ドライウントツヴァンツィヒ 月明かりの下にて

『ヒュウウウゥーーーッ』


『私は普段は団体ハンザの盟主でもある帝国自由都市リューベックで暮らしていますから、高層建築物の多い都市ですと、風の吹き抜けが悪いと感じています』


『バタッバタッバタッ』


『それで真夜中に一人で夜風に当たりに夜道の散歩に出掛けたのかい、金髪ブロンデス・ハールのお嬢ちゃん。無用心が過ぎるぜ』


フロリアーヌ女史は、ご自身を取り囲んだ若い男達に対して、月明かりの下で冷ややかに美しい瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳を向けられますと。


『それだけではありません。賭場シュピーラー・ヘレにて情報収集を行う私に向けて、性的な欲望とは異なる種類の視線を向けている人達が居る事には気が付いていました』


殴打して昏倒させる為の棍棒を手に持つ男は、フロリアーヌ女史に対して威嚇するように棍棒で空を切りまして。


『ビュンッ!』『ああ。色惚けしている衛兵隊の隊長や、間抜けな他の隊員達は気が付いてなかったようだが。お嬢ちゃん。あんた俺達と同類だろ?』


どういう意味でしょうか?。


『報酬を得る為なら、他者の命を奪うのに一切の躊躇いが無い性格をしているという意味でしたら、貴方のげんは正しいです。魔法障壁マーギッシェ・バリエーレ展開。衝撃波シュトース・ヴェレ。ブゥオッ!』


『ぎゃあっ!』『ドサッ、ドササッ』


フロリアーヌ女史が魔力マナによる不可視の障壁である魔法障壁マーギッシェ・バリエーレを展開されますと、根元魔法の衝撃波シュトース・ヴェレで周囲を取り囲んでいた若い男達を纏めて吹き飛ばされました。


『うっ、うううっ…』『いっ、痛えよう』


地面に倒れ伏した荒くれ者達を、フロリアーヌ女史は星空の下で無表情に見下ろされますと。


『骨が二・三本骨折した程度で、痛がらない方が良いですよ。これから貴方達から情報を聞き出す為に、今感じている痛みを遙かに上回る苦痛を与えるますから』


淡々と告げたフロリアーヌ女史を、地面に倒れ伏している荒くれ者達は恐怖に引き攣った表情で見上げまして。


『ひっ、ひいいーーっ』『ゆ、許してくれ。金髪ブロンデス・ハールのお嬢ちゃん』


慈悲を乞う荒くれ者達に対して、フロリアーヌ女史は関心を示されずに、後ろを振り返りまして。


『御待たせして申し訳御座いません。騎士シュヴァリエ様』


念の為に距離を置いて尾行していた自分は姿を現しまして。


『お見事な手腕でした。フロリアーヌ女史』


心からの讃辞を送った私に対して、フロリアーヌ女史は恭しく深々と御辞儀をされまして。


『恐悦至極に存じ上げます。騎士シュヴァリエ様』

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