティーヤは、トウモロコシ粉に強力粉を少々加えて作る。強力粉を入れるともっちりするので好き。

 生地を捏ねて焼いたら濡れ布巾に包んで冷まして終了。


 具材はどうしようか。

 彩り重視だからなぁ……。


 食材を見ながら検討した結果、三つほど思いついた。

 一つ目。サバのオリーブオイル漬けなるものを発見したのでこれを使おう!

 なます……いや大根と人参のピクルスを作成。

 サバのオリーブオイル漬けは、ほぐして粒マスタードとマヨネーズとみじん切りにしたケイパーでツナ風に。

 スライスして水に晒した玉ねぎ、なますと、レモン汁をふったサバのツナをトルティーヤで包み、ディルを見えるように飾って一丁上がり!


 二つ目。王道のタコス。

 玉ねぎ、にんにくをみじん切り。玉ねぎとニンニクを炒めて合い挽き肉を投入。火が通ったらケチャップやらウスターソースやらオイスターソースやらを入れ、ブラックペッパーも挽きながら入れちゃう。隠し味でカレー粉としょうゆをチラリ。あと、一味唐辛子とタバスコもチラリ。辛いの苦手かもしれないから、風味的な。

 レタスとチーズと角切りトマト、そしてタコミートを包んで二丁上がり!


 三つ目。適当に具を作って挟む。

 目玉焼きを二つ折りにして焼いておく。

 コンビーフを炒め、ざく切りにしたほうれん草を投入。サッと炒めつつ、カレー粉と粒マスタードを適当に振りかけ、塩胡椒で味を調える。

 角切りにしたクリームチーズとサニーレタス、目玉焼き、ほうれん草炒めを包んで三丁上がり!


 あと、サルサを作らねば。

 トマトと玉ねぎとセロリとパクチーをフードプロセッサーにブチ込み粉砕。ケチャップとタバスコ、隠し味でオイスターソースとしょうゆで味付け。時間が押してきたので手軽に作った!


 サルサを瓶に詰めて、タコスを油紙でくるんで弁当箱に詰めたら出来上がり!

 あ、お義父さんのは皿に盛りつけた。サルサはココットに入れたよ。

「いやぁ、ホンット上手いよね! いいお嫁さんになれるよ!」

 とはお義父さんの弁。

 ワタクシ、あなたのおかげで既にあなたの息子に嫁いでますよ。喧嘩売ってるのかな?

 安中ちゃんは「はわわ……すごいです……」とか言いつつアワアワしていますが、嫌いな食べ物でもあったのかな。

「あ、ごめん、訊くの忘れてた。好き嫌いあった?」

 今さら尋ねたら、安中ちゃんは私を見て小首をかしげる。

「……好き嫌い以前に、見たこともない食材を使っていたりしてます」

 あらら。食べられない種類があったら交換しようっと。全滅ということはないと信じたい。


 最後に作り置きのデザートを取り出し、弁当箱を持つと、お義父さんに手を振り茶有の異界へ戻る。

「夫婦円満のため、茶有も誘おう」

「そう言われると、断りづらいですよねー」

 私の言葉に律儀にツッコむ安中ちゃん。優しい子だね!


「茶有ー。安中ちゃんと『顕界には存在しないスポット』巡りに行くんだけど、一緒に行かない?」

 航気と話している茶有に声をかけたら、二人に啞然とされた。

 二人の顔を見ながら思う。コイツら仲がいいよなぁ、と。だいたいが一緒にいるよね。距離感も異常に近い。顕界なら噂されるぞ?

「航気も来たいなら来ていいわよ」

「い、イヤだ!」

 どもりながら即お断りされたわよ。

 茶有は啞然としつつも尋ねてきた。

「……顕界には存在しない? そうなのか?」

 そうなのよ。顕界を知らない茶有にはわからないだろうけど。

 私は魔法使いの国に初めて行った少年のように、珍しい景色を堪能したいのよ!

「私は奥様を案内しつつ教えてもらいます! 顕界がつながったあかつきには、訪れる顕界人を案内してまわろうかと!」

 安中ちゃん、めっちゃ気合いを入れて言ってます。癒やし系だなぁ。

「……よくわからないが、俺も気になるので一緒に行こう」

 ってことになった。

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