第33話 俺に襲われたらどうしようとか、思わないんですか?
頭を抱えてしまったルークをブレアは不思議そうに見ている。
何を整理していたのかはわからないが、ルークはゆっくりと顔を上げた。
「……先輩、俺達付き合ってました?」
「昨日確認したところだと思うけど。もしかしなくても君馬鹿だよね。」
呆れ顔のブレアにルークは「だって」と続ける。
「だってそれって最早同棲じゃないですか!付き合ってると思うじゃないですか!?」
「気持ち悪い言い方しないでくれるかな。ここの学生寮は基本2人部屋だよ。」
ルークの大きな声にブレアは顔を顰めた。
ルークはブレアの提案が異常だと思っているが、ブレアはそうは思っていないようだ。
何が問題なの?とでも言いたそうに首を傾げている。
「そうですけど、普通同性じゃないですか!建物も男女分かれてますよ!」
「ここは教員用の棟で、男女の区別はないよ。僕男になれるし、問題ないんじゃないかな。」
「問題大アリですよ……。」
不思議そうに首を傾げているブレアを見てルークはまた頭を抱える。
確かにブレアの本当の性別をルークは知らない。
知らなくてもブレアに片想いしている身としては、どうしても異性として見てしまう。
「生徒用の部屋よりちょっと広いし、お風呂もキッチンもついてるから便利だよ?お金は僕が出してるからかからないし、悪い話じゃないと思うんだけど。」
「すごく有難いんですけど、夢のようなお誘いなんですけど、俺先輩のこと好きなんですよ!?そのー……俺に襲われたらどうしようとか、思わないんですか?」
「思わない。」
顔を赤くしたルークが言いづらそうに言うと、ブレアは即答する。
それだけ信頼されている……わけではなさそうだ。
全く意識されていない気がしてかなり悲しい。
「即答ですか!」
「うん。僕自衛できるから安心して。」
ブレアは片手を頬から離してひらひらと振った。
一振りごとに指先が光ったり、燃えたり、黒くなったりしている。
何かあれば容赦なく魔法を使うと言いたいんだろう。
「安心はできないですけど……先輩はいいんですか?俺しか得してませんよね。それに先輩ルームシェアとか嫌いそう。」
「嫌だけど。助手が欠点とるのはもっと嫌。」
顔を顰めたブレアはきっぱりと言い張る。
授業中に寝ているだけでは欠点にはならないが、ブレアはルークが勉強ができないと決めつけているようだ。
実際できない。成績が危ういかもしれない。
「君が一緒にいてくれるといつでも魔法を教えられるから、僕としても都合がいいんだ。君に覚えてもらいたい魔法、結構急ぎなんだよね。」
「そうだったんですか?すみません。」
急用だとは思っていなかったルークは自分の飲み込みが悪くて申し訳なくなる。
あれからたまにブレアに魔法を教わっているが、今のペースでは到底上級魔法は使えそうにない。
「そ。2人っきりになるのに、同室ほどいい口実はないでしょ。いい?」
ブレアはいつも通りの真顔だが、有無を言わさぬ迫力がある。
はい以外の返事は求めていないようだ。
うーんとよく考えたルークは重々しく口を開く。
「……普通に有難いですし、そういうことなら……はい、頑張ります。」
「何を頑張るの。」
「己との戦いです。」
思い詰めた顔でルークが答えるとブレアは不思議そうに首を傾げた。
ルークの言っていることはよくわからないが、了承を得られたことには変わりないので無視をする。
立ち上がったブレアは両手で髪を掻き上げながら魔法を使って制服に着替えた。
髪の隙間から普段は見えない首元が覗いてドキッとしてしまう。
「じゃあ、早速先生に言いに行こうか。色々申請しないといけないみたいだから。」
「はい!」
ドアノブに手をかけたブレアは元気のいいルークの返事に振り返る。
「急に元気だね。」
「色々気にしなかったら最高の展開なので!正直にやけが止まりません。」
「キモい。」
嬉しそうに笑っているルークを一蹴し、ブレアはドアを開けて外に出た。
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