第12話 謎の女性登場

「クンクンクン」


女の人の声が聞こえる。


「ん?」


清空さんが反応する。


「クンクンクン、匂いますねぇ」


女の人が現れる。


「何者だ?」


清空さんが拳を構える。


「私の名前?そんなの関係ありません!

 私のファイヤードラゴンさんを倒したのは貴方ですか?」


女の人の目が赤く光る。


「まって……その人は……」


万桜さんが清空さんを止めようとしている。


「そうか……お前があのドラゴンを……!」


清空さんが拳の魔力を込める。


「そうです!食べようと思っていたんですよ!」


「そうか食べようと……って?え?」


清空さんの思考が停止している。

僕もだ。


「ドラゴンの塩焼き。

 ドラゴンの酒蒸し。

 ドラゴン鍋にドラゴン回鍋肉。

 どれをとっても村人たちに取ってはご馳走なんです。

 それを独り占――」


すると空気を読めない子供がシエラに言う。


「お姉ちゃんおかわり!」


そう言ってお茶碗を差し出す。


「あ。まってね。

 今度はドラゴンのお茶漬けを作ってあげるから」


なにそれ……


なんか興味ある。


「って、あれ?

 マリンタウンで役場でドラゴンの頭を持って賞金をもらって帰って行った制服少女がいるって聞いて来てみたのですが……」


「ああ、それは私だ」


「で、その肉だけじゃなく貴重なナナヒカリのお米を使ってまで、もしかして給仕しているのですか?」


「よく言うだろ?

 奪えば憎しみを得て。

 与えれば笑顔が生まれる」


清空さんが笑う。

その女性に敵意を感じなくなったからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る