ノインツェーン フロリアーヌ女史

『ポンッ、ポンッ』ニギッ、ニギッ、ニギッ。


『昼間の活動的な服装も素敵でしたが、優雅エレガント淑女マドモアゼルの装いは、賭場シュピーラー・ヘレ中の注目を浴びておりますな。フロリアーヌ女史♪』


『有難う御座います。身に余る御言葉です。隊長様』


内偵ないてい捜査の為に城下町にある賭場シュピーラー・ヘレに来ていますが、高級な仕立ての服を着ている衛兵隊の隊長が、伯父上から受けた依頼の遂行中はフロリアーヌ女史という名を使う事にされました傭兵ゼルドナー殿の肩に手を置かれて、親しげに揉まれています…。


騎士シュヴァリエ様が羨ましいですな。フロリアーヌ女史のような魅力的な淑女マドモアゼルを伴われて、賭場シュピーラー・ヘレに遊びに来られているのですから♪』ニギッ、ニギッ、ニギッ。


『…恐縮です。隊長』


不快感を表情に出さないように自制心を働かせるのが、これ程に困難なのは生まれて初めてかも知れません…。


『フロリアーヌ女史は、賭場シュピーラー・ヘレに来るのは初めてなのですな?』ニギッ、ニギッ、ニギッ。


隊長が傭兵ゼルドナー殿…、フロリアーヌ女史の肩を揉み続けながら尋ねられましたが。嫌な顔一つされずに、美しい金髪ブロンデス・ハール瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳をされていられる、十三歳の素敵な淑女マドモアゼルとして優雅エレガントにお答えになられまして。


『はい。隊長様。今宵が生まれて初めての経験となります』


フロリアーヌ女史の返答に、隊長は満面の笑みを浮かべられまして。


淑女マドモアゼルは今宵のように騎士シュヴァリエ様に伴われなければ、お一人で訪れるような場所ではありませんからなフロリアーヌ女史♪』ニギッ、ニギッ、ニギッ。


『はい。隊長様。騎士シュヴァリエ様には、心底より感謝申し上げております』


情報収集の為に必要だとは解っていましても、フロリアーヌ女史と隊長の距離が近いのは非常に不愉快に感じます…。

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