アハトウントツヴァンツィヒ 悪業の報い

「放棄された古い砦跡を拠点としていましたか。独創性の欠片かけらも無い不逞ふていやから達ですね」


協力者である支配人にまんまと騙された人攫ひとさらい達の一員でもある三下奴さんしたやっこが、フロリアーヌ女史を連れ込んだのは、伯父上が御治めになられていられます御領地の外れにある、放棄された古い砦跡の地下室でした。


「ああした古い砦には、地下に食料貯蔵庫がありますから。人攫ひとさらい達はかどわかした女性達を、闇の奴隷市場で競りに掛けるまでの間、閉じ込めているのだと思われます。騎士シュヴァリエ様」


砦の地下室への出入口を、草叢くさむらに身を潜めながら見張っている私は、年下の十代後半の画家志望の灰色グリザイユ君に対して頷きましてから。


「グリザイユ君の言う通りだと思います。それと、荷物運びを手伝ってもらい感謝をしています。衛兵隊は隊長から隊員に至るまで、人攫ひとさらいの不逞ふていやから達に買収されていますから。動かせる人手がありませんでした」


草叢くさむらに身を潜めながら小声で感謝の意を伝えた自分に対して、グリザイユ君は緊張感を感じさせない明るい笑みを浮かべまして。


「身に余る勿体ない御言葉で御座います。騎士シュヴァリエ様♪」


グリザイユ君は肝が太いと感じます。芸術家の卵の感性は、自分のような普通の人間とは異なるのかも知れません?。


「カチャッ」


「予定通りにいけば、地下室からフロリアーヌ女史に狩り立てられて逃げ出して来た人攫ひとさらい達が、脱兎の勢いで飛び出して来るはずですから。ハーゼ狩りと同様に、一カ所しかない巣穴の出入口を通る不逞ふていやから達を、騎手之弓ライター・ボーゲンで射殺するだけです」


地下室に閉じ込めている婦女子が逃げ出さないように監視をし易くする為に、人攫ひとさらい達は出入口が一つしか無い砦跡の食料貯蔵庫を拠点として利用していましたが。これまでの自らの悪業の報いを、悪之巣窟ラスター・ヘーレにて受ける事となります。

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