1月21日特別編1 先輩は、どうしてこんなことを……?
放課後、今日も今日とてブレアを迎えに来たルークは、3ーSの教室のドアを開けた。
今日はリアムの所に行く予定もないようだし、一緒に帰れるはずだ。
「失礼しまーす!」
大きな声で告げてから教室に入ると、いつも通りの席にブレアが座っていた。
けれど少しだけ、いつも通りではないことがある。
ブレアの前の席にアーロンが、その隣にエマが座っていて、ルークの姿を見たブレアが、立ち上がった。
「?どうしたんですか先輩。」
普段は座ったままなのに珍しいな、と思いながら、ルークがブレアに近づこうとすると――
「動かないで!」
と、切羽詰まったような大きな声で言われてしまった。
少し離れた所から、キッと睨むようにルークを見てくる。
「え……俺何かしましたか?すみません……?」
全く身に覚えがないものの、とりあえず立ち止まり、謝ってみる。
それでもブレアの態度は軟化せず、けれど少しだけ、じりじりとにじり寄ってきた。
「あのー、本当にどうしました?俺何かしましたか?」
ブレアは何も答えず、ただただ見極めるようにルークを見ている。
代わりにエマとアーロンを見てみると、2人とも楽しそうに笑ってルークのことを見ていた。
「ほーらブレア、ルークくんが困ってるわよ。」
「腹くくっていけー。」
煽るように言われたブレアは「煩い。」と2人を一瞥する。
どうやら状況をわかっていないのはルークだけのようだ。
「先輩、大丈夫ですか?」
ルークがもう1度声をかけると、ブレアは迷うように視線を彷徨わせる。
その後、早歩きでルークの前に来た。
いつもなら止まるくらいの位置。
ブレアはそこから更に1歩、2歩進み――
「え……?」
ぎゅっと、抱き着いてきた。
間近、を通り越して、身体の大部分が接触している。
身体全体に感じる、触れ合った感触。
ちょうどルークの口あたりにブレアの頭頂部がくるため、顔は見えない……が、確かにブレアと密着している。
「え、えええ、あの、せ、先輩?」
可愛い、小さい、いい匂いする……といった端的な感想に思考をもっていかれそうになりながら、ルークはやっとの思いで声を出した。
「お前、顔赤っ!すげー驚いてっし、マジで面白ぇよ。」
「ブレア可愛い~!よかったわねルークくん?」
楽しそうにけらけらと笑って、アーロンは記録用魔道具を構えている。
笑顔のエマに問いかけられても、ルークに答える余裕などない。
勿論嬉しいのだが、それ以上に戸惑いが勝つ。
嬉しすぎて、状況が飲み込めない。
「……えーと、先輩は、どうしてこんなことを……?」
ちらりと2人の方を見て、ルークはたどたどしく聞く。
エマとアーロンは顔を見合わせてから、にこりと笑った。
「――ルーク、今日なんの日か、知ってっか?」
アーロンに聞かれ、ルークはうーんと考え込む。
考え込んではいるのだが、ブレアにドキドキしすぎて思考が回らない。
回らない頭を無理矢理働かせ、今日の日付を思い出す。
「そういえばヘンリーが何か言ってた気が……えーと、なんでしたっけ。」
「おー頑張れ頑張れ、思い出せー。」
アーロンのやる気のない応援を受けて、うんうんと唸って考え込む。
確かヘンリーが今日の5限前――つまり昼休みの終わりに、『兄貴が何か企んでたっぽいんだけどさ――』と話していた気がする。
記憶を辿ったルークは何とか思い出し、「あっ!」と声をあげた。
「ハグの日ですか!?」
「そう!だからブレアも、ね?」
エマがにこっと笑って言うと、ルークはじっとブレアに目を落とす。
ハグの日だから、ハグされている?行事ごとに全く興味のないブレアから?
エマかアーロンに何か言われたんだろう、とすぐに推測できるが、それでもブレアから抱き着いてきたことは変わらないわけで。
「――俺、1月21日大好きになりました――!」
「単純だな……?」
喜びを噛みしめているルークを見て、アーロンは呆れたように苦笑した。
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