11話 念願かなって!?
茶有と屋敷に帰ってきた。
――我ながらチョロインだなぁと思うけれど、顔面偏差値的にすでに百点の男なので、マイナス百だった性格が直ってくれば当然百に近づいていくわけで。
ま、まぁ? 結婚したんだし? 仲良くしてもいいかなーずっと暮らしてもいいかなー一緒に発展させていってもいいかなーくらいには思えてきた。
百年単位の年の差は、そこまで違えばもうどうでも良くなったわ。
考えても仕方が無い。たぶんこのままいくと私だけが年老いて死んでいくようだけど、それもまた仕方なし。介護する心配が無くて良かったと思っておこうっと。
茶有は、お義父さんから電気の概念を教わったが、イマイチつかめていないらしい。
しばらく通うとのことだった。
私は、ときどき遊びに行きつつメニューの考案をして、カフェが開店したら働く予定。
お義父さんは、お義父さんの友達に声をかけているのでしばらくはその辺の人がたまにやってくる程度だと言っていた。
開店したら営業時間内は働かないといけない。
それまでにはこの異界を把握しておかないとな……と考え、茶有や案内人ちゃんを捕まえて話を聞いて回っていた。
食材は、さすが異界……というような、ゲームかよ! ってツッコミたくなるような、顕界とは全く違う生え方をしていた。
正確には、茶有の理解がそのまま異界の生態に反映するらしい。茶有はまさしくこの異界を所有しているのだ。
キャベツや芋が木に実っているのはまだいいほう。
肉は、動物から専門職の異界の住人が妖術で得ている。ゆえに、幻のマンガ肉とかも産み出されたりする。
イリュージョン!
「当たり前だけど、みんな妖術が使えるんだよねぇ……。私も使えるようになれたらよかったのに」
と、私が洩らしたら、茶有が「ナニ言ってんだ」みたいな顔をした。
「お前は我らの存在を無に還す妖術が使えるではないか。そんな恐ろしい妖術を使える奴なんて、魔王くらいだぞ」
とか言われたよ。あ、私のお祓いは妖術の分類なんだぁ。あと、私って魔王の分類なんだぁ。
そして、ちょっとずつ使用人の皆さんと仲良くなってきた。
航気は論外なんだけど(私の姿を見ると脱兎のごとく逃げる)、
「だってさ、私、カンケーなくない!? 私が約束したわけでもないのになんで私に文句言うのよ。アンタの曾じいちゃんがやったことを周りから責められたらどう思うの!? って話でさぁ」
「あー、そうだったんですねー。てっきり茶有様と結婚したくなくて逃げ回っていたのかと思ってましたぁ」
「性格はアレだけど、見た目は百点満点だからやぶさかでもなかった。性格はアレだけど」
安中ちゃんは聞き上手なのでついくだを巻いてしまう。
ちなみに、安中ちゃんは案内専門あやかしだそうだ。場所を覚えるのが特技で、だいたい一発で道を把握するらしい。顕界とつながったら、ぜひともあちこち見て回り、道に迷った人を案内してあげたいと言っている。なんと素晴らしいあやかしなのだろうか。
でもって、安中ちゃんと仲良くなってきたら、周りも軟化したのよ。
正確には、安中ちゃんのペットと仲良くなったら軟化した。
安中ちゃんが、
「私の乗り物です!」
って鼻高々に紹介してくれたのが……。
「かわいーーー!」
尻尾が二叉に裂けている猫だった!!
白地に雉模様のブチ猫で、安中ちゃんと同じくらいのサイズ。いや、乗り物って……乗れるの?
人懐っこくて私を見るなりゴロンして腹をみせたのでめっちゃ撫でた。
「かわいいかわいい!」
「でしょー? チャーミーって言う名前なんです」
いきなり洋風の名前なのが面白いなぁと思いつつ、猫を愛でる。
チャーミーは、とってもおとなしかったので、思いきり堪能させていただきました。
「猫、飼いたかったんだよねぇ。でも、住んでいるところはペット禁止だし、仕事も忙しかったから一人じゃ無理だなって思って。結婚したら飼おうと思ってたんだけど……」
異界に来ちゃったからね。でも、異界にも猫がいるんだぁ。茶有に頼んで猫を飼おうかなぁ。
って考えてたら、安中ちゃんが「じゃあ、夢が叶いましたね! チャーミーはここで暮らしているんで飼ってると同義ですよ!」って言ってくれた。
「マジ? うん、かわいがろう」
安中ちゃんの乗り物とか言ってたけど、だからといって安中ちゃんが飼ってるというわけでもないのか。
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