フィーアウントツヴァンツィヒ 初老の支配人

ブルッブルッブルッ『こ、の度は、愚息ぐそくによる無礼千万ぶれいせんばん所業しょぎょうを心底より深く御詫び申し上げます。騎士シュヴァリエ様』ダラッダラッダラッ。


昨夜に捕らえた荒くれ者達から、フロリアーヌ女史が一晩掛けて城館の地下牢内にて事情聴取を行いましたが。一団を率いていたのは、賭場シュピーラー・ヘレを経営する支配人の子息でした。


『ご子息には情報提供にご協力を頂けました。支配人』


自分とフロリアーヌ女史の二人で、賭場シュピーラー・ヘレにある支配人室を訪れていますが。初老の支配人は顔面蒼白がんめんそうはくで身体を小刻みに震わせつつ、全身からは滝のような冷や汗をかいていられます。


ブルッブルッブルッ『あ、あの豚児とんじめは、どのような妄言を吐き、御迷惑を御掛けしましたでしょうか?』


…少し奇妙に感じます?。自分は御領地を御治めになられていられます伯父上から捜査の御下命ごかめいを受けた甥の騎士シュヴァリエですが。無法者デァ・ゲゼッツ・ローゼと裏で繋がっている賭場シュピーラー・ヘレを経営されていられる海千山千の老獪ろうかいな支配人にしては、極端に怯えているようです。


『チーーンッ』


『ヒイッ!』


静かに紅茶を飲まれていられましたフロリアーヌ女史が、陶磁器製の茶器を白魚しらうおのような美しい指で弾いてんだ音を室内に響かせますと、初老の支配人はすくみ上がりました。


『御子息と同様に自発的に御協力を頂ければ、祖父には何も伝えません。支配人様』


ガクッガクッガクッ『ご、御寛恕ごかんじょを賜りまして、心底よりの御礼を申し上げますっ!』


伯父上と同様に初老の支配人も、フロリアーヌ女史の祖父の事をご存じだったようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る